エンジンの中では、ピストンという部品が行ったり来たりしています。ところが、その往復運動をやめて、おにぎりのような形の部品を回してしまったのがロータリーエンジンです。お米では走りませんが、ガソリンを燃やして車を走らせます。
なぜ、あの形が回ると力が生まれるのでしょうか。今回はロータリーエンジンの仕組みから、RX-7やRX-8に搭載された13B、発電を担当する8Cとの違いまで、やさしく解説します。
ローターの周りに三つの部屋ができ、広がったり縮んだりする

ロータリーエンジンの構造図です。ローターは、中心が円を描くように動きながら向きを変えます。歯車と軸の位置関係を見てください。Wankel engine diagram-gear-fixed.svg — Hskim000B / 出典 / CC BY-SA 4.0
ロータリーエンジンは、燃料を燃やした力を使う点では、一般的なガソリンエンジンと共通しています。ただし、筒の中を往復するピストンの代わりに、ローターという部品を使います。
ローターがケースの中を動くと、周りにできる空間が広がったり狭くなったりします。その空間へ空気と燃料を取り込み、押し縮め、燃やし、排気します。外形は違っても、燃やす前後の仕事は必要なんですね。
三つの角が外の内面に沿って動き、各面との間に三つの部屋ができます。動くと広がったり狭まったりするので、空気を入れ、押し縮め、燃やせます。
ローターの中心は、同じ場所に固定されていません。自身が回りながら、出力軸の中心の周りも回る、ずれた動きです。中の歯車と固定した歯車で、その動きを案内します。
出力を取り出す軸には、回転の中心からずれた部分があります。ローターはそこにはまり、燃焼で押される力をその部分へ伝えて軸を回します。この軸がエキセントリックシャフトです。
ボルトくん
三角の部品が、その場でぐるぐる回るの?
ハグルマ先生
中心も動きながら、ケースの内側に沿って回ります。ただの三角い羽根車を想像すると、動きを取り違えやすいところです。
一つの部屋が、吸気から排気までを受け持つ
最初は三つの部屋を全部同時に追わなくて大丈夫です。ローターの一つの面と、その外側のケースに挟まれた部屋へ注目してください。その部屋が、空気を入れる→狭くなる→燃やして広がる→ガスを出す、と進むのを見てみましょう。

吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気を示す図。同じローターの動きで複数の作動室が別の段階を受け持ちます。Wankel-cycle.svg — File:Wankel engine diagram-gear-fixed.svg: Hskim000B
derivative work: MikeRun / 出典 / CC BY-SA 4.0
- 吸気:作動室が吸気ポートとつながり、容積が増えることで空気などを取り込みます。燃料を加える場所とタイミングは、ポート噴射か直噴かなど、設計によって異なります。
- 圧縮:吸気ポートが閉じた後、作動室の容積が小さくなり、内部の混合気を圧縮します。
- 燃焼・膨張:スパークプラグで点火し、燃焼ガスの圧力がローターを動かします。その力がエキセントリックシャフトへ伝わり、出力になります。
- 排気:作動室が排気ポートとつながり、燃焼後のガスを排出します。
ローターの三つの面は、それぞれ別の部屋の壁になります。ある部屋が空気を吸う間に、別の部屋では燃やす、といった具合に、時期をずらして働きます。圧縮するときに専用の入口から空気を足すわけではありません。閉じた部屋が狭くなることで、中の気体を押し縮めます。
一般的な車用ロータリーは、ピストン式の吸気と排気のバルブを使いません。ローターの位置で穴を開閉します。穴を外周へ置くか、横の面へ置くかは機種で違います。
ボルトくん
バルブがなければ、空気の入口は何が閉じるの?
ハグルマ先生
ローターが動くと、部屋と穴のつながりが変わるんですよ。その位置関係で、入れたり出したりします。
動くシールで、ガスの漏れを抑える

