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F1の1.6Lエンジンはなぜ高出力?2026年PUと旧世代の違い

展示されたMercedes-AMG F1 M10 EQ Power+パワーユニット
展示されたMercedes-AMG F1 M10 EQ Power+パワーユニット。Mercedes-AMG F1 M10 EQ Power+ at Formula 1 Exhibition, London.jpg — Hullian111 / 出典 / CC BY-SA 4.0。

F1のエンジンは、排気量が小さいのに、どうして大きな力を出せるのでしょうか。エンジンと電動機を分けて見てみます。

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エンジン単体の馬力と、PU全体の馬力を分けて読む

内燃エンジンは、燃料を燃やして機械的な動力を取り出す部分です。F1でいうパワーユニット(PU)には、エンジンに加えて過給器、回生と電動アシストのシステム、蓄電装置、制御装置などが含まれます。

「F1は何馬力」という数字を見たら、まずエンジン単体の出力か、電動アシストを含めた出力かを確かめましょう。対象年や運転条件が違えば、同じ車でも数字の意味が変わります。

タイトルなどで見かける「840馬力」は、全メーカー・全年式に共通する規格値ではありません。FIAは排気量やエンジンの構成、使える燃料や電気エネルギーなどを制限していますが、各社のエンジンを一律840馬力にする規則ではありません。

馬力にもPSやhpといった単位の違いがあります。比較するときは、トルクと馬力の単位をそろえたうえで、出典が示す測定範囲と条件を確認します。

ボルトくん

840馬力って、F1ならどのエンジンも同じなの?

ハグルマ先生

共通の出力ではありません。エンジンだけの数字なのか、モーターを含むのか、何年の仕様なのかで読み方が変わります。

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ターボで、同じ排気量に多くの空気を送り込む

排気量1.6Lは、ピストンの動きによって変わる容積を全気筒分足したものです。1秒間に取り込める空気の質量や、取り出せる出力の上限を直接表しているわけではありません。

ターボチャージャーは、排気の力でタービンを回し、同じ軸につながるコンプレッサーで吸気を圧縮します。自然に吸い込むより多くの空気をシリンダーへ送れるため、適切な燃料供給と組み合わせると、同じ排気量でも大きな仕事を取り出せます。

ただし、過給を強めれば際限なく出力が増えるわけではありません。吸気の温度やノッキング、部品の強度、冷却能力に加え、競技規則の制限も受けます。空気と排気の流れは、ターボチャージャーの仕組みで詳しく紹介しています。

ボルトくん

1.6Lって、吸い込める空気の量じゃないの?

ハグルマ先生

ピストンが動く容積のことです。同じ容積でも、ターボで空気を圧縮して送れば、入る空気の質量を増やせます。

燃料のエネルギーを、できるだけ動力に変える

燃料を好きなだけ増やせないF1では、与えられた燃料からどれだけ仕事を取り出せるかが重要になります。燃焼室や噴射、点火だけでなく、圧縮と膨張、吸排気、摩擦まで見直して効率を高めます。

メルセデスのF1チームは、旧世代のターボハイブリッドPUで熱効率50%超に達したと説明しています。これは、燃料の半分しか燃えないという話ではありません。投入した燃料のエネルギーのうち、動力として利用できる割合を表した数値です。Mercedes-AMG F1の技術説明に公表内容があります。

この数字を、すべてのメーカーが、どの回転数や負荷でも達成している値として扱うことはできません。エンジン単体とPU全体でも比較の範囲が変わります。動力にならなかったエネルギーの行き先は、エンジンの熱効率とエネルギー損失で確認できます。

ボルトくん

熱効率50%なら、残りの燃料は燃えずに出ていくの?

ハグルマ先生

燃料の量ではなく、エネルギーの割合です。燃えて生まれたエネルギーのうち、動力として取り出せた分を表しています。

高回転でもトルクを保てる設計にする

軸の出力は、トルクと回転数の積に比例します。同じトルクを高い回転数まで保てれば、短い時間により多くの仕事ができます。F1ではそのために、動く部品の強度と軽量化、潤滑、バルブの作動、燃焼の制御を高回転に合わせて設計しています。

もっとも、回転数を上げるだけで出力が増え続けるわけではありません。燃料供給の制約、摩擦、吸排気の能力などによって、使いやすい回転域は変わります。規則が許す最高回転数と、実際に最大出力を得る回転数は区別して考える必要があります。

ボルトくん

回転数の上限まで回せば、一番速くなるんじゃないの?

