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クラッチとトルクコンバーターの違い|実物と既存図でわかる動力伝達

Opel用デュアルマスフライホイールとクラッチの断面展示
Opel用デュアルマスフライホイールとクラッチの断面展示。Zweimassenschwungrad und kupplung aufgeschnitten.jpg — Cschirp / 出典 / CC BY-SA 3.0。

クラッチとトルクコンバーターは、エンジンから変速機へ力を渡す装置です。エンジンとタイヤをいつも固くつないでいたら、信号待ちのたびにエンジンまで道連れになります。

止まっているタイヤ側を少しずつ動かし、止まるときにはエンジンを回しておく。そのつなぎ方を、板の摩擦で調整するのがクラッチ、主に油の流れで助けるのがトルクコンバーターです。どうやって力を渡しているのか見ていきましょう。

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板を押し付けるクラッチ、油の流れで伝えるトルコン

クラッチ板が力を受け取る仕組み
クラッチ板が力を受け取る仕組み
ペダルから足を離した状態では、フライホイールと押さえ板がクラッチ板を挟みます。ペダルを踏み込むと押し付ける力が抜け、クラッチ板と一体の入力軸にエンジンの力が伝わらなくなります。乾式単板の例で、すき間は説明のため広く描いています。
図:メカニズモ
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ペダルを離す:板を挟む

ペダルを離す:板を挟む

ペダルを踏む:板を離す

ペダルを踏む:板を離す

エンジンからタイヤまで、いつも固い棒で直結されていたら、止まるたびにエンジンまで止まってしまいます。発進では、止まったタイヤ側を少しずつ動かす必要もあります。その間のつなぎ方を調整する装置が要るわけです。

Lexus IS Fの8速ATの展示。発進を助ける部分と、歯車で段を作る部分が組み合わされています。
多段ATの実物断面
Lexus IS Fの8速ATの展示。発進を助ける部分と、歯車で段を作る部分が組み合わされています。Automatic transmission cut.jpg — Silverxxx (talk) 04:33, 1 March 2009 (UTC) / 出典 / CC BY-SA 3.0

クラッチは、板などを押し付ける力で回転を伝えます。一方、トルクコンバーターは、主に中のオイルの流れを使います。どちらも力を受け渡しますが、「どこを通って力が届くか」が違うんですね。

一般に、どちらもエンジンと変速機の間に置きます。クラッチは面を滑らせながらつなぎ、トルクコンバーターは油を介すので、入口と出口で回る速さが違っても力を渡せます。

ただ、クラッチはMT専用、トルコンはAT専用と、きっぱり分けられません。AT内部にも変速用クラッチがあり、トルコンにも直結させるロックアップクラッチがあります。トルクは、軸を回そうとする力のことです。トルコンは、条件によって出口側のトルクを増やせますが、摩擦クラッチ単体にはその働きはありません。

発進装置として見た摩擦クラッチとトルクコンバーター
比較項目 摩擦クラッチ トルクコンバーター
主な伝達方法 摩擦面を押し付けて伝える オイルの流れで伝える
発進時の回転差 摩擦面を滑らせて吸収 ポンプとタービンの回転差を許容
トルクの増幅 クラッチ単体では行わない 作動状態によって行う
機械的な直結 滑りがない締結状態で実現 ロックアップクラッチで実現

ボルトくん

エンジンとタイヤって、ずっとがっちりつながってるんじゃないの?

ハグルマ先生

発進や停車では、そのままでは困るんです。離したり、滑りを許しながら伝えたりする仕組みがありますよ。

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回っているエンジンで、止まった車を動かすには

トルクコンバーターの断面展示。エンジンと変速機の間に置く装置の実物例で、羽根を持つ部品とオイルで力を伝えます。
トルクコンバーターの断面展示。エンジンと変速機の間に置く装置の実物例で、羽根を持つ部品とオイルで力を伝えます。
No machine-readable author provided. BerndB~commonswiki assumed (based on copyright claims). / Torque-converter-cutbox-model.jpg / CC BY-SA 3.0。縮小・WebP形式へ変換。

では、この回転差を二つの装置がどう受け持つか、もう少し具体的に見てみましょう。

回る速さの差をならしながら、少しずつ力を渡します。MTならクラッチを滑らせ、差が減ったら完全につなぎます。トルコンは、入口が回っていても出口は止まれるので、油を通して発進できます。

発進装置は回る速さの違いを扱い、変速機は回る速さと力の比率を変えます。その分担はトランスミッションの役割と種類でも説明しています。

ボルトくん

低いギアなら、急につないでも大丈夫なの?

