本文へ移動
メカニズモ
メニュー

クランクシャフトとは?部品名・ストローク・重りと油膜の仕組み

クランクピンとカウンターウェイトが見えるクランクシャフト
クランクピンとカウンターウェイトが見えるクランクシャフト。Crankshaft.jpg — Alex Kovach / 出典 / CC BY 2.0。

このヘンテコな棒をクランクシャフトといいます。殺傷能力が高そうな見た目のこの棒ですが、車を動かすうえでメチャメチャ大事な役割を果たします。早速見ていきましょう!

スポンサーリンク

クランクシャフトは、ピストンの往復を回転につなぐ軸

一直線に並ぶ主軸部に対し、コンロッドがつながるクランクピンは回転中心からずれています。張り出しはウェブやカウンターウェイトなどで構成されます。
クランクシャフトの実物
一直線に並ぶ主軸部に対し、コンロッドがつながるクランクピンは回転中心からずれています。張り出しはウェブやカウンターウェイトなどで構成されます。Crankshaft.jpg — Alex Kovach / 出典 / CC BY 2.0

エンジンでは、燃えたガスがピストンを押します。そのピストンからコンロッドという棒が伸び、クランクシャフトにつながっています。このつなぎ目が、軸の回転の中心からずれた場所にあるのがポイントです。

自転車のペダルも、軸の中心から離れた場所を踏むから回りますよね。エンジンでは、足の代わりにピストンが押しています。まっすぐな棒に見えないのは、このずれたつなぎ目や、回転を支える部分を持っているからなんです。

エンジンのどこにある?

BMC製エンジンの断面展示。ピストンとコンロッドの下側に、回転するクランクシャフトがあります。直列エンジンの配置例です。
クランクシャフトの位置を実物の断面で見る
BMC製エンジンの断面展示。ピストンとコンロッドの下側に、回転するクランクシャフトがあります。直列エンジンの配置例です。bmc-cutaway — Victuallers; derivative background removal by Auge=mit and Scriptadd / 出典 / CC BY-SA 3.0

直列エンジンの図では、ピストンと棒の下に描かれます。ただし筒の向きで位置関係は変わり、水平対向なら左右の気筒の間を通るように置かれます。

軸の本体は、ブロック側の軸受(回転する軸を支える部分)に支えられ、普通は外から全体を見られません。外で見えるプーリーやフライホイールは、軸につながった部品です。その円盤が軸の全体、というわけではありません。

ボルトくん

棒をまっすぐにしたら、作るのは楽そうなのに!

ハグルマ先生

それだと、ピストンから押された力を、狙いどおり回転へつなげられません。あの形にも仕事があるんですよ。

スポンサーリンク

中心がずれた部分に、コンロッドがつながる

主軸・クランクピン・ウェブ・重り

部位 どんな部分?
メインジャーナル(主軸の軸受面) ブロックの軸受に支えられる部分。軸の回転中心にある
クランクピン コンロッドがつながる部分。回転中心からずれている
クランクウェブ 主軸とクランクピンをつなぐ部分
カウンターウェイト 回転時の力の偏りなどを調整する重り

写真の軸を見ると、太い部分も、ずれた部分も、重そうな出っ張りもありますよね。全部が同じ仕事をしているわけではありません。軸を支える部品に接する、円筒形の表面を「ジャーナル」と呼びます。どこで支え、どこへ力を加えるのかを分けると、あの妙な形にも理由が見えてきます。

中心からずれた位置へ力をかけると、軸が回る

棒が押すのは回転の中心ではなく、ずれた位置のクランクピンです。ドアも、蝶番の近くより取っ手を押す方が開けやすいですよね。中心から離れた場所へ力をかけることで、回す力になります。

ただし、回す力はいつも同じではありません。クランクがどの角度まで回ったか、棒の傾き、ガスの圧力で変わります。ピストンが一番上の近くでは、圧力が高くても、回す方向には効きにくい瞬間があります。

ボルトくん

強く押せば、いつでも強く回せるんじゃないの?

