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シリンダーブロックとは?内部の穴・冷却水・油路と材質の違い

シリンダーヘッドを外したPeugeot TU 1.1エンジン
シリンダーヘッドを外したPeugeot TU 1.1エンジン。PSA TU 1.1 engine block head removed.jpg — The RedBurn / 出典 / CC BY-SA 4.0。

エンジンを分解すると現れる、穴だらけの金属の本体。これがシリンダーブロックです。ただの重い塊にしては、ずいぶん込み入った形をしています。その穴にも、ちゃんと仕事があるんです。

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シリンダーブロックは、動く部品を支えるエンジンの本体

シリンダーブロックは、エンジンの土台になる大きな部品です。中には、ピストンが往復する筒状の部分があります。この筒がシリンダーで、燃料を燃やす仕事は、その内側で行われます。

多くの乗用車用エンジンでは、下側で回転する軸も支えています。動く部品の位置がずれないように受け止めながら、冷却水やオイルの通り道も用意する。見た目どおり、なかなか責任の重い本体なんですね。

家なら、壁と土台をまとめたような役ですね。

東京オートサロン2006で展示されたSUBARU EJ20 WRC用エンジン。水平対向の気筒内にピストンを組み付ける場面です。
エンジンへピストンを組み付ける実物
東京オートサロン2006で展示されたSUBARU EJ20 WRC用エンジン。水平対向の気筒内にピストンを組み付ける場面です。SUBARU EJ20 WRC installing piston-pin.jpg — 160SX (talk) / 出典 / CC BY 3.0

上のヘッド、下のオイルパンと組み合わさる

BMC製エンジンの断面展示。中央にはピストンが並び、上側のヘッドと下側のクランク軸まわりにつながっています。
上下の部品を、実物の断面展示で見る
BMC製エンジンの断面展示。中央にはピストンが並び、上側のヘッドと下側のクランク軸まわりにつながっています。bmc-cutaway — Victuallers; derivative background removal by Auge=mit and Scriptadd / 出典 / CC BY-SA 3.0

一般的には、上にシリンダーヘッド、下にオイルパンを組み合わせます。ヘッドは燃料が燃える部屋や空気の出入口を受け持ち、オイルパンは戻ったオイルを受けます。水平対向など、筒が横向きのエンジンでは、部品の向きや分け方が変わります。

ボンネットを開けて見えるプラスチックのカバーや、一番上のヘッドカバーは、ブロックではありません。外から見えるふたと、中の部品を支える本体は別です。

ボルトくん

穴がいっぱいあるけど、弱くならないの?

ハグルマ先生

必要な場所には厚みや補強を持たせています。穴の中を水やオイルが通るので、全部埋めればよいわけでもないんです。

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中には、ピストン・冷却水・オイルのための場所がある

シリンダーボア:ピストンが往復する穴

Rover K18の実物。気筒の穴とその周囲が見える状態です。すべてのアルミブロックが同じ構造ではありません。
ヘッドを外したブロック
Rover K18の実物。気筒の穴とその周囲が見える状態です。すべてのアルミブロックが同じ構造ではありません。rover-k18-block — Nibi / 出典 / Public domain

ピストンが入る筒状の穴や、その内側の直径を「ボア」といいます。穴なら開いていればよさそうですが、ここはピストンが猛烈な速さで往復する場所です。ピストンの周りには、筒の壁に沿って動いてガス漏れを抑える、細い金属の輪があります。これがリングです。丸さが崩れたり、表面が傷んだりすると、リングや油の膜がうまく働かず、こすれやガス漏れにつながります。穴一つにも、なかなか面倒な注文が付くんですね。

アルミの本体に、鋳鉄などで作った筒を入れるエンジンもあります。この筒がシリンダーライナーです。別の筒を入れず、穴の表面を加工するものもあります。本体の材質と、ピストンが動く面の材質が、同じとは限りません。

ウォータージャケット:冷却水の通り道

図のWがウォータージャケットです。シリンダーやヘッドの周囲にある緑色の部分が、冷却水を通す空間を示します。実車の流路形状はエンジンによって異なります。
Wが、冷却水の通り道
図のWがウォータージャケットです。シリンダーやヘッドの周囲にある緑色の部分が、冷却水を通す空間を示します。実車の流路形状はエンジンによって異なります。Four stroke engine diagram.jpg — User:Wapcaplet / 出典 / CC BY-SA 3.0

ウォータージャケットは、筒の周りなどに作った冷却水の通り道です。熱くなったところから熱を受け取り、冷却の装置へ運びます。「ジャケット」でも着せて暖めるのではなく、エンジンの温度を整えるための場所です。

水を大量に流せばOK、というほど単純ではありません。場所による温度の差、熱の逃げ方、水の通りやすさを考えて作ります。また、冷却水の道と、部品を守るオイルの道は別になっています。

クランクシャフトを支える部分と、オイルの通路

クランクシャフトを支えるのが軸受です。軸受を収める穴の場所や形がずれると、軸が安定して回れません。下側を一体の部品で支えるエンジンもあり、ブロック一つだけで全部を支えているわけではありません。

本体の中のオイルの道から、軸受などへ油を送ります。いくらブロックが頑丈でも、油が届かなければ動く部品を守れません。流れはオイルの循環で解説しています。

ボルトくん

アルミのブロックなら、ピストンもアルミの壁をこすってるの?

