「タイヤ館でアライメントをとってもらったんだ。26,000円の工賃を払って。トー、キャンバー、すべてやり直したが、この領域でまっすぐ走る車は、タイヤ館でアライメントをとった車のみだ」。……という冗談はさておき、この「アライメント」って何なのでしょうか?詳しく解説していきます。
車輪を上から見た向き、正面から見た傾き、ハンドルを切る軸の傾き。アライメントでは、こうした角度や位置関係を調べます。ホイールの重さの偏りを直す、バランス調整とは別の話です。
角度が変わると、直進のしやすさ、曲がるときの動き、タイヤの減り方などに影響します。ただし、全部をゼロにすれば正解ではありません。その車で狙った走り方や、走行中の変化を考えた指定値があります。
トーは、上から見たタイヤの向き
車を上から見て、左右のタイヤの前側が内向きになるのがトーイン、外向きになるのがトーアウトです。見るのはタイヤ上端の傾きではなく、進む向きです。
合わないと、進む方向へタイヤが引きずられ、偏って減ることがあります。ただ、停車中に完全に平行が正解とは限りません。走行の力と、ブッシュ(接続部で動きや振動に対応する部品)が動く分も見越して決めます。
トーインは安定、アウトは曲がるという一言では、調整値は決まりません。前後でも影響が違い、タイヤ、足回り、使い方に関わります。公道では、まず車の基準と測る条件を確認します。
ボルトくん
タイヤが少し斜めなのは、取り付けミスじゃないの?
ハグルマ先生
設計で角度を持たせている場合もあります。見た目だけで判断せず、その車の基準と比べるんですよ。

上から見たトーインの図。矢印は車両前方、Toe-in angleはトー角を表します。前輪の前端が内側へ向きます。角度は説明用に強調されており、実車の推奨値ではありません。File:Toe-in example 5 degrees positive.png — Silverxxx / 出典 / CC BY-SA 3.0
キャンバーは、正面から見た車輪の傾き

路面に垂直な方向と、正面から見た車輪の向きの関係を示す図。キャスターやトーを描いた図ではありません。Cambe angle.svg — Camber_angle.jpg: GRAHAMUK
derivative work: McSush (talk) / 出典 / CC BY-SA 3.0
車を正面から見て、タイヤの上側が内へ倒れていれば「ネガティブキャンバー」、外へ開いていれば「ポジティブキャンバー」です。難しいのは名前で、見ているのはタイヤの傾きです。道路に対して真っすぐ立つ向きを基準に、何度傾いているかを表します。
カーブは車体が傾き、足回りとタイヤも変形します。キャンバーは、動いているときにどう地面へ当てるかに関わります。
ハの字を増やせば、いつでもよく曲がるわけではありません。やりすぎは、直進の接地と摩耗に不利な場合があり、トーのずれも重なると早く減ります。見た目の傾きは、性能の順位ではありません。
ボルトくん
ハの字にすればするほど、カーブに強いの?
ハグルマ先生
直進の接地や摩耗が悪くなることもありますよ。トーのずれも一緒だと、減りを早める場合があります。
キャスターは、横から見た「向きを変える軸」の傾き
キャスターは、横から見た「タイヤの向きを変える軸」の傾きです。普通、その上が後ろへ傾く方向をプラスと呼びます。
この軸は、支持点から決まる線です。ストラットなら上の支持点と下のボールジョイント、ダブルウィッシュボーンなら上下のジョイントなどを結びます。その線上に、一本の棒が必ずあるわけではありません。
ハンドルの戻りと手応えに関わりますが、軸の線が地面と交わる点と接地中心の距離、タイヤ、パワステも関わります。角度だけで、曲がらない、小回りするとは決まりません。
ハンドルからタイヤまでの中身はステアリングの仕組みで解説しています。

灰色は車輪、赤い線は向きを変えるための操舵軸を表します。垂直線と赤い線の角度θ(シータ)を見る図です。図には車両前方の矢印がないため、正負の方向や規定角をこの図だけで決めません。Caster angle.svg — Ktims at English Wikipedia / 出典 / Public domain
ボルトくん
キャスターは、タイヤを横から見た傾きなの?
ハグルマ先生
タイヤそのものではなく、向きを変える軸の線ですよ。支持点から決まるので、実物の軸が見えるとは限りません。
前輪の数値だけでなく、後輪の向きも確認する
前だけそろえても、車全体は分かりません。後ろのトーとキャンバー、左右の差も走り方を変えます。
後輪が作る進行方向と、車の中心線のずれがスラスト角です。後ろがずれると、直進するための前輪の向きと、ハンドル位置にも関わる場合があります。
だから四輪を測る意味があります。ただし、測れる角度が全部調整できるとは限りません。調整のない場所、範囲の小さい場所もあります。
ボルトくん
ハンドルを直すのに、後ろのタイヤも測るの?
ハグルマ先生
後輪の進む方向が、前の向きへ関係することもあるんですよ。四輪を合わせて見る必要があります。
測定表は、車輪の位置と単位から読む