ハグルマ先生

押す場所と向きも関係するんですよ。ドアも、取っ手をどちらへ押すかで開きやすさが違いますね。ガスの圧力だけでは、その瞬間の回す力は決まりません。

クランク半径と、ストロークの関係

機構図。0:固定された本体、1:ピストン、2:コンロッド、3:クランクシャフト。数字は図の凡例で、部品の数を示すものではありません。
往復と回転をつなぐ構造
機構図。0:固定された本体、1:ピストン、2:コンロッド、3:クランクシャフト。数字は図の凡例で、部品の数を示すものではありません。Piston bielle vilebrequin coupe et schema cinematique.svg — Zephyris; derivative work Cdang / 出典 / CC BY-SA 3.0

軸の中心から、クランクピンの中心までの距離が「クランク半径」です。ピストンが一番上から一番下まで動く、片道の距離が「ストローク」です。

筒の中心線と軸の中心がそろった基本の仕組みでは、ストロークはクランク半径の2倍です。ピンが中心の片側から反対側へ動く分だけ、ピストンも動きます。

この式は、中心がそろった基本の例です。筒の中心を軸の中心からずらす設計などには、条件なしで当てはめられません。実際の寸法は、メーカーの仕様で確認します。

ボルトくん

コンロッドを長くしたら、動く距離も増えるんじゃないの?

ハグルマ先生

基本の仕組みでは、片道の距離はクランク半径の2倍ですよ。棒の長さは、ピストンの高さや途中の動き方に関わります。別の寸法なんです。

例えば、この基本の仕組みでストロークが86mmなら、クランク半径は43mmです。コンロッドを86mmにする、という意味ではありません。半径、ピストンの移動距離、棒の長さを分けると、仕様表も読みやすくなります。

重りを付けても、すべての振動は消えない

曲がったように見える軸の中に、主軸部、ずれたクランクピン、つなぐウェブと重りが配置されています。部位ごとに役割が違います。
クランク軸の形と重り
曲がったように見える軸の中に、主軸部、ずれたクランクピン、つなぐウェブと重りが配置されています。部位ごとに役割が違います。Crankshaft of an engine.jpg — Seedlesslime / 出典 / CC BY-SA 4.0

回る部品の重さが偏ると、回転したときに働く力も偏ります。カウンターウェイトは、その力や軸受への負担を調整する重りです。いくつ、どれくらい付けるかは、気筒の並びと軸全体の設計で変わります。

ピストンが往復するときの揺れと、軸がねじれて戻る揺れは別です。必要に応じて、往復する部品の特定の揺れを打ち消すための軸「バランスシャフト」や、クランクのねじれ戻りを和らげる「ねじり振動ダンパー」を組み合わせます。重りを付ければ全部解決、という話ではありません。

軸がねじれて戻る揺れを「ねじり振動」という

Jeep/AMCの2.5Lエンジンに付くメインプーリーとハーモニックバランサー。ねじり振動を抑える装置の装着例です。内部の構造や振動中の変形を示す写真ではありません。
クランク軸に付くプーリーとダンパーの例
Jeep/AMCの2.5Lエンジンに付くメインプーリーとハーモニックバランサー。ねじり振動を抑える装置の装着例です。内部の構造や振動中の変形を示す写真ではありません。Jeep 2.5 liter 4-cylinder engine chromed p.jpg — Christopher Ziemnowicz (CZmarlin) / 出典 / Public domain

燃える力は、軸へずっと同じ強さでかかりません。力を受けてわずかにねじれ、また戻る。その回転方向の揺れを「ねじり振動」と呼びます。

この揺れを和らげるのが、ねじり振動ダンパーです。Vibracousticは、軸や周りの部品の負担、補機を回すベルトへの影響も説明しています。外して軽くすれば性能アップ、と簡単にはいえません。[2]

ボルトくん

バランスシャフトがあれば、ダンパーはいらないの?

ハグルマ先生

受け持つ揺れが違うんですよ。バランスシャフトは特定の往復の揺れなど、ダンパーは軸のねじれ戻りを抑えます。一つで全部消せるわけではないんです。

軸受では、薄い油の膜が力を受け止める

人とくるまのテクノロジー展2007で展示されたクランクシャフト用の軸受。主軸受とコンロッド軸受は、使う場所や寸法が異なります。
エンジンの滑り軸受の実物
人とくるまのテクノロジー展2007で展示されたクランクシャフト用の軸受。主軸受とコンロッド軸受は、使う場所や寸法が異なります。Bearings for crankshaft journal.jpg — 160SX (talk) / 出典 / CC BY-SA 3.0

軸の主軸部分を支えるのが、主軸受です。一般的な滑り軸受では、間の薄い油の膜が力を受け、金属同士のこすれを減らします。整備でいう「メタル」は、この薄い軸受のことです。

