車のボディは、どのように重さや路面からの力を受け止めているのでしょうか。骨格のつくり方を比べてみます。
ボディ、フレーム、シャシーは何を指す?
ボディは、人が乗る空間や荷室を形づくる車体です。フレームは力を受け持つ骨格です。独立した車台を指すことも、車体の中にある骨格部材を指すこともあります。
シャシーという言葉の範囲も文脈によって異なります。ボディを除いた車台全体を指すことも、サスペンションやステアリング、ブレーキなど走行を支える部分を指すこともあります。モノコック車にも、走行を支えるシャシーの機能はあります。
ボルトくん
モノコックには、フレームもシャシーもないの?
ハグルマ先生
独立した車台がないだけで、車体の中には骨格があります。シャシーという言葉も、足まわりなど走行を支える部分を指す場合があります。
ラダーフレームは、はしご形の骨格にボディを載せる
ラダーは「はしご」の意味です。車の前後に伸びる左右のサイドメンバーを、横方向のクロスメンバーでつなぎます。その骨格にサスペンションやパワートレインなどを取り付け、上にボディを載せるのが代表的なつくりです。
ボディとフレームの間には、ゴムなどを使ったボディマウントを設ける車種があります。マウントは両者を固定しながら、振動の伝わり方や動きを調整します。スズキのジムニーも、フレームの補強だけでなく、マウントの方向別の硬さを使い分けています。
積載や悪路走行に対応しやすい理由

前後方向の骨格を横部材で結ぶ実車例。写真の形や荷重能力を、現行Jimnyなど別車種へ当てはめません。1973 Ford LTD Chassis (4838266476).jpg — Spanish Coches / 出典 / CC BY 2.0。
車体とは別のフレームを土台にできるため、大きな積載荷重や路面から繰り返し入る力に対応しやすく、荷台や上部ボディの仕様も展開しやすくなります。トラックや一部のクロスカントリー車で使われる理由の一つです。
ただし、悪路走破性はフレーム形式だけでは決まりません。最低地上高、タイヤ、サスペンションの動ける範囲、駆動方式なども関係します。駆動力の配分は4WDの種類と仕組み、タイヤを路面に追従させる働きはサスペンションの構成と役割で詳しく説明しています。
重量や床の高さとの兼ね合いがある
フレームとボディをそれぞれ成立させるため、同程度の用途を狙う一体構造と比べると重量や構造の高さが増えやすくなります。床の高さ、乗り降りのしやすさ、重心の位置にも関わるため、用途に合わせた設計が必要です。
ラダーフレームだからといって、ねじれやすさや乗り心地まで一律に決まるわけではありません。閉じた断面の採用、クロスメンバーの配置、溶接や材料の工夫で剛性を高められます。マウントによる振動の遮断が快適性に役立つ面もあります。
| 構造 | 荷重を主に受ける部分 | 比較する条件 |
|---|---|---|
| ラダーフレーム | 左右の縦材と横材からなる骨組み | フレーム、車体、取付部を含む質量と床位置 |
| モノコック系 | 床、柱、側面などを一体で働かせる車体 | 同じ大きさ・用途・積載条件での質量と構造 |
ボルトくん
ボディはフレームに、がっちり直付けしてあるの?
ハグルマ先生
ゴムなどを使ったマウントを挟む車種もあります。固定するだけでなく、振動の伝わり方やボディの動きも調整しています。
モノコックは、床や柱をつないで車体全体で支える
乗用車でモノコックと呼ばれる構造は、フロア、サイドシル、ピラー、ルーフ周辺などを一体の構造として働かせる方式です。各部材を溶接や接着などでつなぎ、加わった力を車体の広い範囲で受け止めます。
薄い外板だけで車を支えるわけではありません。実際には断面を持つ骨格や補強材が組み合わされており、殻だけで支える本来のモノコックと区別するため、セミモノコックやユニットボディと呼ばれることもあります。
空間と材料を効率よく使いやすい

Suzuki Alto GFのボディ構造展示。床、柱、屋根などがつながることを確認する例です。特定の板厚や溶接点数を写真から数えていません。Suzuki Alto (GF) hatchback, body in white (2010-10-16) 01.jpg — OSX / 出典 / Public domain。
客室を囲む部分と荷重を支える部分を兼用できるため、重量を抑えながら必要な剛性を確保しやすいのが特徴です。別体のフレームを床下に重ねない設計は、床を低くしたり、室内空間を確保したりするうえでも利点になります。
ただし、どのモノコック車もどのフレーム車より軽い、という意味ではありません。車体寸法、装備、衝突安全設計、バッテリーの搭載量などが違えば、完成車の重量は大きく変わります。
サブフレームが付いていてもモノコック

