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トルクと馬力の違い|回転数・出力の計算と加速の関係

ハイルブロン大学で行われたエンジン試験
ハイルブロン大学で行われたエンジン試験。VCR-engine dyno testing P1505 Heilbronn University.jpg — Vcrtech / 出典 / CC BY-SA 4.0。

最大トルクと最高出力。どちらも車のカタログとかに書いてある項目ですが、これらは一体何を表すのでしょうか?知っているのと知らないのとでは人生の楽しさが天と地ほど差が開く、そんな2つについて解説していきます。

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トルクは、軸を回そうとする働き

回す力は、どこを押すかでも変わる
回す力は、どこを押すかでも変わる
軸の中心から20 cm離れた位置に、直角に100 Nの力を加えた例です。0.20 m × 100 N = 20 N·m。同じ力なら、軸から遠い所で押すほどトルクが大きくなります。
図:メカニズモ

トルクは、軸を回そうとする働きの大きさです。自転車のペダルも、回転の中心から離れた場所を押すことで回りますよね。同じ押す力でも、中心からの距離が変われば、軸を回そうとする働きも変わります。

コンロッドが、主軸の中心からずれたクランクピンへ力を伝えます。力の大きさと、中心からの位置・向きが回す働きに関係します。
トルクを受け取るクランクシャフト
コンロッドが、主軸の中心からずれたクランクピンへ力を伝えます。力の大きさと、中心からの位置・向きが回す働きに関係します。Crankshaft.jpg — Alex Kovach / 出典 / CC BY 2.0

一方、出力は、どれくらいの速さで仕事をしているかを表します。同じトルクでも、1秒間にたくさん回せれば、その分だけ仕事を進められます。馬力は、この出力を表す単位の一つです。

基本の例では「トルク=力×腕の長さ」です。単位はN・m。Nは力の単位ニュートン、mはメートルです。軸から1m離れた腕を、回す方向へ直角に100Nで押せば、100N・mになります。

ボルトくん

じゃあ、トルクが大きければ馬力も同じなの?

ハグルマ先生

回る速さも関係します。同じ力で回していても、何回転しているかによって、出力は変わるんですよ。

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出力は、同じ時間にどれくらい仕事ができるか

同じ荷物を同じ高さへ運んでも、10秒で終わる人と1分かかる人では、仕事を進める速さが違いますよね。この「時間あたり、どれだけ仕事をするか」が出力です。車では、回転する軸から取り出せる仕事を見ます。その出力を表す単位の一つが、馬力です。

単位はW、または1,000WをまとめたkWです。馬力のPSも使い、1PSは約0.7355kW。一方、英語のhpは定義が違い、一般的な機械馬力なら約0.7457kWです。PSとhpは、同じ数字だから同じ力とは限りません。

馬力は、ガスの圧力や最大トルクを、別の名前で呼んだものではありません。

ボルトくん

馬力って、トルクの別の言い方じゃないの?

ハグルマ先生

別の量ですよ。トルクは回そうとする働き、出力は時間あたりの仕事です。出力には、回す力と、回る速さの両方が関係します。

ボルトくん

なんでや!

ハグルマ先生

同じ力の話に見えても、ねじる力と、仕事をする速さは別なんですよ。順番に分けてみましょう。

トルクと回転数を掛けると、出力になる

100 N·mのまま回転数だけ変えた例
100 N·mのまま回転数だけ変えた例
2,000 rpmでは約21 kW、4,000 rpmでは約42 kW。同じ強さで回していても、1秒間に多く回せば、その時間にできる仕事が増えます。
図:メカニズモ

同じトルクでも、回転数が違えば出力が違う

回る軸の出力は「トルク×角速度」です。角速度は、1秒にどれくらいの角度を回るか。車で見るrpmは1分の回転数なので、単位を直すと次の式になります。

「出力kW≒トルクN・m×回転数rpm÷9,549」です。同じ軸の、同じ運転状態で使います。200N・mなら3,000rpmで約62.8kW、6,000rpmで約125.7kW。ただし、実車が高回転でも200N・mを保てるという意味ではありません。

トルク 回転数 計算した出力
200N・m 3,000rpm 約62.8kW
200N・m 6,000rpm 約125.7kW
100N・m 6,000rpm 約62.8kW

最大トルクと最高出力は、同じ回転数とは限らない

ある軸が、3,000rpmで200N・m、6,000rpmで160N・mを出すとします。トルクは20%下がっても、回転数が2倍なので出力は増えます。特定の車の値ではなく、掛け算の関係を見る例です。

仮定した運転点 トルク 出力の計算
3,000rpm 200N・m 約62.8kW
6,000rpm 160N・m 約100.5kW

回転数が上がれば、トルクが少し下がっても、出力がまだ上がることがあります。最大トルクと最高出力が、違う回転数に出るのはそのためです。

ボルトくん

トルクが下がったら、馬力もすぐ下がるんじゃないの?