ハグルマ先生

上限が、そのまま最大出力の出る回転数とは限りません。高回転でどれだけトルクを保てるかや、燃料供給の制限も関わります。

2025年までのPUは、MGU-KとMGU-Hを使う

Ferrari Tipo 065/6のエンジンと、Mercedes-AMG W10のMGU-Kなどを並べた展示。別メーカー・別仕様の部品で、一台のPUの接続を示す写真として使っていません。
エンジンと電動部品の歴史展示
Ferrari Tipo 065/6のエンジンと、Mercedes-AMG W10のMGU-Kなどを並べた展示。別メーカー・別仕様の部品で、一台のPUの接続を示す写真として使っていません。Ferrari Tipo 065-6 Engine and Mercedes AMG F1 W10 EQ Power+ MGU-K at Formula 1 Exhibition, London.jpg — Hullian111 / 出典 / CC BY-SA 4.0。

2014〜2025年のハイブリッド世代では、役割の異なる2種類のモーター・ジェネレーターユニットを使っていました。

  • MGU-K:駆動系と結び付き、減速時などに回生し、加速時には電動アシストを行います。2025年規則では出力上限は120kWでした。
  • MGU-H:ターボの軸と結び付き、排気で回される軸から電力を回収したり、電動でターボの回転を助けたりします。

MGU-Hは、車輪を直接駆動するモーターではありません。回収したエネルギーやターボの制御を通じて、PU全体の性能に関わります。旧構成と変更点はF1公式の2026年PU解説でも確認できます。

ボルトくん

MGU-Hもタイヤを回していたの?

ハグルマ先生

ターボの軸につながる電動機です。そこで電力を回収したり、ターボの回転を助けたりして、PU全体の働きを支えていました。

2026年はMGU-Hを廃止し、電動側の役割を広げる

2026年も基本となる内燃エンジンは1.6Lの90度V6ターボですが、MGU-Hは廃止されました。電動側はMGU-Kの役割が大きくなり、参照した規則ではERS-Kの電気的な直流電力上限は350kWです。

この350kWを、いつでも車輪に加算できる機械出力とそのまま考えることはできません。電気から機械への変換があり、車速、走行区間、セッション、低グリップ条件などによる追加の制限も設けられています。

2026年の規則では幾何学的圧縮比の上限も16.0です。旧世代の説明で見かける18対1を2026年の規則値として読むと誤りになります。圧縮比は容積の比であり、高いほどピストンが遠くまで動くという意味でもありません。出典:FIA 2026技術規則・C5

ボルトくん

350kWが、いつでもそのままタイヤに足されるの?

ハグルマ先生

規則にあるのは電気的な直流電力の上限です。機械出力に変える過程があり、車速や走行条件による追加の制限も受けます。

ボルトくん

前に見た圧縮比18対1という説明も、そのまま使えないんだね。

ハグルマ先生

参照した2026年規則では、幾何学的圧縮比の上限は16.0です。出力だけでなく、規則の数値も対象年を確認してください。

回収した電力を、どこで使うかが走りを変える

2019年Mercedes-AMG M10のERSバッテリー展示。蓄電装置の実物例で、2026年規則の容量や形を示す写真ではありません。
旧世代ERSバッテリーの実物
2019年Mercedes-AMG M10のERSバッテリー展示。蓄電装置の実物例で、2026年規則の容量や形を示す写真ではありません。Mercedes-AMG F1 M10 ERS Battery at Formula 1 Exhibition, London.jpg — Hullian111 / 出典 / CC BY-SA 4.0。

電動アシストには、バッテリーに蓄えたエネルギーを使います。モーターが大きな出力を出せても、その状態を無制限に続けることはできません。どこで回生し、どこで蓄えた電力を使うかによって、直線での加速や1周の走り方が変わります。

PUの性能を見るときは、瞬間的な最高出力に加えて、回生、蓄電、放電、熱管理まで追うと理解が進みます。出力の大きさと、その出力を必要な場所で使えることの両方が大切です。

ボルトくん

モーターが強力でも、ずっと全開にはできないんだね。

ハグルマ先生

使えるエネルギーには限りがあります。回生する場所とアシストに使う場所を組み合わせて、1周の走りを考えます。

kWは瞬間の出力、MJはエネルギーの量

kW(キロワット)は、1秒当たりどれくらいの仕事をするかです。MJ(メガジュール)は、使ったり蓄えたりしたエネルギーの量です。強い水流と、タンクから出した水の総量を分けるように読むと、二つの制限を混同せずに済みます。

単位の計算例として、350kWを10秒間続けると3.5MJです。これは仮定の掛け算で、F1でいつでも10秒間その出力を出せるという意味ではありません。電気と機械の変換や、車速ごとの制限も別に関わります。

参照した2026年技術規則Issue 20では、ERS-Kの直流電力上限が350kW、指定の計測位置での再充電は原則1周8.5MJ以内です。再充電の上限には競技・セッションなどの条件があります。8.5MJは、バッテリー全体の容量や一周に必ず使える電動アシスト量を表す値ではありません。

ボルトくん

1周8.5MJなら、バッテリーが8.5MJの大きさ?

ハグルマ先生

規則が制限しているのは、指定位置で計測する一周の再充電量です。装置の容量や、瞬間の出力とは分けて読みます。

よくある疑問

1.6Lなら、市販車の1.6Lと同じ力?

排気量はピストンが動く容積です。過給、空気と燃料の量、回転数、効率、電動機の組み合わせで出力は違います。

2026年もMGU-Hを使う?

2026年はMGU-Hを廃止しています。2014〜2025年の説明と分け、写真の対象年も確認します。

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参考資料

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ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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