吸排気バルブをピストンの位置に対応して開閉させるシステムをバルブシステムといいます。このバルブシステムでは、複数のカムを一本のシャフトに通したカムシャフトが使われます。カムシャフトの配置によってバルブシステムの方式が分けられます。それではバルブシステムの方式を見ていきましょう。
オーバーヘッドバルブ(OHV)
オーバーヘッドバルブ(OHV)はバルブ機構をシリンダーヘッド上に置いたものをいいます。OHVの場合、カムシャフトはシリンダーブロック側に配置され、プッシュロッドという長い棒を介してロッカーアームを押し上げバルブを開閉させます。日本では、1960年代から1980年代に製造された乗用車によく採用されていましたが、後述するSOHCやDOHCの採用が増えるにつれ徐々に姿を消していきました。
シングルカム(SOHC)
シングルカムの正式名称は「シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフト」といいます。SOHCという呼ばれ方が一般的です。SOHCはその名の通り、1本のカムシャフトをシリンダヘッドの中央に置き、ロッカーアームを介して左右に配置された吸排気バルブを駆動させます。
SOHCは、カムシャフトをエンジンヘッドの上に持ってくることにより、OHVの重いプッシュロッドの追従性を解消でき、より高回転・高出力化が可能になりました。
しかし、シングルカムは1本のカムシャフトで吸気バルブと排気バルブの両方を動かすため、パワーが足りず次に紹介するDOHCが主流になっていきました。
ツインカム(DOHC)
DOHCとは、ダブル・オーバーヘッド・カムシャフトの略で、2本の独立したカムシャフトを備えたものです。先述したSOHCは、吸気と排気をひとつのカムシャフトで補う構造です。しかし、SOHCはエンジンの回転数を上げたときに、バルブがそれに追従しにくくなってしまいます。それに対し、DOHCはカムシャフトが増えるので1気筒に4バルブを設けることができます。これにより吸排気効率が良くなるので、SOHCよりもさらに高回転高出力化が可能です。
また、SOHCではシリンダヘッドの中央にカムシャフトが配置されるため、点火プラグを燃焼室の中央に配置しようにも、カムシャフトがあり邪魔になってしまいます。対してDOHCでは、カムシャフトが吸排気側にそれぞれ配置されるので、点火プラグを燃焼室の中央に配置することができるので、燃焼効率の向上を図ることができます。
カムシャフトの動力源
カムシャフトにはクランクシャフトの回転が伝わります。クランクシャフトの端にはクランクシャフトタイミングプーリー(スプロケット)が取り付けられており、カムシャフトにはカムシャフトタイミングプーリー(スプロケット)が取り付けられています。プーリーではタイミングベルトが、スプロケットではタイミングチェーンによって回転が伝えられます。エンジンが4行程を行う間に、クランクシャフトは2回転しますが、カムシャフトはその半分の1回転しかしません。この回転の差を埋めるために、カムシャフト側のプーリー(スプロケット)の径を2倍の大きさにしなければなりません。