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車のエアコンの仕組み|冷媒・コンプレッサー・冷房・暖房・除湿

Audiのエアコン表示と操作部
Audiのエアコン表示と操作部。Aircon.audi.JPG — Mattes / 出典 / Public domain。

車のエアコンは、冷たい風をどこから作っているのでしょうか?氷を積んでいるわけでも、熱を消しているわけでもありません。車内の熱を、車の外へ運ぶ仕組みを見ていきましょう。

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配管を回る冷媒と、車内へ送る空気は別もの

Audiの空調表示・操作部。写真の表示は、すべての車の自動切り替え条件を示すものではありません。
曇り取りと空調の操作部
Audiの空調表示・操作部。写真の表示は、すべての車の自動切り替え条件を示すものではありません。Aircon.audi.JPG — Mattes / 出典 / Public domain

冷房は、車内の熱を受け取り、外へ逃がすことで車内を冷やします。その熱の運び役が冷媒です。冷媒を配管の中で循環させ、液体になったり気体になったりする変化などを使います。

車内側では冷媒が熱を受け取り、その冷えた部分を通る空気が冷たくなります。車外側では、集めた熱を外の空気へ渡します。コンプレッサーは、その循環を成り立たせるため、冷媒を圧縮する装置です。

冷房では、エバポレーターという冷たい部品に空気を通します。金属の壁を通して、空気の熱が中の冷媒へ移り、冷えた空気が車内に届きます。デンソーのエバポレーター解説も、この熱の受け渡しと、冷媒が蒸発する働きを説明しています。

ボルトくん

冷たいものを作って、車内へ足してるんじゃないの?

ハグルマ先生

車内から熱を運び出している、と考えると分かりやすいですよ。だから、外へ熱を逃がす側も大切なんです。

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コンプレッサーからエバポレーターまで、冷房の流れを追う

compressorは圧縮機、condensadorは車外へ熱を逃がす凝縮器、filtro secadorは乾燥器、válvula de expansãoは圧力を下げる膨張弁、evaporadorは空気の熱を受け取る蒸発器、blowerは送風機です。状態を簡略化した図で、減圧後は実際には液体と気体が混ざります。
主要部品を示す冷房回路図
compressorは圧縮機、condensadorは車外へ熱を逃がす凝縮器、filtro secadorは乾燥器、válvula de expansãoは圧力を下げる膨張弁、evaporadorは空気の熱を受け取る蒸発器、blowerは送風機です。状態を簡略化した図で、減圧後は実際には液体と気体が混ざります。Climatizacao-automotiva-air-conditioning.jpg — Elilopes / 出典 / CC BY-SA 4.0

ここからは、冷媒という物質がぐるっと回る道を追いましょう。名前が長い部品もありますが、まずは「押し縮める」「外へ熱を逃がす」「圧力を下げる」「車内の熱を受け取る」という仕事に注目してください。膨張弁を使う代表例で説明します。実際の配管には、センサーや水分を取り除く部品なども加わります。

1. コンプレッサーが冷媒の気体を圧縮する

まずコンプレッサーが、戻ってきた低い圧力の冷媒ガスを吸って、ぎゅっと圧縮します。すると、冷媒は高温・高圧の気体になります。冷媒を回すための働きですが、この時点で全部液体になるわけではありません。

熱を運び続けるには、コンプレッサーを動かすエネルギーも必要です。エンジンのベルトで回すものと、モーターで回すものがあります。外へ出す熱には、車内から運んだ熱だけでなく、コンプレッサーを動かす仕事に関わる分も含まれます。

2. コンデンサーが車外へ熱を捨てる

次はコンデンサーです。熱い冷媒がここで走行風やファンの風に熱を渡すと、気体が液体へ変わっていきます。多くの車では前のほうにあります。見た目が似ていても、エンジンの冷却水を冷やすラジエーターとは、担当が違うんですね。出典:デンソー・コンデンサーの仕組み

3. 膨張弁で冷媒の圧力を下げる

液体になった冷媒は、膨張弁の狭い通り道を通ります。ここで圧力が下がり、一部が蒸発します。低温・低圧の液体と気体が混ざった状態になって、エバポレーターへ進みます。膨張弁は、そこへ送る冷媒の量も調整しています。

4. エバポレーターが空気から熱を受け取る

液体が気体へ変わるには、熱が必要です。汗が蒸発すると肌から熱を持っていくのと同じように、ここでは冷媒が空気から熱を受け取ります。

エバポレーターでは、残った液体の冷媒が、通ってくる空気の熱をもらって蒸発します。熱を渡した分、空気は冷たくなります。気体になった冷媒はコンプレッサーへ戻り、また同じ一周を始めるわけです。

つまり、圧縮して外で熱を逃がし、圧力を下げて車内側の熱を受け取る。この繰り返しで、車内の熱を外へ運びます。部品の構成はデンソーの冷凍サイクル解説、圧力を下げる装置は膨張弁などの製品解説でも確認できます。

冷媒を一周して読む:圧力と熱のやり取り
部品 主な変化 熱の向き
コンプレッサー 気体を圧縮して高圧にする 圧縮するための動力を受ける
コンデンサー 高圧側で気体から液体へ変わる 車外へ熱を渡す
膨張弁 冷媒を減圧する ここで冷却空気へ直接熱を渡すわけではない
エバポレーター 低圧側で液体が気体へ変わる 通過する空気から熱を受け取る

ボルトくん

コンプレッサーでぎゅっと押したら、すぐ液体になるの?