ハグルマ先生

回転数との掛け算なので、回る速さが十分に増えれば、出力は上がるんですよ。二つのピークが同じ場所とは限らないんです。

加速には、タイヤに届く力と車の重さが関わる

エンジンのトルクは、変速機とファイナルギアを通ると変わります。低いギアでは、タイヤをゆっくり回す代わりに、回す力を大きくします。歯車がエネルギーを増やしているわけではありません。

タイヤが地面を押す力は、タイヤ側のトルクを、実際に働く半径で割って考えられます。加速には、車の重さ、ギア比、タイヤの大きさ、駆動系の損失、路面の滑りやすさ、空気抵抗も関わります。

ここでの減速比10は、エンジンが10回転する間にタイヤ側が1回転する関係です。回る速さを10分の1にする代わりに、損失を無視すれば、回す働きを10倍にできます。

例えばエンジンが200N・m、全体の減速比が10で、損失を無視すれば、タイヤ側は2,000N・mです。働く半径が0.3mなら、約6,667Nの力になります。実車には損失やタイヤの変形、力の配分があるので、考え方の例です。

ボルトくん

最大トルクが大きければ、必ず加速も速いの?

ハグルマ先生

ギア比や、動かす車の重さも必要ですよ。同じ車速で、実際に使う回転数のトルクとギアを比べます。最大値だけでは決まりません。

性能曲線と、測定した場所を確認する

ハイルブロン大学でのエンジン試験。車両のタイヤをローラーに載せる測定とは配置が違います。写真から測定値や補正条件を読み取ることはできません。
エンジンを試験装置につないだ実例
ハイルブロン大学でのエンジン試験。車両のタイヤをローラーに載せる測定とは配置が違います。写真から測定値や補正条件を読み取ることはできません。VCR-engine dyno testing P1505 Heilbronn University.jpg — Vcrtech / 出典 / CC BY-SA 4.0

性能曲線は、回転数ごとのトルクと出力を描いたグラフです。普段使う回転数で力が出るか、広い範囲で保てるかも分かります。ただし二本の線の交点は、単位や縦軸の取り方で変わります。その交点が特別な性能の境目、というわけではありません。

エンジンで測る出力と、タイヤで測る出力も違います。間の変速機や軸で失う分があるからです。測定機、補正、気温、燃料、固定の仕方、選ぶギアでも数字は変わります。

ハイブリッドのシステム出力も、エンジンとモーターの最大値をそのまま足すとは限りません。最大が出る回転数、電池から出せる電気、力のつながり方を含めた、車全体の仕様で確認します。

ボルトくん

エンジン200PSとモーター100PSなら、300PSになるの?

ハグルマ先生

両方が同時に最大を出せるとは限らないんですよ。回転数や電池、つながり方で制限されます。メーカーのシステム出力を確認しましょう。

よくある疑問

1,000rpmでトルクが出る車は乗りやすい?

低回転で必要な力が出るのは利点です。ただし、アクセルへの反応、変速の調整、車の重さでも乗りやすさが変わります。

軽量フライホイールで最高出力は増える?

回転を上げ下げする負担は変わりますが、一定の回転数で測る出力が、軽くした分だけ増えるわけではありません。

馬力が高ければ最高速度も必ず高い?

空気抵抗、ギア比、車の制御や速度の制限も関わります。同じ条件なら大きな出力を速度の維持に使えますが、馬力だけで全車の最高速度は決まりません。

関連記事

歯車で速度とトルクを変える/慣性とエンジンの応答/クランクが力を回転へ変える仕組み

参考資料

  1. ヤマハ:馬力と仕事率
  2. ヤマハ:最高出力・最大トルクの仕様表記
  3. ヤマハ:トルク・馬力と加速の考え方
  4. EXEDY:重量分布と慣性の関係
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この記事を書いた人
ハグルマ先生のイラスト

ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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