エンジンが回ると、空気の入口と排気の出口が、決まった順番で開いたり閉じたりします。その動きを作るのが、カムシャフトとバルブです。どうつながっているのか見ていきます。
カムシャフトは、バルブを動かすための軸
カムシャフトは、軸に「カム」という出っ張りを付けた部品です。回ると出っ張りが相手の部品を押し、バルブを動かします。回る動きを、開け閉めの動きへ変えているんです。
バルブは、空気などを入れる入口と、燃えた後のガスを出す出口を開閉します。多くの乗用車では、細い棒の先に円盤が付いた、ポペットバルブという形を使います。
エンジンの上側にあるとは限らない

構造図。P:ピストン、R:コンロッド、C:クランクシャフト、V:バルブ、S:点火プラグ、I・E:吸気側・排気側カムシャフト。上にカムを置く方式の例です。Four stroke engine diagram.jpg — User:Wapcaplet / 出典 / CC BY-SA 3.0
カムシャフトの場所は、エンジンによって違います。OHCはヘッド側、OHVはブロック側に置きます。OHVでは、途中の棒やアームで動きを伝えます。カムは必ず一番上、というわけではありません。
図では、Iが吸気側、Eが排気側のカムシャフトです。これは上側にカムを置いた例です。場所の違いはOHV・SOHC・DOHCで比べています。
ボルトくん
バルブが上にあるなら、カムも必ず上にあるの?
ハグルマ先生
上に置く方式もありますが、下側のカムから棒やアームで動きを伝える方式もありますよ。バルブを動かす仕事は同じでも、途中の部品が違うんです。
カムが回ると、どうしてバルブが開く?
丸い部分と、出っ張った部分の差を使う

カムシャフトとタイミングチェーンが見える実物写真。カム山が回転し、間にある動弁部品を通じてバルブを開きます。Albero a camme e catena di distribuzione in testata di motore automobile – particolari.jpg — Anna.Massini / 出典 / CC BY-SA 4.0
カムの丸い基準部分を「ベースサークル」といいます。回転して出っ張った部分が相手に当たると、押す量が増え、バルブが開きます。山が来たときだけ押す、という仕組みです。
カムがバルブの円盤を直接こすっているわけではありません。途中にタペットやロッカーアーム、フィンガーフォロワーなどが入ります。名前はいろいろですが、カムの動きを渡す役です。接触面の油と、動く部品の重さも重要になります。[1]
一般的には、ばねがバルブを閉じる
直前の実物写真では、カムシャフトの上側にコイル状のばねが見えます。これがバルブスプリングで、バルブを閉じる方へ戻す力をかけます。
出っ張りが通り過ぎ、カムの押す量が減ると、ばねの力でバルブが閉じます。速く回っても、カムの動きについていけるように作っています。
回転が高すぎてついていけなくなると、ねらったタイミングで閉じられないことがあります。ばね、部品の重さ、カムの形を合わせて防ぎます。ばねを強くするだけでは、こすれや負担も増えてしまいます。
ボルトくん
カムが押さなくなったら、何が閉じてくれるの?
ハグルマ先生
一般的には、バルブのばねが戻してくれるんですよ。高回転でも遅れないように、ばねと部品の重さ、カムの形を組み合わせて作ります。
開く量、開いている期間、開閉の時期を分ける
| 言葉 | 何を表す? |
|---|---|
| バルブリフト | バルブが座面からどれだけ離れるか |
| 作用角 | 一定の基準で開いている期間を、回転角で表したもの |
| バルブタイミング | いつ開き、いつ閉じるか |
| オーバーラップ | 吸気と排気の両バルブが開く期間 |
カムの高さと、バルブのリフトは必ずしも同じではない
シーソーは同じ角度で傾いても、支点のすぐ近くと先端では、動く距離が違いますよね。途中に入るロッカーアームも、支点と押される場所の関係で動く量が変わります。
ロッカーアームを使うと、てこの比率で、カム側とバルブ側の移動量が変わります。カムの山が何mm高いかだけで、バルブが何mm開くかは決まりません。
「作用角」は、どれくらいの回転角の間、開いているかを示します。比べるなら、何mm開いたところから数えるか、クランクの角度かカムの角度かをそろえます。測り方が違う数字を並べても、開く長さを正しく比べられません。
ボルトくん
山の高さの分だけ、バルブも開くんじゃないの?
ハグルマ先生
途中にアームがあると、てこの比率で動く量が変わるんですよ。カムが押す量と、バルブが開く量は別に見ます。開いている角度も、同じ測り方で比べましょう。
4ストロークでは、クランク2回転にカム1回転
| 回る軸 | 4行程を一巡する間の回転 |
|---|---|
| クランクシャフト | 2回転 |
| 一般的なカムシャフト | 1回転 |
4ストロークは、クランクシャフトが2回転して一巡します。バルブもそれに合わせて開閉するので、一般的なカムシャフトは、クランクの半分の速さで回ります。[3]
二つの軸をつなぐのは、タイミングベルトやチェーン、歯車などです。ただ回ればいいのではなく、決まった比率と位置関係を保って回す必要があります。
ボルトくん
クランクとカムは、同じ速さで回しちゃいけないの?
ハグルマ先生
普通の4ストロークでは、クランク2回転にカム1回転ですよ。空気を入れるところから排気までの一巡に合わせるためです。回る比率と、位置のずれを正しく保ちます。
可変機構は、何を変えている?
開く時期を変えるものと、開く量を変えるもの

