ガソリンスタンドに並ぶ「レギュラー」「ハイオク」「軽油」。名前だけ見ると、普通・高級・軽めの三段階に見えますが、そういう松竹梅ではありません。軽自動車だから軽油、なんて選び方をすると修理代まで給油することになります。
そもそもガソリンは何からできていて、ハイオクとレギュラーでは何が違うのでしょうか。今回は、原油からガソリンができるまでと、それぞれの燃料の違いをやさしく解説します。
ガソリンは、一種類の物質ではなく成分の組み合わせ
地下などから取り出した、加工前の石油が「原油」です。ガソリンは、その原油を分けたり加工したりして作ります。
ガソリンは、一つの決まった物質の名前ではなく、さまざまな炭化水素などを含む燃料です。炭化水素は、主に炭素と水素でできた物質の仲間。原油から取り出したり加工したりした成分を、必要な性質に合わせて配合します。
ガソリンエンジンでは、空気と混ぜ、点火プラグの火花で燃やして使います。だから、蒸発(液体が気体へ変わること)のしやすさや、意図しない燃え方への強さなども大切です。ただ燃えれば、どんな液体でもよいわけではないんですね。
大切な性質は、ノッキングを起こしにくいことだけではありません。ENEOSの石油便覧も、蒸発のしやすさや、酸化して変わりにくいことなどを、車用ガソリンの性能として挙げています。
エンジンでは、ガソリンを細かな粒として噴き、蒸発させながら空気と混ぜます。それを燃やしたエネルギーで、ピストンを動かします。空気と燃料の割合は、空燃比の意味とリッチ・リーンの違いで説明しています。
車の内燃機関には、ガソリンと軽油のほか、LPG、バイオ燃料、合成燃料なども使います。内燃機関の燃料が、全部原油から作られるわけではありません。
ボルトくん
同じ石油から作るなら、軽油でも走れそうなのに?
ハグルマ先生
燃料の性質と、エンジンの燃やし方が違います。指定と違うものを入れてよい、という意味にはなりませんよ。
原油を分け、加工し、調合してガソリンにする
原油の中には、性質の違う成分が混ざっています。製油所では、それを分けたり、分子の組み合わせを変える加工をしたりして、ガソリンや灯油、軽油などを作ります。原油をろ過して、そのまま給油機へ送っているわけではないんです。
まずは、沸点の違いを使って分けます
原油を熱して蒸留塔へ送り、沸騰する温度の違いで、ナフサ、灯油、軽油などに分けます。ある温度範囲で取り出す成分のまとまりを「留分」と呼びます。ただ、どれも混合物なので、一つの温度できれいに境界が分かれるわけではありません。
このうちナフサは、ガソリンなどの原料に使う成分のまとまりです。この段階で取り出したものが、そのまま給油所の商品になるわけではありません。
加工して、燃料に必要な性質へ近づけます
次は、代表的な加工です。全部を同じ順番で通すのではなく、原料の性質と作りたい製品に合わせて、必要な工程を組み合わせます。
- 脱硫:含まれる硫黄分を減らします。
- 分解:重い成分の分子を分解し、ガソリンの基材などに変えます。
- 改質:ナフサなどの分子構造を変え、オクタン価の高い基材を作ります。
複数の基材を調合し、品質を確かめて出荷します
改質や分解で作ったガソリンなどを混ぜ、オクタン価と蒸発のしやすさを調整します。「直留ガソリン」「改質ガソリン」は、どの工程で作った材料かの呼び方。給油所の「レギュラー」「ハイオク」とは、分ける基準が違うんですね。
品質を確かめた後、輸送と貯蔵の設備を通って給油所へ届きます。給油後に車の中をどう流れるかは、燃料タンクからインジェクターまでの流れへつながります。
| 段階 | 目的 |
|---|---|
| 蒸留 | 沸点の違いで原油を分ける |
| 加工 | 分子の構造や成分を変えて必要な性質に近づける |
| 調合・検査 | 複数の基材を混ぜ、燃料としての品質を確かめる |
ボルトくん
原油を沸かして分けたら、それで完成なの?
