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サスペンションの仕組みと種類|ばね・ダンパー・アームの役割

アームと車体内のばねが見えるDerondaの前輪サスペンション
アームと車体内のばねが見えるDerondaの前輪サスペンション。Deronda front suspension.jpg — JAC2008 / 出典 / Public domain。

車には、路面の凸凹による衝撃を和らげる「サスペンション」という仕組みがあります。これがなければ、ちょっとした段差を越えるたびに、お尻から道路の状態を詳しく報告されることになります。

ただし、仕事は乗り心地をよくするだけではありません。タイヤが路面をしっかり捉えるためにも重要です。今回は、ばね・ダンパー・アームの役割と、サスペンションの種類をやさしく解説します。

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ばねで支え、ダンパーで収め、アームで位置を決める

タイヤが段差を乗り越えると、車輪は車体に対して上下します。サスペンションは、上下には動けるようにしながら、前後左右へ勝手にずれないよう車輪を支える仕組みです。ばねだけでなく、アームやダンパーなども組み合わされています。

ばねは重さを支え、縮んだり伸びたりして衝撃を和らげます。ダンパーは、その動きに抵抗を与え、揺れが続くのを抑えます。車輪を動かせることと、好き放題に動かさないこと。その両方が必要なんですね。

ばね:重さを支え、路面からの入力を受け止める

Derondaの車体内にあるコイルオーバー。車輪の近くへ直接立てる構成だけでなく、リンクを介して配置する例もあります。
ばねとダンパーを組み合わせた実物
Derondaの車体内にあるコイルオーバー。車輪の近くへ直接立てる構成だけでなく、リンクを介して配置する例もあります。Deronda coilovers.jpg — JAC2008 / 出典 / Public domain

ばねは、力がかかると変形し、戻ろうとします。段差でタイヤが動いたとき、伸び縮みして受け止め、車体への衝撃を和らげます。

よく見るのはコイルばねです。ほかに板ばね、棒をねじるトーションバー、空気ばねもあります。乗り心地は硬さだけでなく、取り付ける場所と車の重さでも変わります。

ダンパー:繰り返す揺れを抑える

ばねだけでは、縮んで、伸びて、また縮んでと、揺れが続きます。それを収めるのがダンパー。ショックアブソーバーとも呼びます。

一般的な油圧式は、ピストンが動くと油が弁などを通り、その抵抗で動きを抑えます。これが減衰力です。揺れのエネルギーを熱へ変えています。KYBの構造解説も、この仕組みを説明しています。

ガス入りでも、ガスだけで揺れを抑えるとは限りません。油で抵抗を作り、ガスの部屋も組み合わせるものがあります。単筒、複筒は、主に中の筒の構造の名前です。

KYBの実物のストラット。外側を囲むコイルばねと、中央から下側へ続く筒状のダンパーが組み合わされています。ばねの働きと減衰力は別です。
ばねと筒状のダンパーを組み合わせたストラットの実物
KYBの実物のストラット。外側を囲むコイルばねと、中央から下側へ続く筒状のダンパーが組み合わされています。ばねの働きと減衰力は別です。KYB shock low.jpg — KYB Europe GmbH / 出典 / Public domain

アーム・リンク・ジョイント:車輪の位置と動きを決める

Alfettaの前輪構成。棒のねじれを使うトーションバーを備え、コイルばねだけが荷重を支えるわけではないこともわかります。
アームと接続部がわかる構成図
Alfettaの前輪構成。棒のねじれを使うトーションバーを備え、コイルばねだけが荷重を支えるわけではないこともわかります。Alfetta front suspension.jpg — Fooldriver24 / 出典 / CC BY-SA 3.0

アームとリンクは、タイヤと車体をつなぎます。前後と左右の力を受けつつ、必要な上下の動きは許します。長さと場所で、動く道筋と角度の変化を決めます。

つなぎ目には、ゴムのブッシュ(接続部で動きや振動に対応する部品)や、向きを変えられるボールジョイントがあります。ブッシュは振動を和らげるだけでなく、力がかかったときのタイヤの動きも変えます。硬いものなら何でもいい、とはいえません。

スタビライザー:左右の動きの差に抵抗する

Porscheの足まわりの実物。上下動を許す接続と、左右の差に抵抗する棒を組み合わせます。
リンクで接続されたスタビライザー
Porscheの足まわりの実物。上下動を許す接続と、左右の差に抵抗する棒を組み合わせます。Stabilisator (Porsche).jpg — Stahlkocher / 出典 / CC BY-SA 3.0

左右の動きが違うとき、棒がねじれて抵抗を作るのがスタビライザーです。カーブで外側へ傾くロールを抑えます。左右の車輪が別々に上下できる仕組みを、独立懸架といいます。それでも、この棒などでつながっていれば、左右の動きは影響し合います。

ボルトくん

柔らかいばねにしたら、全部快適になるの?

