本文へ移動
メカニズモ
メニュー

CVTの仕組み|プーリー・金属ベルト・チェーン・電気式との違い

SUBARU Lineartronicチェーン式CVTの断面展示
SUBARU Lineartronicチェーン式CVTの断面展示。Subaru Lineartronic continuously variable transmission (2010-10-16) 01.jpg — OSX / 出典 / Public domain。

車の変速機といえば、1速、2速、3速とギアを切り替えるもの。ところが「何段にするか決めるの、もうやめません?」とばかりに、変速の段階をなくしたのがCVTです。

しかも、身近な車の中では金属のベルトやチェーンがエンジンの力を伝えています。ズボンを支えるだけでも大変なのに、こちらは車を走らせる仕事です。

一体どうやって、段階なしで変速するのでしょうか。今回はCVTの仕組みと、名前は似ていても構造が異なる「電気式CVT」との違いをやさしく解説します。

スポンサーリンク

プーリーの溝を変え、ベルトが掛かる円を変える

CVTは、回転の伝わる割合を、段階を刻まず連続的に変える変速機です。まずは、エンジン側とタイヤ側に、ベルトが掛かる輪を一つずつ置いた仕組みを想像してください。この輪をプーリーと呼びます。

プーリーは、向かい合う二枚の斜面でV字の溝を作っています。二枚を近づけて溝を狭めると、ベルトが斜面に押し上げられ、外側を通るようになります。広げると、中心寄りへ下がれます。

変わるのは、ベルト全体の長さではなく、それぞれのプーリーでベルトが通る円の大きさです。その円の直径を「有効径」といいます。同じ長さのベルトが進んでも、小さい円の輪はたくさん回り、大きい円の輪は少ししか回りません。こうして回転の割合を変えるので、固定された歯車を順番に選ぶ方法とは違います。

入口を小さい円、出口を大きい円にすれば、大きく減速します。出口が一周する間に入口は何周も回るので、発進や坂道で大きな力を得られます。反対に入口を大きく、出口を小さくすれば減速が小さくなり、速度に乗ったときエンジンを低い回転にできます。

プーリーの有効径と変速比の関係
状態 入力側の有効径 出力側の有効径 働き
大きく減速する側 小さい 大きい 出力回転数を下げ、トルクを増やす
減速を小さくする側 大きい 小さい 同じ出力回転数で入力回転数を下げられる

滑りを省けば、変速比はおおむね「出口の有効径÷入口の有効径」です。ただし、これは二つのプーリー間の比率。タイヤまでの回転には、ほかの歯車やファイナルギアも関わります。基本は変速機の原理をご覧ください。

ボルトくん

ベルトの長さを、走りながら伸ばしてるの?

ハグルマ先生

ベルトそのものを伸ばすのではなく、輪のどの高さを通るかを変えています。ここを分けると分かりやすいですよ。

スポンサーリンク

金属ベルトとチェーンは、力の伝え方が違う

金属ベルトは、鋼製の小さな部品を連ねる

エンジンの補機を駆動するゴムベルトとは別の構造です。写真の製品とBoschの製品を同一の部品型番として扱っていません。
金属ベルトを使うCVTの構成例
エンジンの補機を駆動するゴムベルトとは別の構造です。写真の製品とBoschの製品を同一の部品型番として扱っていません。Toyota Super CVT-i 01.JPG — Hatsukari715 / 出典 / Public domain

「ベルト」といっても、エンジンの外で見かけるゴムの輪ではありません。代表的な金属プッシュベルトは、小さな鋼の部品を大量に並べ、それを重ねた薄い鋼のリングで支えています。見た目は一本の帯でも、実は細かな部品の集まりなんです。

挟まれたエレメント同士が押し合い、力を伝えます。帯を引っ張るだけではないのが特徴です。Boschのプッシュベルト解説で、小さな部品とリング、プーリーの関係を確認できます。

チェーン式は自転車と同じ仕組みなの?

Audi Multitronicの実物。チェーンのピン端部をプーリー面へ接触させて力を伝えます。自転車の歯付きスプロケットとは違います。
チェーンと円すい状のプーリー
Audi Multitronicの実物。チェーンのピン端部をプーリー面へ接触させて力を伝えます。自転車の歯付きスプロケットとは違います。Audi Multitronic chain.jpg — AutoStrong-M / 出典 / CC BY 3.0

チェーン式は、リンクとピンなどをつないだ金属チェーンを使います。一般的にはピンの端とプーリーの面が接して、力を渡します。自転車のように、歯車へ掛け替えるわけではありません。

SUBARUのリニアトロニックは、チェーン式です。2009年のレガシィ発表資料では、その特徴で広い変速比を作る設計を説明しています。ただ、チェーンというだけで、すべての金属ベルトより高効率、長寿命とは決まりません。

どちらも、必要な力でプーリーに挟むことが大切です。材料だけでなく、油の圧力、接触面、フルード、制御を合わせて性能を作ります。

ボルトくん

チェーンなら、自転車みたいに歯へ引っ掛けるの?