ハグルマ先生

別の筒を入れたり、表面に加工したりすることがあるんですよ。本体には軽さ、中の面にはすり減りにくさ、と必要な性質が違うからなんです。

米陸軍の教材にあるオイルの流れです。OIL PUMPはポンプ、OIL PASSAGEは通り道、MAIN BEARINGはクランクを支える主軸受。油は主軸受からクランクの中を通って、コンロッド側へ届きます。実車の流れや、ろ過・戻り方はエンジンごとに違います。
クランクシャフトを支える部分と、オイルの通路
米陸軍の教材にあるオイルの流れです。OIL PUMPはポンプ、OIL PASSAGEは通り道、MAIN BEARINGはクランクを支える主軸受。油は主軸受からクランクの中を通って、コンロッド側へ届きます。実車の流れや、ろ過・戻り方はエンジンごとに違います。TM 9-8000 Figure 8-16 — Headquarters, Department of the Army, United States / 出典 / Public domain

アルミと鋳鉄は、何が違う?

材質 設計で生かす特徴 合わせて考えること
アルミニウム合金 軽さや熱の伝わりやすさ 熱膨張、支持剛性、ボア面の耐摩耗性
鋳鉄 剛性や耐摩耗性を生かしやすい 重量、鋳造・加工、熱の管理

「剛性」は、力を加えたときに変形しにくいこと。「強度」は、壊れにくさに関わる性質です。似て聞こえますが別の話なんですね。軽いアルミでも、厚さや補強、部品の固定方法を工夫して、必要な形を保てるようにします。[1]

鋳鉄は古い、アルミは新しい、と分けるだけでは分かりません。使い方、燃料が燃えたときの圧力、費用、加工のしやすさで選びます。今のディーゼルにも、アルミ製ブロックの例があります。[3]

ボルトくん

剛性が高いって、壊れにくいってことなの?

ハグルマ先生

剛性は「力を受けても形が変わりにくい」ということですよ。壊れにくさとは別です。材料だけでなく、厚みや補強の入れ方でも変わるんです。

穴の周囲をどう支えるかも変わる

上から見て、筒の周りの冷却水の空間が大きく開いているものを「オープンデッキ」、金属で多くつないで筒を支えるものを「クローズドデッキ」と呼びます。中間の形もあります。筒の上端を支える力、水の通り道、鋳造で作りやすいかのバランスです。名前だけで、どれくらいの過給(エンジンへ空気を押し込むこと)に耐えられるかまでは決まりません。

HondaヘリテージセンターのAccord用2.4L直列4気筒ブロック展示。気筒上端の周囲に、冷却水を通す空間が開いている様子が見えます。オープンデッキの形を実物で理解する例です。写真のブロックの年式や、許容する過給圧を画像だけで決めることはできません。
穴の周囲をどう支えるかも変わる
HondaヘリテージセンターのAccord用2.4L直列4気筒ブロック展示。気筒上端の周囲に、冷却水を通す空間が開いている様子が見えます。オープンデッキの形を実物で理解する例です。写真のブロックの年式や、許容する過給圧を画像だけで決めることはできません。Honda Heritage Museum (Marysville, Ohio) – Accord 2.4L inline 4-cyl aluminum engine block.jpg — Nheyob / 出典 / CC BY-SA 4.0

ライナーを使わない設計もある

内部でピストンが往復する筒状部品。写真だけでは乾式・湿式や適合エンジンを確定しないため、方式の断定には使いません。
シリンダーライナーの実物
内部でピストンが往復する筒状部品。写真だけでは乾式・湿式や適合エンジンを確定しないため、方式の断定には使いません。Zylinderbuchse.jpg — Stahlkocher / 出典 / CC BY-SA 3.0

日産のミラーボアコーティングは、厚い鋳鉄の筒を入れる代わりに、穴の内側へ鉄の薄い膜を作る技術です。別の筒を組み込む方法と、表面の薄い層に働いてもらう方法では、構造が違います。[2]

ただし、ライナーを使わないエンジンが全部同じ表面ではありません。材質や加工の方法が違えば、修理できる範囲も変わります。穴を削って広げたり、内面を整えたりする作業を、どれにも同じようにはできません。

ボルトくん

ライナーがなかったら、内側には何もしてないの?

ハグルマ先生

厚い筒の代わりに、表面の薄い層を使う方法もあるんですよ。ミラーボアコーティングがその例です。ライナーがないというだけでは、材料や直し方は分からないんです。

修理では、穴の形と表面をきちんと測る

冷却水が減る、オイルを多く消費する、圧縮が弱くなる。こうした症状はブロックや筒の内面が原因でも起きます。ただ、ホース、ヘッドガスケット、バルブなども候補です。症状だけで「本体にひびだ!」と決めるのは早いです。

分解して直すときは、穴がどれくらい丸いか、すり減っているか、部品を合わせる面が平らかなどを測ります。削れる範囲やライナーの交換方法も、エンジンごとに違います。大きな新品部品を買えば終わり、という作業ではありません。

ボルトくん

内側に傷があったら、削ってつるつるにすれば使えるの?

ハグルマ先生

傷のほかに、穴の大きさ、丸さ、表面の加工も調べる必要がありますよ。削ってよい範囲や、その後に使う部品はエンジンによって違うんです。

よくある疑問

ブロックとヘッドは、一つの部品なの?

一般的な乗用車では別の部品です。間にヘッドガスケットを挟み、ボルトなどでつなぎます。詳しくはシリンダーヘッドをご覧ください。

ライナーは、全部交換できるの?

全部が交換できるわけではありません。筒の組み込み方、修理用の部品があるか、メーカーの指定で変わります。乾式・湿式ライナーで違いを解説しています。

参考資料

  1. Motorservice:Reconditioning of Aluminium Engine Blocks。材質、ボア面、修理条件。
  2. 日産:ミラーボアコーティング。ライナーを薄膜へ置き換える例。
  3. Toyota:Avensis 2.2L D-4D(2005年)の公式発表。アルミ製ディーゼルエンジンブロックの実例。
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この記事を書いた人
ハグルマ先生のイラスト

ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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