ハグルマ先生

揺れ方や車輪の位置も大切です。ばね、ダンパー、アームの組み合わせで考えるんですよ。

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段差を越えた後の揺れも、サスペンションが収める

  1. タイヤが路面の段差に乗り、タイヤ自体が変形するとともに車輪が上へ動きます。
  2. サスペンションのばねが変形し、車体へ伝わる入力を和らげます。
  3. アームやリンクが、車輪の移動する方向と角度を決めます。
  4. ダンパーが伸び縮みの動きに抵抗を与え、その後の余分な揺れを収めます。

ばねだけで車体を支えると、段差の後も、びよんびよんと揺れ続けやすくなります。そこでダンパーが、動くときの抵抗で揺れを収めます。また、上下に動ける距離にも限りがあります。余裕が足りず、端のバンプストップへ強く当たると、急な衝撃が来ることもあるんです。

ハンドルとブレーキの力も、タイヤが適切に地面へ触れてこそ伝わります。Hondaのサスペンション開発者による解説も、振動を吸収する働きと走行性能を結び付けています。

ボルトくん

サスペンションは、座って快適にするだけなの?

ハグルマ先生

タイヤを地面へ安定して触れさせる仕事もありますよ。曲がる、止まる力を伝えるためにも大切なんです。

ストラット式は、支柱で車輪の位置も決める

Fiat Pandaの実物。上から下へ伸びる支柱が車輪側の位置決めにも参加する構成です。
車輪を支えるストラットの取り付け
Fiat Pandaの実物。上から下へ伸びる支柱が車輪側の位置決めにも参加する構成です。” 13 – ITALY – Fiat Panda 2003 suspension shock absorbers – Automotive suspension technologies and disk brake.JPG — Pava / 出典 / CC BY-SA 3.0 it

ストラット式は、ダンパーを入れた支柱で、タイヤの位置も支えます。代表的なマクファーソン式は、上の取り付け点と下のアームなどを使います。部品と横の場所を抑えやすく、前輪によく使います。

ばねとダンパーが重なる見た目だけでは、ストラットとは決まりません。その支柱が、タイヤの位置を決める部品でもあるかがポイントです。

ボルトくん

ばねとダンパーが重なってたら、ストラットなの?

ハグルマ先生

その支柱でタイヤを支え、位置も決めているかを見ますよ。重なっているだけでは決まりません。

ダブルウィッシュボーンとマルチリンクは、アーム配置を生かす

上下のアームで支えるダブルウィッシュボーン

Derondaの前輪。リンク経由で車体内のばねを動かす構成で、見えるアームの位置を全車へ共通には当てはめません。
上下のアームを持つ実車例
Derondaの前輪。リンク経由で車体内のばねを動かす構成で、見えるアームの位置を全車へ共通には当てはめません。Deronda front suspension.jpg — JAC2008 / 出典 / Public domain

ダブルウィッシュボーンは、上下のアームで支える独立懸架です。長さと角度を選び、動いたときのタイヤの傾き、キャンバーなどを調整しやすいのが特徴です。

いつでもタイヤを垂直にするものではありません。ねらった角度の変化を作りやすい、ということです。場所が必要で、部品数と費用も考えます。

複数のリンクを使うマルチリンク

マルチリンクは、複数のリンクで位置と向きを決めます。前後の衝撃は和らげ、横の力は支えるなど、配置を工夫できます。

いろいろな構成があるので、本数だけで性質は決まりません。自由度は高いですが、部品とつなぎ目が増え、収める場所と整備も考える必要があります。

Toyota Supra A90の後輪マルチリンクの展示。左右の車輪支持部へ複数のリンクがつながり、中央には差動装置が収まっています。
複数のリンクと左右の車輪支持部を持つ後輪サスペンション
Toyota Supra A90の後輪マルチリンクの展示。左右の車輪支持部へ複数のリンクがつながり、中央には差動装置が収まっています。Toyota Supra A90 multi-link rear suspension.jpg — TTTNIS / 出典 / CC0

ボルトくん

ダブルウィッシュボーンは、いつでもタイヤを垂直にするの?