ハグルマ先生

低いギアでも、エンジンとタイヤの回る速さは違いますよ。急につなぐと負担が大きいので、少しずつ渡す仕組みが必要なんです。

クラッチペダルの操作は、どの部品に伝わる?

三つのペダルを備えるMT車の例。
三つのペダルを備えるMT車の例。左からクラッチ、ブレーキ、アクセルです。 写真:Adhitya Sibikumar / Unsplash

MTでよく使う乾式単板クラッチには、フライホイール、クラッチディスク、カバー、押し付ける力を変えるレリーズ機構があります。組み合わせはエクセディのクラッチ構造解説でも確認できます。

フライホイールとクラッチカバーはエンジン側

Opel A16XHT用のデュアルマスフライホイールとクラッチ。摩擦面を押し付ける機構と、ねじり振動を抑える部分を組み合わせた例です。
乾式摩擦クラッチの実物断面
Opel A16XHT用のデュアルマスフライホイールとクラッチ。摩擦面を押し付ける機構と、ねじり振動を抑える部分を組み合わせた例です。Zweimassenschwungrad und kupplung aufgeschnitten.jpg — Cschirp / 出典 / CC BY-SA 3.0

フライホイールはエンジンの軸に付き、一緒に回ります。カバーも普通はそこへ固定します。中には、ディスクを押すプレッシャープレートと、その力を作るダイヤフラムスプリングなどがあります。

クラッチディスクは変速機の入力軸につながる

三菱4G63用の製品例。中心の溝付き穴がスプラインで、外側に摩擦部分があります。四つの摩擦部分を持つこの形が、すべての乗用車の標準形状ではありません。
中心で入力軸につながるクラッチディスク
三菱4G63用の製品例。中心の溝付き穴がスプラインで、外側に摩擦部分があります。四つの摩擦部分を持つこの形が、すべての乗用車の標準形状ではありません。Clutch disc.JPG — 100yen 11:57, 1 October 2006 (UTC) / 出典 / CC BY-SA 3.0

ディスクの中心は、スプラインという溝で、変速機の入口の軸とかみ合います。この板をフライホイールとプレッシャープレートで挟むと、摩擦でエンジンの回転が変速機へ伝わります。

フライホイールとカバーはエンジン側、間に挟むクラッチディスクは変速機側です。二つの側を別々にできるので、力のつながりを切れるんですね。

ペダルを踏むと、ディスクを押す力が弱まる

下の表は、押して操作する一般的なプッシュ式の例です。レリーズベアリングを引くプル式では、動く向きが違います。

一般的なプッシュ式クラッチでの操作
ペダル レリーズ機構 ディスクの押し付け
踏む ベアリングがダイヤフラムスプリングを押す プレッシャープレートの押し付け力が弱まる
戻す レリーズ機構が戻る ばねの押し付け力が復帰する

プッシュ式では、ペダルの動きが専用の液体にかけた圧力やケーブルでレリーズベアリングへ届き、ばねを押します。すると板を押し付ける力が弱くなり、エンジンからの力を切れます。ペダルを戻すと、押す力が戻り、つながります。

引いて操作するプル式などもあるので、部品の動く向きは形式で違います。ただ、摩擦面を押す力を変えて、つないだり離したりする点は共通です。

ボルトくん

ペダルを踏むと、板をぎゅっと押すんじゃないの?