ハグルマ先生

普通のチェーン式CVTは、ピンの端をプーリーの面へ当てて伝えますよ。自転車のスプロケットへ掛ける仕組みとは違うんです。

油圧で、溝の幅と挟む力を調整する

普通の乗用CVTは、油圧(オイルの圧力)でプーリーの片側を動かします。溝を変えて変速しつつ、挟む力も調整して、必要なトルクを渡します。

挟む力が足りないと、傷みにつながる滑りが起きます。強すぎても、油圧を作る負担や中の抵抗が増えます。だからエンジントルク、回転数、油温を見て、ちょうどよい力に調整します。

無段でも、むだがゼロではありません。プーリーとの接触、ベルトやチェーンの変形、軸受(回転する軸を支える部分)、ポンプで失う分があります。使う条件と設計で変わるので、全CVTを一つの効率では表せません。

ボルトくん

強く挟めば挟むほど、いいんじゃないの?

ハグルマ先生

強すぎると、油圧を作る力や抵抗も増えるんですよ。伝えるトルクに合う力へ調整することが大切です。

ベルトが触れる位置で、部品への負担も変わる

ベルトとチェーンは、プーリーとの接触で力を渡します。小さい円の位置で大きなトルクを扱うときと、大きい円を使うときでは、接触面と挟む力への負担が違います。

最大と最小の比率だけでは、CVTの設計は決まりません。ベルト、プーリーの形、油圧、抵抗、フルードを合わせます。発進ギアを使うものも、低速の負担を別の道へ任せる工夫です。

ボルトくん

比率の範囲が広いほど、いいCVTなの?

ハグルマ先生

力、効率、大きさ、熱、反応を一緒に合わせるんですよ。範囲の数字だけでは、どんな場面でよく働くかは分かりません。

CVT本体と発進装置は、別の仕事をしている

トルクコンバーターの実物例。写真は、このCVTの同一製品に組み込まれた部品と断定していません。
CVTにも組み合わせる発進装置
トルクコンバーターの実物例。写真は、このCVTの同一製品に組み込まれた部品と断定していません。Torque-converter.jpg — Comyu / 出典 / CC BY-SA 3.0

エンジンを回したまま止まり、そこから発進するには、止まったタイヤとの回転差を扱う装置が要ります。多くのCVTはトルコンですが、発進クラッチを使うものもあります。CVTという名前だけでは決まりません。

トルコンは発進の回転差、プーリーとベルトは変速比を受け持ちます。トルコン付きでも、遊星歯車で段を作る有段ATと同じ中身にはなりません。

ロックアップ付きなら、条件に合わせてトルコンを直接つなぎ、油で伝える損失を減らします。これはトルクコンバーターとロックアップの仕組みと共通する仕事です。

ボルトくん

トルコンが付いたら、普通のATと同じなの?

ハグルマ先生

発進の装置は同じでも、変速の部分が違いますよ。CVTは比率をなめらかに変え、多段ATは歯車で段を作ります。

加速すると、エンジン回転が先に上がるのはなぜ?

段のある変速機は、同じ段の間なら、車速とエンジン回転数がだいたい同じ割合で上がります。CVTは加速中も比率を変えられるので、両方が同じ割合で上がる必要はありません。

強く加速するなら、まずエンジンをパワーの出る回転数へ上げ、その回転を使いつつ比率を変えて加速できます。音が先に高くなり、車速が後から伸びる感じは、この制御でも起きます。

軽く加速する、一定速度で走るときは、必要な力を保ち、燃費や静かさを優先した回転数を選べます。ただ、低回転ならいつも効率がいいわけではなく、負荷とCVT側の損失も考えます。

車速とエンジン音が一緒に上がる感触を作ったり、段付きのように回転数を変えたりするCVTもあります。いつも同じ音で加速するとは限りません。

7速モードなら、歯車も7段分あるの?

段数の表示と、中の機械は別の情報
表示や呼び名 何を表すか それだけでは分からないこと
CVTの7速モード 目標の変速比を段階的に選ぶ操作の例 独立した歯車対が7段分あるか
発進ギア付きCVT 低速側を歯車でも受け持つ構成 表示上の全段が歯車か
電気式無段変速機 回転数の関係を電気的にも調整する方式 可変プーリーやベルトの有無

多くの7速モードなどは、選べる比率の中に目標をいくつか作り、段のように切り替える機能です。パドルで7段選べても、歯車が7段分あるとは限りません。

一方、本物の歯車を一緒に使うCVTもあります。表示の段数と中の仕組みは、別に確認します。

ボルトくん

音が先に上がるのは、ベルトが滑ってるからなの?

