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可変バルブリフトとは?VTECの切替と連続可変の違いを解説

Honda CRXに搭載されたD15B VTECエンジン
Honda CRXに搭載されたD15B VTECエンジン。D15B VTEC in 1988 CRX DX.jpg — Jason Tidwell / 出典 / Public domain。

VTECなどの説明では、バルブの「リフトを変える」といいます。何を動かすと、バルブの開き方が変わるのでしょうか?

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リフトは、バルブが座面から離れる量

バルブは、吸気と排気の通路を開閉する部品です。閉じた状態では円盤状の頭が座面に接しています。そこからどれだけ離れるかがバルブリフト。ドアを少し開くか、大きく開くかという違いに近い意味です。

バルブを開く動きは、一般的にカムシャフトの山で作ります。山の形は、開く量だけでなく、どのくらいの期間開くか、途中でどれくらい速く動くかにも関わります。違う山の動きを選んだり、伝える機構を調整したりすれば、開き方を変えられます。

実物のカムシャフト。カム山の形と、その動きをバルブへ伝える部品が開き方を決めます。この写真は可変リフト機構の型式を示すものではありません。
バルブの動きを作るカム
実物のカムシャフト。カム山の形と、その動きをバルブへ伝える部品が開き方を決めます。この写真は可変リフト機構の型式を示すものではありません。Albero a camme e catena di distribuzione in testata di motore automobile – particolari.jpg — Anna.Massini / 出典 / CC BY-SA 4.0。

ボルトくん

リフトが大きいと、ピストンもたくさん動く?

ハグルマ先生

リフトはバルブの開く量です。ピストンが端から端まで動く距離はストロークといいます。バルブの開き方を変えても、そのままピストンの移動距離が変わるわけではありません。

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大きく開く設定と、小さく開く設定を使い分ける

高い回転数で大きな出力を取り出すには、短い時間に必要な空気を取り込みます。大きなリフトや長い開弁期間が役立つ条件があります。一方、低回転や軽い負荷では、同じ設定が空気の流れ、燃焼の安定、吸排気の重なりに合うとは限りません。

可変リフトは、すべての場面で最大まで開くための機構ではありません。要求する空気量や回転数に合わせて、開く量や期間を選びます。燃費を重視するため、吸気の閉じる時期を切り替える使い方もあります。

SUBARU EJ25 i-AVLSの断面モデル。バルブの動きを変える実例で、カムの位相だけを変える機構としては説明しません。
可変リフトの実物展示
SUBARU EJ25 i-AVLSの断面モデル。バルブの動きを変える実例で、カムの位相だけを変える機構としては説明しません。SUBARU EJ25 i-AVLS.jpg — 160SX (talk) / 出典 / CC BY-SA 3.0。

ボルトくん

一番大きいカムを、最初からずっと使えばよさそうだけど?

ハグルマ先生

低回転や軽い負荷に合う開き方も必要です。大きく長く開ける設定が、すべての場面で最適とは限りません。走行条件に合わせて動きを選べることが可変機構の利点です。

初期DOHC VTECは、別のカムの動きを切り替える

油圧でアームのつながり方を変える

HondaのB16Aで使われたDOHC VTECは、低中回転用と高回転用のカムの動きを使い分ける方式です。バルブへ動きを伝えるロッカーアームの連結状態を、油圧で動くピンを使って切り替えます。

低回転側ではそれぞれのカムに応じて動き、連結すると高回転用のカムの動きでバルブを動かす構成です。切り替えた結果、最大リフトと開いている期間などが変わります。カム山自体がゴムのように伸びるわけではありません。

Honda K20のヘッド。初期B16Aと同一の部品や制御条件を示した写真ではありません。カムとアームがヘッド内に配置される実物例として見てください。
Hondaの動弁系の実物
Honda K20のヘッド。初期B16Aと同一の部品や制御条件を示した写真ではありません。カムとアームがヘッド内に配置される実物例として見てください。k20-head — Joe Flores / 出典 / CC BY-SA 3.0。

ロッカーアームは、カムに押された動きをバルブへ渡す、腕のような部品です。ピンはアーム同士をつなぐ細い棒。エンジンオイルの圧力を利用して、この棒を横へ動かします。

初期DOHC VTECの連結ピンの模式図。連結前はピンAとピンBの端がアームの境目にそろい、油圧で移動すると2本のピンが境目をまたいで3本のアームをつなぐ。
VTECは、ピンでアームをつなぐ
3本のロッカーアームをつなぐ部分だけを四角で示しました。油圧が短いピンAを押すと、中央の長いピンBと受け部も移動し、2本のピンがアームの境目をまたぎます。油圧を抜くと、戻しばねが連結を解く向きへピンを戻します。ピン穴がそろう位置で比較した機能模式図です。Hondaの公開特許の構成例を公式B16A解説と照合しており、量産部品の外形・寸法・油路などは示していません。図:MECCANISMO / 技術根拠。