ハグルマ先生

普通のMTでは逆ですよ。踏むと押し付ける力が弱まり、エンジン側と変速機側を離せます。

半クラッチでは滑りが熱になる

半クラッチは、板が触れて力を渡しつつ、両側の回る速さがまだ違う状態です。滑らせることで、止まった車へ急に力がかからず、なめらかに動き始められます。

滑る間は、エネルギーの一部が熱になり、摩擦材も減ります。発進で使うのは正常ですが、高回転で長く滑らせたり、坂道で半クラッチだけで止め続けたりすると、熱の負担が大きくなります。止めるときはブレーキを使います。

完全につながって滑っていなければ、ディスクとフライホイールは同じ速さで回ります。走行中ずっと、面同士がこすれ続けているわけではありません。

ボルトくん

坂道で半クラッチのまま止まると、熱くなるの?

ハグルマ先生

滑り続ける分、熱の負担が増えるんですよ。車を止めておくときは、ブレーキを使いましょう。

伝えられるトルクと、滑るときの発熱は別に考える

クラッチが伝えられるトルクは、押す力、摩擦材、面の大きさと数で変わります。トルクは、軸を回そうとする働きです。板を大きくするだけで、全部の条件がよくなるわけではありません。

滑っているときの熱は、伝えるトルクと、両側の回転差で変わります。同じ力でも差が大きいほど、同じ時間に熱へ変わる分が増えます。完全につながった状態と、長い半クラッチでは負担が違うんです。

ボルトくん

滑ってても進めるなら、問題ないんじゃないの?

ハグルマ先生

進めても、回転の差が熱になっていますよ。意図しない滑りが続くなら、板や周りの部品を傷めるので、点検が必要です。

湿式クラッチも、力を伝えるのは摩擦面

オイルの有無だけでは、伝達原理は決まらない
装置 力を渡すもの オイルの主な仕事
湿式クラッチ 押し付けた摩擦面 摩擦面の潤滑・冷却
トルクコンバーター 羽根車の間を循環するオイル 回転力を流れで渡す

乾式は、摩擦面をオイルに浸さず使います。湿式は、油で冷やし、部品を守ります。乗用MTでは乾式単板、DCTやAT内部では湿式多板がよく使われます。DCTにも乾式があります。

湿式でも、力を渡すのは押し付けた面です。油が入るから、油の流れだけで伝えるという意味ではありません。トルコンとは仕組みが違います。

油を送る・受ける・戻す、三つの部品が働く

油が回る通り道を、断面で見る
油が回る通り道を、断面で見るToshinori baba — 出典 / CC BY-SA 4.0(日本語注記:メカニズモ。同ライセンスで提供)

  • A ポンプ
  • エンジン側から油を送る
  • B ステーター
  • 戻る油の向きを整える
  • C タービン
  • 油を受けて変速機を回す
  • D 入力軸/E 出力軸
  • 赤い矢印は油の流れ

普通のトルコンには、ポンプインペラ、タービンランナー、ステーターがあります。名前は長いですが、油を送る役、受けて回る役、戻る油の向きを整える役です。

ポンプインペラがオイルを送り出す

下の断面図の文字を、入力から出力まで追う
文字 部品・位置 受け持つ仕事
D → A 入力側 → ポンプ エンジン側の回転でオイルを動かす
C → E タービン → 出力側 流れを受け、変速機へ回転力を渡す
B ステーター タービンから戻る流れの向きを整える

ポンプインペラはエンジン側につながり、羽根で油を動かします。このポンプは、トルコンの中の羽根車です。ATの制御や部品へ油を送るオイルポンプとは別の役です。

タービンランナーが流れを受けて回る

タービンランナーは変速機の入口につながり、流れを羽根で受けて回ります。ポンプと直接一体にはなっていないので、ロックアップしていない間は、違う速さで回れます。

ステーターが戻りの流れを整える

ステーターは、タービンから戻る油の向きを変え、ポンプへ返します。発進時など、出口側がゆっくり回る間は、その流れを受け止める力によって、出口側のトルクを入口より大きくできます。

ステーターがエンジンを速く回すわけではありません。出口の回転が遅い条件で、回す力を増やしています。エネルギーが増えるわけでもなく、油で伝える損失もあります。流れと役目はSchaefflerのトルクコンバーター技術資料で確認できます。

一般的なステーターは、一方向クラッチで支えます。トルクを増やす間は止まって力を受け、出口が速く回って流れの向きが変わると空転します。するとトルクを増やす働きが小さくなり、油でつなぐ継手に近くなります。

ボルトくん

回す力が増えるなら、エネルギーも増えるの?

