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BMWツインスクロールターボの仕組み|N55・ツインターボとの違い

2014年BMW 335i xDrive GTのエンジンルーム
2014年BMW 335i xDrive GTのエンジンルーム。Engine - 2014 BMW 335i xDrive GT (14557464772).jpg — Michael Sheehan / 出典 / CC BY 2.0。

BMWで聞く「ツインスクロールターボ」。二つあるのは、ターボ本体なのでしょうか、それとも別の部分なのでしょうか?

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ツインスクロール、ツインターボ、TwinPower Turboの違い

似た名前でも、示している内容はそれぞれ違います。

  • ツインスクロール:タービンへ排気を導く通路を2系統に分けた構造です。
  • ツインターボ:ターボチャージャーを2基使う構成です。
  • BMW TwinPower Turbo:過給や燃料噴射などを組み合わせたBMWの技術名称です。名前だけでターボの基数や構造は決まりません。

ツインスクロールとツインターボは、両立する場合もあります。BMWのV8にはツインスクロールターボを2基使う例がありますが、N55は1基です。実車の構成は、エンジン型式と年式から確認しましょう。

採用例は、BMWのN55の公式解説とM6 Gran Coupeの公式解説で確認できます。

ボルトくん

TwinPowerって書いてあったら、ターボが二つ付いているの?

ハグルマ先生

その名称だけでは台数は分かりません。過給や燃料噴射などを組み合わせたBMWの技術名称なので、具体的なエンジン仕様を確認します。

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まずは、排気と吸気を分けて見る

ターボでは、排気側のタービンと吸気側のコンプレッサーが一本の軸でつながっています。高温・高圧の排気がタービンを回し、その回転でコンプレッサーが空気を圧縮してエンジンへ送ります。

取り込む空気を増やし、それに合う燃料を供給することで大きなトルクや出力を得ます。ターボが排気そのものを吸気側へ送り込んでいるわけではありません。

吸排気の流れと過給方式については、ターボチャージャーの基本的な仕組みと種類で詳しく確認できます。

ボルトくん

二つに分けるのは、エンジンへ入る空気のほう?

ハグルマ先生

ツインスクロールで分けるのは排気側の通路です。吸気を圧縮するコンプレッサーと、排気で回るタービンを区別して見ましょう。

排気パルスを分け、干渉を抑える

三菱向けツインスクロールターボの実物例。排気側の通路を分ける考え方を見る素材で、BMW N55用の部品として表示していません。
ツインスクロール部品の実物
三菱向けツインスクロールターボの実物例。排気側の通路を分ける考え方を見る素材で、BMW N55用の部品として表示していません。Mitsubishi twin-scroll turbo.JPG — DmitryKo / 出典 / CC0。

排気は一定の勢いで流れ続けるものではありません。気筒の排気バルブが順に開くため、圧力が周期的に変わります。この脈動が排気パルスです。

すべてを一つの通路へ集めると、ある気筒の圧力波が別の気筒の排気に影響します。ツインスクロールはタイミングを考えて気筒を二組に分け、マニホールドからターボ内部まで流路を分離します。

気筒間の排気干渉を抑えると、圧力波のエネルギーをタービンの駆動に生かしやすくなります。別々の通路から来た排気が、同じタービンを回すのがポイントです。BorgWarnerのBMW向け技術解説でも、この構造が説明されています。

二つの通路の大小だけで考えない

Hyundaiのツインスクロール部品の実物例。通路の分離を見る写真で、BMWと同じ寸法・形状・気筒の組み合わせという意味ではありません。
分割された排気側入口の実物
Hyundaiのツインスクロール部品の実物例。通路の分離を見る写真で、BMWと同じ寸法・形状・気筒の組み合わせという意味ではありません。Twin-scroll turbo T-GDI.jpg — DmitryKo / 出典 / CC0。

設計によって通路やノズルの形に違いを持たせる場合はありますが、中心となる考え方は排気パルスを分けて利用することです。

大きい通路が外周、小さい通路が中央を回すという説明を、すべての製品へ当てはめることはできません。運転状態に応じて通路面積を変える可変ジオメトリーターボとも、別の構造です。

ボルトくん

二本の通路があるなら、羽根車も二つあるの?

ハグルマ先生

排気側では、二つの流れが同じタービンを駆動します。気筒ごとの排気パルスを、途中で干渉させにくくするために分けています。

N55は、直列6気筒の排気を三気筒ずつに分ける

N55は、BMWが2009年に発表した世代の3.0L直列6気筒ガソリンエンジンです。先行するN54がターボ2基だったのに対し、N55は1基のツインスクロールを採用しました。

当時のBMW資料では、六つの気筒の排気を三気筒ずつの二系統に分け、マニホールドとターボ内部で別々に導く構造が説明されています。配置の基本は、シリンダー数と配列の基礎も参考になります。

ただし、すべてのBMWが同じ構成というわけではありません。気筒数やエンジン世代で方式は変わります。N55の説明は、BMWのTechnology Day 2009の25〜28ページで確認できます。

直列4気筒では、組み合わせも変わる

2013年発表の328i Gran Turismoについて、BMWは1・4番気筒と2・3番気筒を別流路へ導くと説明しています。六気筒の分け方を四気筒へそのまま使うことはできません。組み合わせは、そのエンジンの点火順序や排気タイミングに合わせて決めます。

この例は、BMWの3 Series Gran Turismoの公式解説にあるTwin-scroll turbocharging節で確認できます。

次の表は、順番を仮定して二組へ交互に分ける考え方を示すものです。各車の指定値の一覧ではありません。実際の設計では、点火だけでなく排気バルブの開く時期も確認します。

点火順序を仮定し、排気の順番を二組へ分ける計算例
例 点火順序 通路の組
直列6気筒の仮定例 1→5→3→6→2→4 1・2・3/4・5・6
直列4気筒の仮定例 1→3→4→2 1・4/2・3

ボルトくん

四気筒も、隣り合う二つずつに分ければいいの?