SUBARU EJ25 SOHCのi-AVLS動弁機構の展示。ロッカーアームなどを使ってバルブのリフトを変えます。写真はヘッド側のカムシャフトやロッカーアームを見せた接写です。SUBARU EJ25 i-AVLS.jpg — 160SX (talk) / 出典 / CC BY-SA 3.0
カムの「位相」を変えるのは、クランクに対する回転位置をずらすことです。バルブが開閉する時期を前後に動かします。山の高さを変える話とは別です。
一方、ホンダの初期DOHC VTECは、違うカムの動きへ切り替え、バルブの開く量や期間を変えます。どちらも可変バルブの技術ですが、変えるものが違います。[2]
時期を変える可変バルブタイミングと、開く量を変える切替式の可変バルブを読むと、その違いが分かります。
ボルトくん
可変バルブタイミングは、カムの山も高くしてるの?
ハグルマ先生
位相を変える方式は、開け閉めの時期をずらすものですよ。山の高さを変えるのとは別です。開く量や期間を変える仕組みもあるので、何が変わるかを見ましょう。
位相だけを変えるなら、山の形は同じままで、開閉の時期が前後します。開いている期間が同じでも、ピストンのどの位置で入口を閉じるかが変わり、中に残る空気の量や、排気と開く時間の重なりが変わります。開く時期と閉じる時期を、セットで見るのがコツです。
摩耗や異音で見るのは、カムだけではない
当たる面の摩耗、油不足、バルブの隙間、ベルトやチェーンの不具合などで、音や動きが変わります。似た音でも、原因が同じとは限りません。
バルブクリアランスは、バルブを動かす仕組みに設けた隙間です。熱で部品が膨らむことなどを考えて決めます。手作業で調整するもの、油圧で補うものがあり、測る温度や場所、必要な値はエンジンごとに確認します。
ベルトやチェーンに問題があると、軸同士の位置関係がずれることがあります。設計によっては、バルブとピストンがぶつかる原因にもなります。音の変化は軽く見ず、点検で原因を確かめましょう。
ボルトくん
隙間をなくせば、音も静かになっていいんじゃないの?
ハグルマ先生
熱で部品が大きくなる分などを考え、必要な隙間を作るんですよ。音だけを消そうと変えてはいけません。指定の温度、場所、寸法で調べます。
よくある疑問
カムシャフトとクランクシャフトは同じなの?
別の軸です。クランクはピストンの往復を回転につなぎ、カムはバルブを動かします。クランクシャフトで位置と役割を解説しています。
DOHCなら、バルブも二つなの?
カムの本数と、一つの気筒のバルブの数は別です。4バルブなどの数え方はマルチバルブをご覧ください。
参考資料
- MAHLE:Valve train。カムと動弁系の設計。
- Honda:B16A型VTEC。カム、ロッカー、可変機構の例。
- NASA Glenn:4ストローク。クランクとカムの回転比。





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[…] カムシャフトとバルブの仕組み:開閉する側の部品を確認できます。 […]