Mazda 13Bのローターの実物例。三つの頂点と側面を見ます。8Cと同一寸法の部品という意味ではありません。Wankel rotors 001.jpg — Tennen-Gas / 出典 / CC BY-SA 3.0
部屋同士でガスが漏れると、圧力を力に使いきれません。角にアペックスシール、横にサイドシールなどを置き、動く間も漏れを抑えます。
シールは熱いガスに触れ、壁に沿って動きます。材料、表面、油、熱で形が変わることも考えます。主要な部品が少なければ、必ず壊れにくいとは限りません。
マツダの8C型の構造部品に関する技術論文も、軽くするほかに、シールとこすれる部分を長持ちさせる開発を説明しています。
ボルトくん
部品が少なければ、こすれも気にしなくていいの?
ハグルマ先生
シールと壁の接触は大事ですよ。漏れを抑えつつ動けるよう、材料、油、熱への対策を合わせています。
小型で滑らかにしやすい一方、燃焼には工夫が要る
往復するピストンや動弁機構を持たない
ピストンと棒の往復、カムでバルブを動かす装置がありません。出すパワーに対して小さくまとめやすく、車に置く自由度を得やすいのが特徴です。
往復する部品の振動がないのも利点です。ただ、音と揺れがゼロではありません。回る重さの偏り、燃える力、吸排気、車への付け方も関わります。
長い燃焼室で、熱を逃がしすぎず燃やす工夫が要る
部屋は薄く長い形になり、熱が壁へ逃げやすくなります。安定して燃やし、燃え残りを減らし、油で守ることと排気を両立する工夫が必要です。
世代と使い方でも違います。発電用8Cは、直噴、冷やしたEGR、部屋の形の変更などを使います。全部同じ燃費ではありません。資料はマツダ技報・8C型の燃焼技術です。
| 見る項目 | ロータリーで考えること |
|---|---|
| 基本の運動 | ローターが回り、燃焼室の容積が変わる |
| 燃焼室の形 | 混合気の燃え広がり方と表面から逃げる熱 |
| シール | 燃焼室同士を隔てる接触部の密閉と潤滑 |
ボルトくん
往復しなければ、振動はまったく出ないの?
ハグルマ先生
燃える力は変わりますし、回る重さと取り付け方でも揺れますよ。往復の揺れがないことと、完全な無振動は別です。
車輪を回すRX系と、発電するMX-30
RX-7とRX-8は、エンジンから変速機などへ力を渡してタイヤを回します。一方、2023年登場のMX-30のロータリー付きプラグインハイブリッドは、発電機を回します。
後者はシリーズ式で、タイヤはモーターが回します。エンジンの軸が直接タイヤを回すわけではありません。マツダは、小さな発電装置にしやすい特徴を採用理由としています。資料はMX-30 e-Skyactiv R-EV発表資料です。
ボルトくん
MX-30も、ロータリーの軸でタイヤを回すの?
ハグルマ先生
こちらは発電する役で、タイヤはモーターですよ。RX-7やRX-8とは、使う役割が違います。
点検は、搭載エンジンの指定に合わせる
整備はまず、指定の油、量の測り方、交換時期、冷却、点火を確認します。昔のRXの方法を、発電用にもそのまま使えるわけではありません。
かかりにくい、回転が乱れる、油が急に減るだけで、アペックスシールの故障とは決まりません。圧縮、点火、燃料を分け、ロータリーに合う測り方を知る工場で調べます。
基本から知るならエンジンオイルの役割とスパークプラグとイグニッションコイルも参考になります。
ボルトくん
かかりにくいなら、アペックスシールが壊れたの?
ハグルマ先生
点火や燃料も候補ですよ。症状だけで決めず、合う方法で点検してもらいましょう。
13Bと8Cは、用途だけでなく中身も違う
マツダ技報の欧州仕様の比較では、2008年型13Bの排気量の表示は654cc×2ローター、8Cは830cc×1ローターです。これは燃やす部屋の容積に基づく表示で、金属のローターそのものの体積ではありません。13Bはタイヤを回し、MX-30の8Cは発電に使います。
| 比較する点 | 13B・2008年型の例 | 8Cの例 |
|---|---|---|
| 排気量の表示 | 654cc×2 | 830cc×1 |
| 燃料を入れる場所 | 吸気ポート | 燃焼室内へ直接 |
| 冷却した排ガスの再循環 | 比較表では不採用 | Cooled EGRを採用 |
| 点火プラグ | ローター一つ当たり2本 | ローター一つ当たり1本 |
EGRは、排気を入口へ戻す仕組みです。8Cは冷やして使い、燃え方と熱の損失を改善します。旧13Bの燃料、点火、整備の指定をそのまま移せません。比較は、この技報の仕様の範囲です。
ボルトくん
発電用は、昔のローターを一つにしただけなの?
ハグルマ先生
大きさ、燃料の入れ方、EGR、点火も変わっていますよ。同じロータリーでも、目的に合わせて見直したエンジンです。
よくある疑問
ローターは三角形だから、三つのピストンと同じ?
三角という見た目だけでは、三つのピストンと同じとはいえません。部屋の大きさ、回転、燃える周期を分けて見ます。
MX-30のロータリーが車輪を直接回す?
e-Skyactiv R-EVのロータリーは発電用です。タイヤを回すのは、モーターです。
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