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ポート噴射と直噴の違い|噴射位置・燃焼・汚れ・併用を解説

BMWガソリン直噴エンジンの展示
BMWガソリン直噴エンジンの展示。PetrolDirectInjectionBMW.JPG — Ton1~commonswiki / 出典 / CC BY-SA 3.0。

ガソリンエンジンには「ポート噴射」と「直噴」があります。燃料を入れる場所が違うと、何が変わるのでしょうか?

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違うのは、燃料を吹く場所

ポート噴射は、シリンダーヘッドの吸気通路へ燃料を吹きます。この通路を吸気ポートと呼び、燃料を吸気バルブの手前へ送ります。空気と燃料は、その先のバルブを通って気筒へ入ります。

直噴は、気筒の燃焼室へ直接、燃料を吹く方式です。ガソリン直噴はGDIやDIとも表記されます。DIはDirect Injection、直接噴射という意味です。どちらも、噴射する部品はインジェクターと呼びます。

BMWの直噴エンジンの実物展示。燃焼室へ燃料を送る構成の例です。写真の配置やピストンの形は、すべての直噴エンジンに共通ではありません。
ガソリン直噴エンジンの断面展示
BMWの直噴エンジンの実物展示。燃焼室へ燃料を送る構成の例です。写真の配置やピストンの形は、すべての直噴エンジンに共通ではありません。PetrolDirectInjectionBMW.JPG — Ton1~commonswiki / 出典 / CC BY-SA 3.0。

ボルトくん

直噴は、ガソリンを吸気管へ直接吹くという意味?

ハグルマ先生

燃焼室へ直接吹くという意味です。ポート噴射もインジェクターで吹きますが、その場所は吸気バルブの手前です。

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ポート噴射は、吸気側で空気と混ぜる

2005 Fiat Stilo 1.6 16Vのインジェクター。燃料を量に合わせて噴く部品で、電気配線をつなぐ部分があります。硬貨は大きさの目安です。
ポート噴射用インジェクターの実物
2005 Fiat Stilo 1.6 16Vのインジェクター。燃料を量に合わせて噴く部品で、電気配線をつなぐ部分があります。硬貨は大きさの目安です。fiat-stilo-injector — Spock85 / 出典 / CC BY-SA 4.0。

ポート噴射では、燃料が気筒へ入るまでに蒸発し、空気と混ざる時間を作れます。燃焼室の中へ噴射する直噴に比べ、低い燃料圧力で成立する方式です。ただし、吸気管やバルブに付く燃料の量も、正確な制御へ影響します。

Honda D15A3の実物。燃料レールから各インジェクターへ燃料を分配し、各気筒の吸気側で噴射します。
ポート噴射のレールと四つのインジェクター
Honda D15A3の実物。燃料レールから各インジェクターへ燃料を分配し、各気筒の吸気側で噴射します。Fuel rail.JPG — Ian Brockhoff / IJB TA at English Wikipedia / 出典 / CC BY-SA 3.0。

電子制御で噴射する量と時期を調整できるため、キャブレターとは違います。バルブが開いているときだけ噴射するとは限らず、温度や運転条件に合うタイミングを使います。

比較的簡潔な燃料系で、空気と均一に混ざる状態を作りやすいことが利点です。一方、燃焼室へ直接燃料を入れることで得られる冷却効果や、噴射時期を使った混合気の作り方には違いがあります。

ボルトくん

ポート噴射は、古いキャブレターの別名?

ハグルマ先生

別の方式です。ポート噴射は、インジェクターへ電気の指令を出して燃料を噴きます。キャブレターは、主に空気の流れで生じる圧力差を利用します。

直噴は、燃焼室の中で蒸発する燃料を使う

燃料が蒸発するときには、周りから熱を受け取ります。直噴はその冷却を気筒内で利用でき、ノッキングを抑えることに役立ちます。ノッキングとは、通常の炎の広がりとは別に、混合気の一部が急に自己着火する異常燃焼です。

直噴では、燃料をいつ、どの方向へ、何回に分けて吹くかが重要です。燃料を点火プラグの周りへ集める成層燃焼と、気筒全体で混ぜる均質燃焼は違います。直噴だから、いつでも薄い混合気で成層燃焼をするわけではありません。