ハグルマ先生

それだけでは分からないんですよ。先にパワーの出る回転数へ上げ、比率で加速する制御でも起きます。ただ、いつもと違う振動や加速なら点検が必要です。

発進ギアや副変速機を組み合わせるCVTもある

トヨタが2018年に発表したDirect Shift-CVTは、発進用の歯車を使います。低速を歯車へ任せ、ベルトの負担を軽くし、プーリーの小型化や広い変速比につなげた例です。

ジヤトコのJatco CVT7は、副変速機を組み合わせます。プーリーだけに広い範囲を任せず、歯車でも分担します。ただ、発進ギアとは使い方が違うので、同じ仕組みではありません。

CVTにも、歯車が使われます。ベルトなどで変速する部分に加え、前進と後退の切り替え、減速、発進を受け持つことがあります。

ボルトくん

無段変速なのに、歯車があってもいいの?

ハグルマ先生

いいんですよ。変速の中心がプーリーでも、発進や向きの切り替え、減速には歯車を使うものがあります。

ハイブリッドのe-CVTは、構造を分けて考える

ハイブリッドの電気式無段変速機も、エンジンとタイヤの回る速さの関係をなめらかに変えます。ただ、ベルトやチェーンを掛けたプーリーで変えているとは限りません。

トヨタの動力分割式は、遊星歯車、発電機、モーターを組み合わせます。歯車でつながる各部の回転を、発電機などの制御で調整します。エンジンの力は、機械の道と電気の道へ分かれて伝わります。トヨタのハイブリッドシステム技術資料で仕組みを確認できます。

この方式は、変速用の金属ベルトと可変プーリーを使いません。ベルトCVTの挟む力や油圧の話が、そのまま当てはまるわけではありません。

ただし、ハイブリッドが全部同じ動力分割式でもありません。ベルトCVTやDCTを使うものもあります。ハイブリッド、e-CVTという名前だけでなく、メーカーの説明で、その車の中身を確認しましょう。

ボルトくん

ハイブリッドのCVTにも、金属のベルトが入ってるの?

ハグルマ先生

トヨタの動力分割式では使いませんよ。ただ、ほかのハイブリッドも全部同じとは限らないので、車ごとの説明を見ましょう。

4代目Prius ZVW50のハイブリッドシステム展示。右下の切断展示にはPower split device(動力分割装置)の表示があり、ベルト式CVTとは異なる実物構成を示す。
ハイブリッドのe-CVTは、構造を分けて考える
4代目Prius ZVW50のハイブリッドシステム展示。右下の切断展示にはPower split device(動力分割装置)の表示があり、ベルト式CVTとは異なる実物構成を示す。Toyota Prius ZVW50 hybrid system.jpg — TTTNIS / 出典 / CC0

フルードの指定と、いつもと違う変化に注意する

決まった段に縛られず、必要な力に合う比率を選べるのがCVTです。なめらかな加速や、エンジンに合う回転数を使えます。一方、独特の感触があり、ベルトを挟む力、油圧、熱の管理も必要です。

大きな負荷が続くときの扱い、油の点検と交換は、車ごとに違います。CVTフルードは、部品を守るほか、接触面の摩擦と油圧にも関わります。普通のATFと同じと考えず、指定品と整備条件を確認します。

CVTというだけで、寿命や壊れやすさは決まりません。警告、振動、異音、加速の変化は点検を頼みます。「CVTはこういうもの」で、普段との違いを見過ごさないことが大切です。

ボルトくん

変な振動がしても、CVTだから仕方ないの?

ハグルマ先生

いつもと違う振動や音、警告、加速の変化は調べてもらいましょう。方式の特徴だけでは説明できないこともありますよ。

よくある疑問

CVTの7速は本物の歯車の段?

多くは、なめらかに変えられる比率に目標値を作った機能です。本物の歯車を使う製品もあるので、表示と中身は分けて確認します。

チェーン式なら潤滑油は不要?

チェーンでも、接触面、軸受、油圧にはその仕組みに合うフルードが必要です。金属だから、油なしで動けるわけではありません。

トヨタの電気式CVTにもベルトがある?

動力分割式は、変速用ベルトと可変プーリーを使いません。歯車につながる、モーターと発電機の回転を調整する仕組みです。

関連記事

トランスミッションの役割と種類|MT・AT・CVT・DCTの違い/クラッチとトルクコンバーターの違い|動力を伝える仕組み/多段ATの仕組み|トルクコンバーターと遊星歯車の役割

実は、F1マシンでもCVTを試していた

CVTは、街乗りのためだけに考えられた仕組みではありません。1993年には、ウィリアムズがF1マシンでCVTをテストしています。運転したデビッド・クルサードは、変速のたびに回転数が上下するのではなく、エンジンが力を出しやすい回転数にとどまる感覚を振り返っています。

エンジンは得意な回転を続け、車速の変化は変速比で受け持つ。ここまで見てきたCVTの考え方を、レースでも使おうとしたわけです。ただし、開発中に禁止され、決勝レースへの出場は実現しませんでした。速さについての本人の予想と、同条件で実測した結果は分けて考える必要があります。

出典:RaceFansによるデビッド・クルサード本人へのインタビュー。

参考資料

スポンサーリンク
この記事を書いた人
ハグルマ先生のイラスト

ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

著者プロフィール・執筆記事一覧