ハグルマ先生

並んでいる位置だけでは決まりません。排気のタイミングに合わせて組み合わせるので、328iの例では1・4番と2・3番に分けています。

低回転から過給を立ち上げやすくする

排気エネルギーを効率よくタービンへ伝え、低回転域から過給圧を立ち上げやすくするのが狙いです。アクセルを踏んでから力が出るまでのターボラグを減らすことに役立ちます。

排気干渉を抑えることは、シリンダー内のガス交換にも有利です。エンジンと適切に組み合わせれば、扱いやすい低速トルクや効率の向上につながります。

ただし、応答性にはターボの大きさ、回転部の慣性、配管、エンジン制御も関わります。あらゆる条件で遅れがゼロになる保証ではありません。関係する要素は、Garrett Motionのターボラグ解説で確認できます。

ボルトくん

ツインスクロールなら、ターボラグはなくなるの?

ハグルマ先生

減らす工夫の一つですが、遅れには羽根車や配管、制御も関わります。どんな条件でもゼロになるわけではありません。

背圧、燃費、修理費は、流路の数だけでは決まらない

排気干渉が減っても、背圧はなくならない

背圧は、エンジンからガスを押し出すときに関わる排気側の圧力です。タービンが排気の圧力や温度のエネルギーで仕事をするには、前後の圧力差が必要です。

ツインスクロールで干渉や損失を減らせても、抵抗や背圧がすべて消えるわけではありません。触媒や配管を含む排気システム全体で考えます。原理はGarrett Motionの技術資料でも確認できます。

ツインスクロールで変えることと、別に残る条件
見るもの 確認する内容
排気干渉 各通路へ届く排気のタイミング
背圧 タービンや排気通路を通る抵抗
燃費 燃焼、摩擦、過給制御、運転条件を含むエンジン全体
交換・修理 エンジンとターボの型式、適合、周辺部品

燃費は、エンジン全体の技術で変わる

N55には直噴や、吸気バルブのリフトを変えるVALVETRONICなども組み合わされています。燃費や応答性の変化を、流路だけの効果と切り分けることはできません。

ツインスクロールにすれば混合気が自動的に薄くなる、点火時期が一定方向に変わるというわけでもありません。燃料は空燃比と運転状態に合わせて制御します。

適合と修理費は、車両ごとに確かめる

二系統を分けて導くには、対応したマニホールドとタービンハウジングを一体の流路として設計する必要があります。入口を二つにするだけでは、同じ効果を得られません。

搭載スペースと修理費は、エンジン配置、部品の一体化、作業内容などで変わります。必ず大きい、必ず高額と決めず、車台番号に合う部品と必要な作業で確認しましょう。

ボルトくん

ターボの入口だけ二つに替えれば、同じ効果が出る?

ハグルマ先生

気筒からタービンまで、流れを分けて設計する必要があります。対応するマニホールドとハウジングがそろわなければ、同じ仕組みにはなりません。

気筒の並びより、排気が来る時間を考える

ツインスクロールで重視するのは、隣り合う気筒を二つの箱に分けることではありません。排気バルブが開くタイミングに合わせて、圧力波が別の気筒へ干渉しにくい組み合わせを選びます。

BMWの2013年328i Gran Turismoの公式説明では、直列4気筒の1・4番と2・3番を別系統へ導きます。一方、N55の直列6気筒は三気筒ずつです。気筒の数だけでなく、点火順序、バルブ時期、マニホールドからタービンまでの流路を一緒に設計します。

ターボの入口に仕切りがあっても、その手前で排気を一つに混ぜると、気筒から別々に導く設計と同じにはなりません。後付け部品の適合では、エンジン型式、マニホールド、ハウジングと制御の組み合わせまで確かめます。写真の入口だけで性能や互換性を判断しないことが大切です。

ボルトくん

四つの気筒なら、1・2番と3・4番に分けるのが自然じゃない?

ハグルマ先生

位置の近さではなく、排気が来るタイミングを見ます。328iの公式例は1・4番と2・3番です。組み合わせはエンジンごとに確かめます。

よくある疑問

TwinPower Turboなら必ずツインスクロール?

BMWの技術名称です。ターボの台数や構造は、具体的なエンジン型式・世代の資料で確認します。

ツインスクロールなら排気の抵抗はゼロ?

タービンが仕事をする圧力差や、触媒・配管の損失は残ります。干渉を減らすことと、抵抗が消えることは違います。

関連記事

ターボチャージャーの仕組みと種類|過給とターボラグの関係/空燃比とは?理論空燃比・リッチ・リーンとセンサーの働き/直列6気筒はなぜ滑らか?V6との構造・振動の違い

参考資料

BMW:2014年モデル335i xDrive Gran TurismoとN55。写真の被写体と説明の適用範囲を照合するための一次資料。

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この記事を書いた人
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ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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