Tesla Model Sの車台展示。前輪の内側には、サスペンションや操舵系を支えるサブフレームがあります。独立した車台で車全体を支えるラダーフレームとは、範囲が異なります。Tesla Model S subframe front 01.jpg — Alison Cassidy / 出典 / CC BY-SA 3.0。
エンジンやサスペンションをまとめて支える別体の骨格を、サブフレームやサスペンションメンバーと呼びます。これをボディにボルトで固定するモノコック車も多くあります。
サブフレームには、部品をまとめて支えるほか、組み立てやすくしたり振動の伝わり方を調整したりする役割があります。車体全体を独立して支えるラダーフレームとは役割と範囲が異なります。各部の位置はモノコックボディの部材と役割で確認できます。
ボルトくん
エンジンの下にフレームが見えたら、モノコックじゃないの?
ハグルマ先生
それはサブフレームかもしれません。エンジンや足まわりをまとめて支える部品で、車体全体を支えるラダーフレームとは役割が違います。
変形しにくさと、衝突時の守り方を分けて考える

GR Corollaのボディシェル。客室を囲む構造が見えます。写真のどの部位が何kNでつぶれるかという未確認の表示は加えていません。The chasis of Toyota GR COROLLA RZ (GZEA14H-BHFRZ).jpg — Tokumeigakarinoaoshima / 出典 / CC BY-SA 4.0。
剛性は、力を加えたときの変形しにくさです。強度は、壊れたり永久的に変形したりするまで、どれほどの力に耐えられるかに関わる性質です。似た場面で使われますが、同じ意味ではありません。
衝突から乗員を守るには、車体のすべてを硬くするだけでは不十分です。前後の部分を計画的に変形させてエネルギーを吸収し、客室では生存空間を保つように設計します。一つの部材に力を集中させず、複数の経路へ分散させることも重要です。
この考え方は、モノコックでも別体フレームでも変わりません。構造名だけで安全性を判断せず、その車がどのように力を受け止める設計なのかを見る必要があります。
ボルトくん
全部を硬くしたほうが、ぶつかったときも安全なの?
ハグルマ先生
衝突では、つぶれてエネルギーを吸収する部分も必要です。客室の空間を守りながら、前後の部分などで力を受け止めるように設計します。
外板の傷と、骨格の損傷は別に確認する
ドア外板やバンパーカバーの傷だけで、車体骨格まで傷んでいるとは限りません。反対に、外からは小さな傷やへこみに見えても、内部の骨格や取付部に変形が及ぶ場合があります。
ラダーフレーム車でも、フレームやボディマウントが変形すれば走行や安全性に影響します。モノコック車でも、損傷部位に応じた正規の修理方法があります。修理できるかどうかを構造名だけで決めることはできません。寸法を測り、車種ごとの修理基準に照らして判断します。
事故後に直進しにくい、ドアの開閉が変わった、タイヤの位置が左右で違って見えるなどの異常があれば、走行を続けず整備工場へ相談してください。
ボルトくん
ドアに小さなへこみしかなくても、中が傷んでいることはあるの?
ハグルマ先生
あります。見える傷だけでは判断できないので、事故後に直進性やドアの開き方が変わったら、走行を続けず整備工場へ相談してください。
板の厚さだけでなく、断面の形とつながり方が効く
薄い紙でも、平らなまま持つ場合と、折って箱や筒にする場合では曲げにくさが変わります。車体でも、材料をどこへ置くか、断面を閉じるか、部材をどうつなぐかが重要です。
ただし、箱形の部材が一つあれば十分ではありません。サスペンションからの力を受ける点が、床や柱などへ連続してつながることで、車体全体が働きます。つなぎ目の変形も全体の剛性に関わります。
このため、外から見える補強棒の本数や鋼板の厚さだけでは比較できません。走行中のねじれ、振動、衝突、腐食への耐久性など、設計の目的を分けて評価します。
ボルトくん
厚い板を使えば、どこでも同じように丈夫になる?
ハグルマ先生
断面の形、材料、接合と力の流れる道も必要です。局所的に厚くすることと、車体全体が働くことは同じではありません。
よくある疑問
モノコック車にフレーム部材はない?
独立した車台を持たないという意味で、車体内には骨格と補強材があります。
ラダーフレームは必ず衝突に強い?
構造名だけでは判断できません。変形でエネルギーを吸収する部分と、乗員空間を守る設計を確かめます。
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