ハグルマ先生

出口側がゆっくり回る代わりに、強く回せるんですよ。エネルギーは増えず、油の流れで失う分もあります。

Dレンジで止まれる理由と、クリープする理由

トルコンATでDに入れ、ブレーキで止まるときは、エンジンとポンプが回り、タイヤにつながるタービンは止まれます。この回転の違いを許せるので、車が止まってもエンジンまで止めずに済みます。

ただし、止まっている間も油を通して力は伝わります。ブレーキを緩めるとゆっくり進むのが、一般的なクリープです。停車したから、完全に力を切っているというわけではありません。

実車にはアイドリングストップや、停止中につながりを切る制御もあります。また、AMT、DCT、電動車でも、制御で似た動きを作れます。クリープするだけでは、トルコン付きとは分かりません。

ボルトくん

止まってても、タイヤを動かそうとする力は来てるの?

ハグルマ先生

一般的な油で伝える状態なら、来ていますよ。ただ、停止中に切り離す制御などがある車もあるので、実際の動きは車によって違います。

走行中はロックアップで機械的につなぐ

流体での伝達と、ロックアップでの伝達
状態 主な伝達経路 ポンプとタービンの回転差
ロックアップしていない オイルの流れ 回転差を許す
完全にロックアップ ロックアップクラッチを介する機械的な経路 基本的に同じ回転数
滑りを調整するロックアップ クラッチの伝達力を制御 小さい回転差を残す場合がある

油で力を伝えるには、ポンプとタービンの回る速さに差が要ります。その分は損失にもなるので、減らすためにロックアップクラッチを使います。

完全にロックアップすると、エンジン側のケースとタービン側を、機械的に直接つなぎます。油を介すときの滑りを抑えられるんです。ZFの技術資料では、回転方向の揺れを和らげるダンパーとの組み合わせも見られます。

高速道路でしか働かないわけでもありません。車速、負荷、油温、振動で調整し、低い速度から使うものや、少し滑らせる制御もあります。完全につないでも、変速機のこすれやポンプを回す損失は残ります。

ボルトくん

直接つないだら、むだは全部なくなるの?

ハグルマ先生

主に減るのは、ポンプとタービンの回転差による分ですよ。変速機のこすれや、油のポンプを動かす負担は残ります。

油を介して力を渡す状態と、クラッチで機械的につなぐ状態を切り替えるのがポイントです。発進から高速走行まで、ずっと同じ滑り方で動いているわけではありません。どちらを使うかは、速度だけでなく車種や運転状態にもよります。

よくある疑問

AT車にはクラッチがないの?

ペダルがなくても、中にはクラッチがあります。変速用、ロックアップ用、DCTの二つなど、役目ごとに形も違います。変速用の働きは変速機の原理で解説しています。

CVTにもトルクコンバーターは付いているの?

CVTにも、トルコンを使うものがあります。CVTは主に変速の方法の名前で、発進装置までは決まりません。別のクラッチを使うものもあるので、CVTの変速部分と発進装置を分けて見ます。

トルクコンバーターなら摩耗しないの?

油で伝える部分は、半クラッチのように摩擦材を滑らせる仕組みではありません。ただし、中にはロックアップクラッチ、軸受(回転する軸を支える部分)、シールもあります。油の劣化も含め、傷みを点検する必要があります。

滑る感触、異音、振動だけで、クラッチやトルコンが原因とは決まりません。交換が必要か、油を替えるかも、車の整備情報と点検から判断します。

ボルトくん

クリープする車は、必ずトルコン付きなの?

ハグルマ先生

AMT、DCT、電動車も、似た動きを作れますよ。ゆっくり進むかだけでは、中身は決まりません。

関連記事

フライホイールの役割と軽量化のメリット・デメリット/トランスミッションの役割と種類|MT・AT・CVT・DCTの違い/DCTの仕組み|乾式・湿式の違いとクラッチの働き

参考資料

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この記事を書いた人
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ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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