車のエンジンには、「エンジンオイル」という油が入っています。
ただし、入れておけば勝手に全部の部品へ行き渡るほど、話はうまくありません。そこで働くのが「オイルポンプ」。エンジンが主役顔でブンブン言っている裏で、せっせと油を送り届ける配達係です。こちらが仕事を放棄すると、主役もただでは済みません。
では、オイルはエンジンの中をどう巡り、部品を守っているのでしょうか? 今回は、その仕組みと、よく聞くけれど意外と分かりにくい「油圧」について、やさしく解説します。
オイルポンプは、部品を守る油を各部へ送る
エンジンオイルは、部品の間に薄い油の膜を作り、金属同士が直接こすれるのを減らします。表面が滑らかに見えても、そのまま高速でこすり合わせ続ければ、熱や摩耗の問題が出てしまいます。
ただ、油を下にためておくだけでは、離れた場所へ十分に届きません。そこで、オイルポンプが油を吸い込み、エンジン中の通り道へ送り出します。オイルとポンプは、守る材料と、それを届ける装置の組み合わせなんです。
オイルポンプは、必要な場所へ油を送る装置です。エンジンの下側や前側などに置き、クランクシャフトやチェーンで動かすものがあります。位置と動かし方は、エンジンによって違います。

Toyota Coasterの1HZエンジン用。内側と外側のローターを使う内接ローター式の例です。Oil Pump from Toyota Coaster Bus.JPG — Ll1324 / 出典 / CC0
ボルトくん
オイルを入れたら、勝手に全部へ行き渡るんじゃないの?
ハグルマ先生
必要な場所へ送り続ける仕組みが要ります。油が入っていることと、きちんと届いていることは別なんですよ。
オイルパンから吸い上げ、通路を通し、戻して使う
よくあるエンジンでは、下側の「オイルパン」という容器へオイルをためています。この作りがウェットサンプ式です。ポンプは、そこからストレーナーという網を通してオイルを吸い上げます。まず大きな異物を止めてから、エンジンの各部へ送り出すわけですね。
油はフィルターを通り、部品の中に作った油の道へ進みます。クランクシャフトの軸受(回転する軸を支える部分)、コンロッドの軸受、ヘッドのカムなどへ分けます。油を冷やす装置や、ピストンの裏へ油を噴くノズルが付くものもあります。

Toyota 7M-GTEのオイルポンプ。オイルパン内の油を取り込むための管と吸い込み口が付く例です。7M-GTE oil pump.jpg — Neodarkshadow / 出典 / CC BY-SA 3.0
仕事をした油は、重力などで下へ戻ります。全部の場所へポンプで直接送るわけではなく、飛び散る油を使うところもあります。「ドライサンプ式」は、回収用のポンプと外のタンクを使うなど、道が違います。
ボルトくん
一度使った油は、排気と一緒に捨てちゃうの?
ハグルマ先生
多くは戻って、繰り返し使いますよ。燃えて減る分や、劣化、漏れは別に管理します。燃料みたいに、一回で使い切るものではありません。
回転する歯車やローターで、油を取り込んで運ぶ
歯車式やローター式は、回転でできる空間へ油を取り、出口へ運びます。入口側で広がり、出口側で狭くなる空間を使います。風で油を吹き送るわけではありません。

二つの歯車の外側とケースの間で液体を運ぶ仕組み。これは外接歯車式で、先ほどの1HZの内接ローター式と同じ配置を示す図ではありません。Gear pump animation.gif — Jahobr / 出典 / CC0
実際に送る量は、回転数、油の粘り、中の隙間で変わります。可変容量ポンプは、一回転で送る量を必要に合わせて変え、送りすぎるむだを減らします。
ポンプが回っていても、入口が油から離れたり、空気を吸ったりすれば、正しく送れません。油不足や、加速、車の傾きで油が偏ることも関わります。
ボルトくん
ポンプなら、空気を吸っても同じように送れるの?
ハグルマ先生
油を必要な量で送ることが前提ですよ。空気が混ざると、油の膜を作ったり、油圧で装置を動かしたりするために、正しく届けられなくなることがあります。
油圧は、油の流れと通りにくさで変わる
油圧は、油を送る流れに対して、道や軸受に抵抗があることで生まれます。冷たい油は流れにくく、圧力が上がりやすいです。暖まって粘りが減ると、圧力も変わります。
圧力が高くなりすぎたときに、油を別の道へ逃がす弁を「リリーフバルブ」といいます。一方、フィルターを通りにくくなり、その前後の圧力差が大きいときに開くのが、フィルター側のバイパスバルブです。フィルターを通らない別の道へ油を回し、部品への供給が途切れるのを防ぎます。似た弁でも、見る圧力と守るものが違うんですね。
軸受の油膜は、油が届くことに加え、軸の回転、隙間、油の粘りで作られます。圧力が高いから、必要な場所へ十分届くとは限りません。詰まりの手前だけ圧力が高い、という場合もあります。
ボルトくん
粘い油で油圧が上がったら、部品もよく守れるの?
ハグルマ先生
圧力だけでは分からないんですよ。冷えたときの流れ、部品の隙間、品質の規格も合わせます。指定に合ったオイルを使いましょう。
油量と油圧の警告は、同じ意味ではない
油量は、たまっている量。油圧は、送る側の圧力です。量が正しくても、ポンプ、入口、軸受、制御で圧力が下がることがあります。油圧の警告だけでは、何L足りないかは分かりません。
走行中に油圧の警告が出たら、安全な場所に車を止め、エンジンも止めてください。その後の点検や連絡は、取扱説明書の指示に従います。圧力が足りないまま回すと、短い時間でも大きく傷むことがあります。足して警告が消えても、漏れや減った原因は確認します。
オイルは粘りだけでなく、品質規格とメーカーの適合も大事です。交換周期は、使い方と整備計画で確認します。入れすぎも泡立ちなどの原因になるので、多いほど安心ではありません。
ボルトくん
油の量が合ってれば、油圧の警告は気にしなくていいの?
ハグルマ先生
量と圧力は別なので、無視できませんよ。きちんと油が届いているか分かるまで、回し続けないことが大切です。
よくある疑問
オイルはエンジンを冷やす?
オイルも、部品の熱を受け取って運びます。水冷エンジンでも、油が冷却を受け持つ場所があります。
オイルパンは燃料タンク?
オイルパンは、潤滑に使う油をためる部分です。ガソリンは、別のタンクと管で送ります。
ポンプを大きくすれば安心?
ポンプの大きさだけでは決まりません。必要な量、圧力、吸い込める量、回す負担を、全体で合わせる必要があります。




