インバーターは、バッテリーの電気を、モーターが使える形に変えて送る装置です。「電池とモーターを線でつなげば走るんじゃないの?」と思いますが、車はそんなに雑な配線で納得してくれません。
ゆっくり発進したいときもあれば、強く加速したいときもあります。その違いを電気の流し方で作るのが、インバーターの大事な仕事。まずは、電気に2つの流れ方があるところから見てみましょう。
アイキャッチ:プリウスのインバーターを含む電動駆動装置。電池とモーターの間で電力を扱う。
KaiBorgeest / 出典 / CC BY-SA 4.0(一部加工)
電池の「直流」を、モーター用の「交流」に変える

Tom Raftery / 出典 / CC BY-SA 2.0(一部加工)
バッテリーから取り出す電気は、基本的に一方向へ流れる「直流」です。一方、ハイブリッド車やEVの走行用モーターで広く使われるのは、流れる向きが繰り返し変わる「交流」です。同じ電気でも、そのまま渡せばよいわけではありません。[1]

Maxmath12 / 出典 / CC0 1.0(一部加工)
図では、赤い線が直流、青い線が交流です。横方向は時間の経過、黒い横線は電流がゼロの位置を示します。青い線はその上と下を行き来していますね。これは、電流の向きが繰り返し逆になることを表しています。電線そのものが波打つ、という意味ではありません。
インバーターは、この直流を交流へ変える装置です。車を動かす大きな電力を扱い、モーターのコイルへ必要な電流を流します。コイルは電線を巻いた部品で、電流を流すと磁石の力を作ります。磁力を順番に変えることで回転を生む仕組みは、モーターの記事で詳しく紹介しています。
身近な乾電池で小さなモーターが回ることを思い出すと、ややこしく感じるかもしれません。モーターにはいろいろな方式があり、玩具でよく使うものと車の走行用では、電気の切り替え方も制御の規模も違うんです。ここでは、交流で動かす代表的な車の仕組みを説明しています。
高速でスイッチを切り替え、力の出し方を調節する

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インバーターの中には、半導体を使ったスイッチがあります。半導体とは、電気を通す・通さないを制御できる材料を使った部品のこと。機械式のスイッチを指で連打する代わりに、電子部品で非常に速く切り替えます。[2]
複数のスイッチを組み合わせ、モーターのコイルへ電圧をかける向きや時間を変えると、必要な電流の流れを作れます。車でよく使われる「三相交流」は、変化のタイミングをずらした3組の交流です。これで、モーターの中の磁力をなめらかに回していきます。
アクセルを踏んだ量などから車が必要な力を決め、ローターの位置や電流の状態を見ながら調節します。弱く流せばいつも低速、強く流せばいつも高速、という単純な話ではありません。回転の速さと、どれだけ強く回すかというトルクを、状況に合わせて扱っています。
回生ブレーキでは、電池へ戻せる電気に整える

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減速するときには、車輪側からモーターが回され、発電に使われます。そのときモーター側で生まれるのは交流です。しかし、バッテリーへ戻すには、充電できる直流に整える必要があります。[1]
そこで、走行用のインバーター回路が、今度は交流を直流へ変える側でも働きます。加速するときとは、エネルギーが通る向きが逆です。これにより、回生ブレーキで回収したエネルギーを、次の走行に使える形で蓄えられます。
ただし、インバーター自身が電気を増やしているわけではありません。切り替えの途中などで一部は熱になり、電池へ戻すときにも損失があります。「変換装置を往復すれば電気が増える」なら充電器もびっくりですが、現実には使ったエネルギーの一部を回収する仕組みです。
電圧を変える装置とは、役割を分けて考える

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名前が似た装置に「コンバーター」があります。車では、直流の電圧を高くしたり低くしたりする装置を、DC-DCコンバーターと呼びます。電圧は電気を流そうとする力の目安。流れる向きを切り替える話と、電圧の高さを変える話は分けると理解しやすくなります。[1]
例えば、高い電圧の駆動用バッテリーから、車内の電装品や12Vの補機バッテリー向けに電圧を下げる用途があります。車によっては、こうした装置とインバーターなどを一つにまとめた箱を「PCU(パワーコントロールユニット)」と呼びます。PCU全体とインバーターは、必ずしも同じ範囲を指しません。
大きな電力を扱うので、発生する熱を逃がす冷却も必要です。冷却液を使う仕組みなどで温度を管理し、部品を守ります。[1][2] エンジンルームにある箱の一つでも、内部には高い電圧がかかります。中を見たいからとカバーや高電圧配線を外す作業は、整備の専門家に任せましょう。