ハグルマ先生

まずは高温・高圧の気体になるんです。その後、コンデンサーで外へ熱を渡すと、液体へ変わりますよ。

ボルトくん

液体になった冷媒は、車内側でまた気体になるの?

ハグルマ先生

そうですよ。圧力を下げた後、エバポレーターで空気の熱を受け取って蒸発します。その分、送る空気が冷えるんです。

空気の水分を水滴に変えて、車外へ出すと除湿になる

湿った空気が冷たいエバポレーターに触れると、条件によっては水蒸気が水滴になります。その水を車の外へ流すので、空気の水分も減らせます。冷房の後、車の下に透明な水が落ちるのは、この排水の場合があります。

水分を取った空気を必要に応じて暖め直せば、暖かく乾いた風にもできます。だからA/Cは夏だけでなく、雨の日や冬の曇り取りにも役立つんです。トヨタのA/C機能解説も、冷房と除湿の働きを説明しています。

ただし、車の下にある液が全部この排水とは限りません。色や油分がある、いつもと違うにおいがする、冷却水が減る場合などは点検が必要です。熱い冷却系のキャップを開けて確かめることは、しないでください。

ボルトくん

冬の曇り取りにも、A/Cを使う意味があるの?

ハグルマ先生

水分を取った空気を暖めて送れるんです。冷たい風だけでなく、暖かく乾いた風を作るときにも役立ちますよ。

暖房は、エンジンの熱や電気、ヒートポンプを利用する

VW T4のClimatronicの温度調整部です。右のStellmotorはモーター、Drehachse der Temperaturklappeは仕切り板の回転軸、Verbindungsstangeは連結棒。モーターで棒を動かし、板の角度を変えます。外す内装と作業方法は車によって違います。
VW T4の温度調整用モーターと連結ロッド
VW T4のClimatronicの温度調整部です。右のStellmotorはモーター、Drehachse der Temperaturklappeは仕切り板の回転軸、Verbindungsstangeは連結棒。モーターで棒を動かし、板の角度を変えます。外す内装と作業方法は車によって違います。T4-Wiki「Climatronic_Stellmotor_Temperaturklappe_Mechanik.jpg」(投稿:Zaydo) / 出典 / CC BY 2.0 DE
VW T4のClimatronicの空調ユニットを取り出した写真。左側に、足元・曇り取り用フラップ、温度調整フラップ、中央フラップを動かすモーターとリンクが集まっています。実車では、このユニットの周囲に内装や配線があります。
VW T4の空調ユニットと各フラップのモーター
VW T4のClimatronicの空調ユニットを取り出した写真。左側に、足元・曇り取り用フラップ、温度調整フラップ、中央フラップを動かすモーターとリンクが集まっています。実車では、このユニットの周囲に内装や配線があります。T4-Wiki「Climatronic_Stellmotoren_Einbauort_Uebersicht.jpg」(投稿:Zaydo) / 出典 / CC BY 2.0 DE

エンジン車では冷却水の熱を利用するのが一般的です

一般的なエンジン車の暖房は、エンジンの熱を受け取った冷却水を使います。暖まった冷却水をヒーターコアへ流し、その表面を通る空気を暖めるわけです。この冷却水の流れは、冷房用の冷媒とは別の回路です。

冷えたエンジンをかけてすぐには温風が出にくいのも、冷却水がまだ暖まっていないためです。補助ヒーターなどが付くかによっても違います。冷却水の流れは、ラジエーターとエンジン冷却の仕組みも参考にしてください。

BMW E32でヒーター周辺を分解した例。暖房装置が車内中央部に収まり、アクセスのため周囲の内装を外しています。取り付け位置と分解範囲は車種で変わります。
BMW E32のヒーター周辺を分解した車内
BMW E32でヒーター周辺を分解した例。暖房装置が車内中央部に収まり、アクセスのため周囲の内装を外しています。取り付け位置と分解範囲は車種で変わります。BMW E32 heater core.jpg — Rpvdk at English Wikipedia / 出典 / Public domain

EVでは電気ヒーターやヒートポンプを使います

エンジンのないEVは、燃焼の熱を暖房に使えません。電気を熱に変えるヒーターや、外の空気などから熱を集めて車内へ運ぶヒートポンプを使います。両方を組み合わせる車もあり、全部のEVが同じ暖め方ではありません。