回転する軸は、軸受とのわずかな隙間へ油を引き込みます。その油が押し返す圧力を作り、軸にかかる力を支えます。ポンプの油圧(オイルの圧力)だけで軸を持ち上げているわけではありません。その一方、ポンプから油をきちんと届け続けることも欠かせません。[5]

隙間、油の粘り、表面の状態が合わなければ、油で部品を守れません。始動や停止の前後も状態が変わります。軸受を交換したり軸を磨いたりするときは、指定の寸法と修理方法を確認します。

ボルトくん

オイルが入ってれば、軸受はいつでも大丈夫なの?

ハグルマ先生

油の量だけでは決まらないんですよ。きちんと届くこと、隙間や粘り、表面が合うことも必要です。始動や停止のときは、油膜の状態も変わります。

鋳造と鍛造は、目的に合わせて使い分ける

Ennepetal産業博物館のVW・Audi用クランクシャフト展示。鍛造後に余分な部分を除いた段階の例で、軸受面の最終仕上げ品とは区別します。
鍛造後のクランクシャフトの展示
Ennepetal産業博物館のVW・Audi用クランクシャフト展示。鍛造後に余分な部分を除いた段階の例で、軸受面の最終仕上げ品とは区別します。Ennepetal Industrial Museum VW-AUDI crankshaft.jpg — Arnoldius / 出典 / CC BY-SA 4.0

クランクシャフトには、溶かした金属を型に入れる鋳造や、強い力で形を作る鍛造などがあります。材料と作り方に加え、形、表面の処理、軸受が当たる面の仕上げまで考え、必要な強さと寿命を確保します。[1]

量産車では、受ける力だけでなく、重さ、費用、加工のしやすさも大事です。「鍛造だから、ほかのエンジンの鋳造品より上」と、作り方の名前だけでは比べられません。

ボルトくん

鍛造なら、どこまでも高回転にしていいの?

ハグルマ先生

作り方の名前だけでは、使える回転数は分からないんですよ。材料、形、表面、支え方、油の働きまで含めた設計で決まります。

異音がしても、クランクシャフトの故障とは限らない

軸や軸受は、油不足や大きすぎる負荷などで傷むことがあります。ただし、金属音や振動は、周りの補機やフライホイールなどからも出ます。音だけで軸を交換しよう、と決めるのは早いです。

油圧の警告や急な異音が出たら、運転を続けずに点検を頼んでください。軸受だけでなく、軸の寸法、曲がり、油の通り道も調べます。傷んだ部品と、その原因の両方を見る必要があります。

ボルトくん

軸受だけ新品にしたら、変な音も直るの?

ハグルマ先生

そもそも別の部品の音かもしれませんよ。軸受が傷んでいても、軸の寸法や曲がり、油の道に原因が残っていると、また傷みます。原因まで調べて直すことが大切です。

よくある疑問

クランクシャフトとカムシャフトは同じもの?

別の軸です。クランクシャフトはピストンの往復を回転につなぎ、カムシャフトは主にバルブを動かします。普通の4ストロークでは、クランクが2回転する間にカムが1回転します。

すべてのエンジンに一本だけ付いている?

一般的な乗用車のピストンエンジンでは一本ですが、特殊な構成もあります。ロータリーの出力軸も、ここで説明した形とは違います。

軸を軽くすれば、最高出力が増える?

軽さは、回転の変わり方や負担に関わります。ただし、それだけで燃料から取り出すパワーが増えるわけではありません。強さや振動、軸受、周りの部品との組み合わせも必要です。

関連記事

変速機

ピストン/コンロッド/フライホイール/カムシャフトとバルブ

参考資料

  1. BF:Products in focus。クランクシャフトの構成・負荷・製法。
  2. Vibracoustic:Torsional Vibration Dampers。ねじり振動とダンパーの仕事。
  3. MAHLE:エンジン部品。主軸受、コンロッド軸受の用途。
  4. NASA:Engine Parts。往復する部品と回転軸の基本。歴史的なエンジンの例であり、現代車の個別仕様を示すものではありません。
  5. MAHLE:Technical Information — Motorsport Engine Bearings。動圧油膜が負荷を支える仕組み。
スポンサーリンク
この記事を書いた人
ハグルマ先生のイラスト

ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

著者プロフィール・執筆記事一覧