中央のアームは、連結していないときも高回転用カムに押されて動きます。ただし、その動きは左右のアームへ伝わらず、バルブの開き方には影響しません。この空動きがロストモーションです。

切替回転数は、VTEC全体で一つではない

作動条件はエンジン型式、油温や水温、負荷などの制御で異なります。VTECと付くエンジンが、すべて同じ回転数で同じ本数のバルブを切り替えるわけではありません。SOHC、気筒休止、高膨張比の制御など、目的の異なるVTECもあります。

ボルトくん

VTECは、ある回転数で部品が増えて馬力が出る?

ハグルマ先生

部品の数が増えるのではなく、カムの動きをバルブへ渡す方法を切り替えます。空気を入れる特性が変わることで、高回転の出力などに役立ちます。作動条件はエンジンごとに違います。

連続可変は、開く量を段階の間でも調整する

二つの動きを切り替える方式に対し、一定の範囲でリフトを連続的に調整する機構もあります。トヨタのバルブマチックは、吸気カムの時期を変えるVVT-iに、リフトを連続的に変える機構を組み合わせた技術として公表されています。

吸気の開く量を調整して、入る空気量を制御できれば、吸気通路をスロットルで強く絞るときの負担を減らせる場合があります。スロットルは空気量を調整する弁です。「バルブで調整する=どの車もスロットルが存在しない」という意味ではありません。

連続可変は設定の自由度が増える一方、機構、センサー、作動装置、制御が複雑になります。二段切替との比較は、変えられる範囲と目的をそろえて行います。

ボルトくん

連続可変は、二段切替の間の開き方も選べるということ?

ハグルマ先生

一定の範囲で細かく調整できます。ただし、どこまで変えられるかと、開く期間への影響は機構で違います。可変リフトという名前だけで内部構造が同じとは限りません。

位相可変と併用すると、変えられる項目が増える

変える項目 代表的な方法 区別したいこと
開閉する時期 クランクに対するカムの位相をずらす 同じ山なら形と高さは変わらない
リフトや開く期間 別のカム動作を選ぶ 時期だけをずらす方法とは別
リフトを連続調整 動きを伝える機構を調整する 変えられる範囲は設計ごとに違う

Hondaが2000年に公表したDOHC i-VTECでは、VTECと、吸気カムの位相を連続的に制御するVTCを組み合わせています。ただし、i-VTECという名称で、すべての世代が初期B16Aと同じ高回転切替を持つわけではありません。

故障の診断でも、油圧、作動弁、連結部品、位相機構、センサーを分けて考えます。切り替わらない感覚だけで、カムやアームの破損とは決まりません。車種に合うオイルの管理と、実測値を使った点検が必要です。

ボルトくん

VTECとVTCが付くなら、同じ機能が二つあって無駄?

ハグルマ先生

変える項目が違います。カムの動きを切り替える機構と、カムの回転位置をずらす機構を組み合わせると、開き方と時期を別々に調整できます。

よくある疑問

VTECが作動すると必ず大きな音がする?

吸排気や制御により感じ方は変わります。音や加速感だけで作動の正常・異常を断定せず、型式ごとの制御と点検値で確認します。

高リフトのカムへ替えるだけで速くなる?

吸排気、回転域、ばね、ピストンとのすき間、制御との適合が必要です。開く量だけを増やしても、必要な空気量と燃焼が得られるとは限りません。

すべての可変リフトは油圧で切り替える?

いいえ。作動装置と動きを伝える方法は方式により違います。初期DOHC VTECの説明を、他社の連続可変機構へそのまま当てはめないでください。

関連記事

カム位相の可変機構/リフト・作用角・カムの形/スロットルが空気量を調整する仕組み

参考資料

  1. Honda:B16AのDOHC VTEC
  2. Honda:DOHC i-VTECとVTCの併用
  3. トヨタ:Valvematicの連続可変リフト
  4. Honda:効率と負荷に応じたバルブ制御
  5. Honda公開特許:3本のアームを連結するピンの構成例(FIG4・5と詳細説明)
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この記事を書いた人
ハグルマ先生のイラスト

ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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