ハグルマ先生

ねらった角度の変化を作りやすい方式ですよ。アームの長さと向きを選びますが、常に垂直という意味ではありません。

車軸式は、左右の車輪を強い車軸でつなぐ

車軸式は、強い一本の車軸で左右をつなぎます。片方が動くと、反対の姿勢にも影響します。重い荷物を支える頑丈さなどを生かし、商用車や一部の4WDで使います。

コイルとリンクを使うもの、板ばねを使うものがあります。デフが車軸側にあると、それもタイヤと一緒に上下するので、重さが乗り味へ関わります。

ボルトくん

片方が段差へ乗ると、反対のタイヤも影響するの?

ハグルマ先生

強い車軸でつながるので、姿勢が影響しますよ。重さを支える頑丈さなどを使いたい場面で採用します。

トーションビーム式は、ビームのねじれを使う

トーションビームは、左右の後ろ向きのアームを、横のビームで結びます。そのビームがねじれるので、左右に違う動きを許せます。半独立式とも呼び、完全な独立とは分けます。

小さくまとめやすく、客室と荷室の場所を取りやすいです。Hondaのトーションビーム解説も、ビームのねじれとブッシュで動きを作る設計を紹介しています。簡単な構成なら性能も低い、というわけではありません。

ボルトくん

つながってるのに、別々に動けるの?

ハグルマ先生

間のビームがねじれて、差を許すんですよ。完全な独立とは違うので、半独立と呼ぶこともあります。

硬くすれば、どんな道でも安定するの?

硬いばねは、同じ力で縮む量を減らしますが、衝撃が車体へ伝わりやすくなります。ダンパーも強ければよいとは限りません。タイヤが道に沿って動けなくなると、乗り心地も接地も悪くなることがあります。

方式、ばね、ダンパーは手がかりです。実際にはタイヤ、ブッシュ、車体、重さ、動ける距離、設定まで合わせて性能が決まります。

以前より揺れる、音が出るなら、硬い部品へ替える前に点検しましょう。判断はサスペンションの修理・点検を考えるサイン、車高を変えるならローダウン後のアライメントと確認事項も重要です。

ボルトくん

揺れるなら、硬いばねに替えれば早いんじゃないの?

ハグルマ先生

まず、なぜ揺れるかを調べましょう。硬くしてタイヤが道についていけなくなると、接地も乗り心地も悪くなる場合がありますよ。

ばねの数字と、タイヤ側の硬さは同じではない

1mm縮めるのに必要な力が、ばね定数などです。ただ、タイヤ10mmの動きで、ばねも10mmとは限りません。アームやロッカーの、てこの比率があるからです。

次の計算は、取り付け方を詳しく比べたい人向けの補足です。まずは「同じばねでも、取り付ける位置やてこの働きで、タイヤ側の硬さは変わる」と分かれば大丈夫です。

タイヤに対してばねが0.7倍動く一定の関係なら、単純な模型で、車輪側の硬さは0.7²で0.49倍です。タイヤが1mm動いても、ばねは0.7mmしか動かず、ばねに生じる力が小さくなります。さらに、その力をタイヤ側へ伝えるときにも、てこの比率0.7がかかるので、0.7を二回掛けます。

実車は、上下する間に角度や比率が変わる場合もあります。刻印だけで別の車の硬さを比べず、位置、荷重(その部分へかかる力)、タイヤ、ブッシュも合わせます。

ボルトくん

同じ数字のばねなら、どの車も同じ硬さなの?

ハグルマ先生

タイヤとばねの動く割合が違えば、感じる硬さも違いますよ。数字と一緒に、取り付け方も必要です。

よくある疑問

コイルオーバーはストラットと同じ?

コイルオーバーは、ばねとダンパーが同じ軸にある作りです。ストラットは、その支柱でタイヤの位置も決める方式です。

独立懸架は左右の影響がない?

各輪が別に動けても、スタビライザーや車体を通じた影響はあります。左右が完全に無関係ではありません。

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参考資料

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この記事を書いた人
ハグルマ先生のイラスト

ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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