アライメント装置のターゲットの実物。これは測定値の画面ではなく、装置が車輪の姿勢を調べるための部品です。Wheel alignment on a Ford Focus 2.jpg — Photograph by Mike Peel (www.mikepeel.net). / 出典 / CC BY-SA 4.0
表には、基準、許される範囲、調整前と後などが載ります。赤か緑か、数字が大きいかの前に、どの車輪の何の値かを見ましょう。
- 対象車が合っているか:型式、年式、仕様、サスペンションなどに対応する基準かを確認します。
- どの車輪か:前後・左右を区別します。前輪と後輪で同じ目標値とは限りません。
- トーは片輪か、合計か:左右個別の値とトータルトーを混同しないようにします。
- 角度か、長さか:トーは度などの角度、またはmmなどの長さで表されます。異なる表記の数字をそのまま比べないでください。
- 度・分か、小数の度か:0°30′は0.5°です。0.30°とは異なります。
左右差やスラスト角も出ます。Hunterの測定機マニュアルも、一輪のトーと合計のトー、単位、基準範囲を分けています。
全部緑でも、症状が必ず直るとは限りません。タイヤ、がた、空気圧、車高、荷物も関わります。左右差と、調整できなかった部分の説明も聞きましょう。
ボルトくん
0°30′と0.30°は、同じ数字なの?
ハグルマ先生
30分は0.5度ですよ。度と分で書く方法と、小数で書く方法は違います。単位を見て比べましょう。
ホイールバランスは、回転する重さの偏りを整える
アライメントは向きと位置、バランスは回るタイヤとホイールの重さの偏りです。後者は専用機で測り、おもりを適した位置へ付けるなどして直します。
ある速度で振動するならバランスも候補ですが、タイヤの変形とホイールの傷みも考えます。ぶれだけでアライメントと決めず、原因を調べます。ミシュランの解説も違いを説明しています。
ボルトくん
高速でぶれるなら、アライメントで直るの?
ハグルマ先生
バランス、タイヤ、ホイールも候補ですよ。出る速度などを伝え、調べてから作業を決めましょう。
偏摩耗や片流れ、強い衝撃の後は点検を相談する
- タイヤに偏摩耗がある、以前より減り方が違う
- ハンドルのセンターがずれた、片流れなど操縦性が変わった
- 縁石や深い穴などへ強く当てた
- サスペンションやステアリングの関連部品を交換した
- 車高を変更した、タイヤ交換時に従来の摩耗状態が気になった
こうした変化は、点検を相談するきっかけです。アライメントと確定はしません。まずタイヤの指定空気圧、傷みと摩耗、部品を見て、修理が要るところを先に直します。強い振動や操作の異常なら、乗り続けず相談してください。
ローダウン後の順番と再調整は車高変更後のアライメント調整で詳しく説明しています。
ボルトくん
縁石に当ててから、左へ流れる感じがするんだ。
ハグルマ先生
タイヤと部品の傷みも、点検する必要がありますよ。強い振動やハンドルの異常なら、測定の予約まで乗り続けず相談しましょう。
調整できる場所と範囲を、先に確認する

Fiat Pandaのストラットと車輪まわり。すべての角度が、この車で外部から自由に調整できるという意味ではありません。” 13 – ITALY – Fiat Panda 2003 suspension shock absorbers – Automotive suspension technologies and disk brake.JPG — Pava / 出典 / CC BY-SA 3.0 it
標準の範囲へ戻らないなら、摩耗、曲がり、取り付け方、下げすぎた車高も候補です。数字だけ無理に合わせず、原因と直せる範囲を見ます。
前後のデータ、調整した場所、修理する部品を聞きます。センサーや運転支援の調整も必要か確認しましょう。ハンドルの傾きだけでタイロッドを回さず、全体で整えてもらいます。
ボルトくん
範囲から外れてたら、数字だけ合わせればいいの?
ハグルマ先生
部品が減ったり曲がったりしていれば、修理が先ですよ。なぜずれたかと、対応できる範囲を確認します。
停車時の測定値と、走行中の角度は同じではない
足回りが上下すると、アームの位置が変わり、トーとキャンバーも動く場合があります。ゴムも力で変形します。停車中の数字は、指定された状態で比べるための目印です。
同じ車でも、空気圧、荷物、車高、がたで条件が変わります。車高を変えた後、静止のトーだけ戻しても、上下するときの角度変化まで元どおりにはなりません。
先に傷みとがたを見て、指定の荷物と車高を整え、基準と調整できる範囲を確認します。操作の症状と、前後の測定を結び付けて判断します。
ボルトくん
止まってるときの数字が同じなら、走ってるときも同じなの?
ハグルマ先生
上下とゴムの変形で角度も変わりますよ。車高や部品を替えたら、静止の数字だけでは、動くときまで同じとはいえません。
よくある疑問
アライメントとバランスは同じ?
アライメントは向きと位置、バランスは回る重さの偏りです。別の測定と調整です。
測定表の0°30′は0.30°?
1度は60分なので、0°30′は0.5°です。0.30°とは違います。
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