ハグルマ先生
分けた後も、加工して性質を整え、いくつかの材料を混ぜるんです。そうして、車で使う製品の品質に仕上げますよ。
ハイオクとレギュラーは、ノッキングへの強さが違う
日本の自動車用ガソリンのJIS規格は、リサーチ法のオクタン価、RONに下限を設けています。ハイオクに当たる1号系統は96.0以上、レギュラーに当たる2号系統は89.0以上です。
| 給油所での呼び名 | JISの区分 | RONの下限値 |
|---|---|---|
| ハイオク | 1号系統 | 96.0 |
| レギュラー | 2号系統 | 89.0 |
これは規格の最低値で、すべての商品がちょうど96や89という意味ではありません。JISには酸素分などの区分と、E10対応車向けの規格もあります。自分の車で使えるかは、オクタン価だけでなく、エタノールをどれくらい混ぜているかも確認します。
オクタン価が高くても、エネルギーが多いわけではない
普通のガソリンエンジンは、プラグの火花から炎が広がって燃えます。その炎が届く前に、残った混合気(空気と燃料が混ざったもの)が勝手に着火すると、急な圧力の変動が起きます。これがノッキングです。
オクタン価が高い燃料ほど、この異常な燃え方に耐えやすくなります。数字が高い分だけ、燃料のエネルギーが多いわけではありません。ハイオクなら、どの車も速くなる、燃費がよくなるとは限らず、設計と制御が関わります。詳しくは圧縮比とノッキングの仕組みをご覧ください。
入れる燃料は、車の指定で決めます

給油作業の実物写真。国や給油所で色の使い方が違うため、写真のノズルの色を日本の油種区分として読まないでください。Fueling Car.jpg — Santeri Viinamäki / 出典 / CC BY-SA 4.0
入れる燃料は、説明書と給油口の表示で確認します。ハイオク指定車にレギュラーを使えるか、例外の条件があるかは、車ごとに違います。ノックセンサーがあるから、指定外をずっと使ってよいとは判断できません。
米国の給油機の87や91は、日本のRONとは別の尺度の場合があります。輸入車は、日本とアメリカのオクタン価表示の違いも確認してください。
ボルトくん
ハイオクを入れたら、どの車もパワーが上がるの?
ハグルマ先生
必ずではないんですよ。オクタン価はノッキングへの強さで、エネルギーの量をそのまま表す数字ではないんです。
オクタン価と、蒸発のしやすさは別の性質
オクタン価は、ノッキングへの強さです。一方、空気と混ざって燃えるには、液体が気体になる、蒸発のしやすさも関わります。この二つは、別の性質です。
ENEOSの石油便覧は、蒸発しにくいと寒いときの始動に影響し、蒸気圧が高すぎると暑い日の燃料配管などで問題が起きやすいと説明しています。JISも、オクタン価と別に、蒸留の性質と蒸気圧を扱います。
ガソリンは、これらを合わせて調整しています。だからオクタン価だけで、品質全体の順位は決められません。E10などのエタノール混合率も別の適合条件で、数字が高くても、車が対応しない燃料を使えるわけではありません。
ボルトくん
オクタン価が高ければ、どんなガソリンでも使えるの?
ハグルマ先生
ほかの性質や、エタノールへの対応も必要なんです。燃料の種類と規格を、車の指定に合わせて選びますよ。
ガソリンと軽油では、着火のさせ方が違う
ガソリンと軽油は、どちらも石油から作る代表的な燃料ですが、燃やし方が違います。一般的なガソリンエンジンは、空気と燃料を混ぜて火花で点火します。ディーゼルは、空気を圧縮して熱くし、そこへ燃料を噴いて自己着火させます。
| 比較する点 | ガソリン | 軽油 |
|---|---|---|
| 主な使用先 | 火花点火式ガソリンエンジン | ディーゼルエンジン |
| 代表的な指標 | オクタン価:ノッキングへの抵抗性 | セタン価・セタン指数:着火性に関する指標 |
| 選ぶときの基準 | 車両メーカーの指定燃料 | |
軽油は、噴射してから適切な時間で火がつく性質が大切です。セタン価が高いほど、自己着火しやすいことを示します。「オクタン価が低いからノッキングしにくい」と説明するものではなく、違う燃やし方に合う性質を評価しています。
ボルトくん
どっちも燃えるなら、入れ替えても走れるんじゃないの?
ハグルマ先生
エンジンと火のつけ方が違うんです。故障するおそれがあるので、指定された種類を使ってくださいね。
燃料を入れ間違えたら、エンジンをかけない
燃料は、車名やボディの大きさで選べません。給油口と説明書を見ます。「軽自動車だから軽油」は間違いです。軽油はディーゼル車のための燃料なんです。
給油はエンジンを止め、給油機の案内に従います。静電気を除去するなど、指定された安全措置を守ってください。
間違った燃料を入れたと分かったら、エンジンをかけず、給油所のスタッフやロードサービスへ相談します。すでに走っていれば、安全な場所に停めてエンジンを止め、救援を頼みましょう。
自分で燃料を抜いたり、正しい燃料を足して薄めたまま走ったりするのは避けてください。
ボルトくん
間違えても、正しい燃料を足したら薄まるんじゃないの?
ハグルマ先生
薄めて走る方法は取らないでくださいね。まだ始動していなければエンジンをかけず、スタッフやロードサービスへ相談します。
よくある疑問
JISの96と89はすべての商品そのものの数値?
規格の下限の数字です。個々の商品が、必ずちょうど96や89という意味ではありません。
軽自動車には軽油を入れる?
軽油はディーゼル車用です。大きさや車名で選ばず、給油口と説明書にある燃料の指定を確認します。
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