ヒートポンプは、暖房に使う電気を抑えやすい仕組みです。ただし、外の温度やシステムの作りで効率と暖める力が変わります。バッテリーや駆動装置の熱を使う方式もあります。ハイブリッド車やPHEVも熱源の組み合わせが違うので、エンジンが止まったら必ず暖房も止まる、というわけではありません。出典:デンソー・電動車の熱マネジメント

EVの暖房:電気から熱を作るか、外から熱を運ぶか
方式 暖める方法 仕様を見る点
電気ヒーター 電気エネルギーを熱に変える 車両の消費電力・制御条件
ヒートポンプ 冷媒を使って熱を運ぶ 外気温、霜取り、補助ヒーターの有無

ボルトくん

エンジンのないEVは、どうやって暖めるの?

ハグルマ先生

電気ヒーターや、外から熱を集めるヒートポンプを使うんです。両方ある車もありますし、外の温度で効率や暖房の能力も変わりますよ。

A/C・AUTO・内外気の切り替えは、別々の設定

温度・風量・吹出方向などを切り替えるHonda Fitの実物。A/Cと送風、取り込み先を別の機能として確認します。
手動式の空調操作部
温度・風量・吹出方向などを切り替えるHonda Fitの実物。A/Cと送風、取り込み先を別の機能として確認します。1st gen Honda Fit manual air conditioner console.jpg — Qurren / 出典 / CC BY-SA 3.0
  • A/C:一般的には冷房・除湿に関わるスイッチです。エンジン車の暖房はA/Cを切っても使える場合がありますが、除湿が必要な場面ではA/Cが役立ちます。
  • AUTO:設定した室温に近づけるため、風量や吹き出し位置などを自動調整します。どの機能まで自動で動くかは車種によります。
  • 内気循環/外気導入:空気の取り入れ先を切り替えます。内気循環は車内の空気を利用し、外気導入は外の空気を取り入れて換気します。

内気循環は、車内を早く冷やしたいときや、一時的に汚れた外の空気を避けたいときに便利です。ただし、窓の曇りや換気にも気を配ります。使い分けは内気循環と外気導入の注意点で詳しく解説しています。

窓が曇ったら、まず見える状態を取り戻します。フロントデフロスターを使い、車の説明書に従って外気導入、A/C、温度を調整してください。トヨタ・カローラの取扱説明書にも、水分を取る曇り取りの働きと、各設定の説明があります。

ボルトくん

AUTOを押すのも、内気循環にするのも、同じなの?

ハグルマ先生

AUTOは設定温度に合わせて風量などを調整する機能で、内気循環は空気をどこから取るかの設定なんです。自動でどこまで切り替えるかは、車によって違いますよ。

冷えが弱いときは、補充より先に原因を調べる

冷えないからといって、冷媒不足とは限りません。フィルターの詰まり、風を送る不調、外へ熱を逃がせない状態、制御の問題などもあります。風が弱いのか、風は出るのにぬるいのか、停車中だけ冷えないのか。そうした違いを伝えると、点検の手がかりになります。

冷媒の配管を開ける、冷媒を足す、電動コンプレッサーの配線を扱う作業は、自己判断で行わず整備工場へ頼んでください。冷媒やオイルには種類と量の指定があります。普段は説明書に沿ってフィルターを点検し、荷物で吹き出し口をふさがないようにします。夏の操作は車内を効率よく冷やす方法にまとめています。

ボルトくん

冷えなかったら、冷媒を足せば直るの?

ハグルマ先生

足りないことだけが原因ではないんですよ。送風、放熱、制御の問題もあるので、症状を伝えて点検してもらいましょう。自分で冷媒の配管を開けないでくださいね。

車内の熱を外へ運ぶから、冷たい風が出る

冷房は車内の熱を外へ運ぶ仕組みです。風の弱さと、冷媒が回らない・外へ熱を逃がせない問題は分けて考え、いつ冷えないかを伝えて点検してもらいましょう。

よくある疑問

コンプレッサーで冷媒が全部液体になる?

圧縮した直後は、高温・高圧の気体です。その後、コンデンサーで熱を逃がすことで液体になる、という順番です。

暖房中はA/Cが不要?

除湿にも使うので、暖房中でも役立つ場合があります。車の方式や外の温度、曇り取りの指示を説明書で確認してください。

関連記事

ラジエーターの仕組み|冷却水の流れと温度調整/車の内気循環と外気導入|使い分けと換気の注意点/夏の車のエアコンの使い方|車内の冷やし方と設定の確認

参考資料

HELLA:冷却回路とヒーター。関連する仕組みをメーカーの資料でも確認できます。

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この記事を書いた人
ハグルマ先生のイラスト

ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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