1998年のガソリン直噴エンジン展示。初期の成層燃焼を含む技術の例で、現在のD-4Sやすべての直噴方式と同じ制御を示すものではありません。
初期のToyota D-4の展示
1998年のガソリン直噴エンジン展示。初期の成層燃焼を含む技術の例で、現在のD-4Sやすべての直噴方式と同じ制御を示すものではありません。1998 Toyota D-4 Direct Injection 4 Stroke engine.jpg — Morio / 出典 / CC BY-SA 3.0。

気筒の圧力に負けずに噴射するため、高圧ポンプ、レール、専用のインジェクターを使います。圧力の高さだけでなく、霧の粒、広がり、壁への付着を含めて設計する必要があります。

ボルトくん

直噴なら、燃料を少なくしても同じ力が出る?

ハグルマ先生

冷却効果や燃焼を生かして効率を高める設計はあります。ただし、空気と燃料の量、負荷、後処理などを合わせて成立させます。方式名だけで実際の燃費は決まりません。

粒子と吸気バルブの堆積物は、別の課題

直噴では、噴射と空気の流れが合わず、局所的に燃料が多い部分や壁への付着ができると、粒子の生成につながります。噴射圧力とタイミング、燃焼室の形、必要に応じたガソリン粒子フィルターなどを組み合わせて対策します。

また、直噴だけの方式では、燃料が吸気バルブの裏側を通りません。ポート噴射にある燃料による洗浄がないため、吸気バルブへ堆積物が蓄積する課題があります。オイルなど、燃料以外の成分も関わります。

SAEの2016年の研究は、2.0Lターボ直噴車を使い、堆積物にオイルや摩耗由来の成分などが関わることを調べています。ただし、その研究を根拠に、すべての車で同じ距離に清掃が必要とは決められません。症状と、そのエンジンの整備資料で判断します。

ボルトくん

燃料へ洗浄剤を入れれば、直噴の吸気バルブも洗える?

ハグルマ先生

直噴の燃料は、そのバルブの裏側を通りません。燃料系へ作用することと、吸気バルブの堆積物へ直接届くことは分けて考えます。

二つの噴射を併用し、条件に合う役割を分ける

ポート噴射と直噴を、同じエンジンへ両方設ける構成もあります。ToyotaのD-4Sなどがその例です。片方だけを使う領域と、両方を使う領域を設け、温度や負荷に合わせて量と時期を変えます。

部分負荷ではポート噴射の特徴を、高い負荷では直噴のノッキングを抑える特徴を生かす、といった使い方があります。粒子の削減や燃焼の安定も、組み合わせる目的です。実際の切り替え方は、車種とエンジンで違います。

併用すれば部品と制御は増えます。単独方式より常に故障しにくい、あるいは必ず燃費がよいとはいえません。購入時には方式名に加え、実際の性能、整備条件、使用する燃料などを見ることが大切です。

ボルトくん

インジェクターが二種類なら、二倍の燃料を使う?

ハグルマ先生

必要な燃料の合計を、二つの噴射方式へ分けます。両方があるから、いつも二倍吹くわけではありません。

よくある疑問

直噴はディーゼルと同じ点火方式?

一般的なガソリン直噴は、スパークプラグで点火します。圧縮で熱くした空気へ燃料を噴き、自己着火させるディーゼルとは燃焼の前提が違います。

直噴なら高圧ポンプは一つだけ?

気筒数や構成で違います。また、タンク側の低圧供給と、エンジン側の高圧供給は別の段階です。

ポート噴射は性能が低い?

方式だけでは決まりません。エンジン全体の設計と使う条件で評価します。ポート噴射にも高い出力を得る設計があります。

関連記事

燃料が届くまでの部品/空燃比と理論値/圧縮比とノッキング

参考資料

  1. Bosch:ポート噴射と直噴の併用
  2. Bosch:直噴と燃焼制御
  3. Toyota:初期D-4の成層・均質燃焼
  4. Toyota:D-4Sを使うDynamic Force Engine
  5. Guinther・Smith、SAE 2016-01-2252:直噴エンジンの吸気バルブ堆積物
  6. Bosch:ポート噴射用インジェクター
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この記事を書いた人
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ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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