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センターデフ式フルタイム4WD|前後の回転差・トルク配分・LSDを解説

Jeep Grand Cherokeeの車体下にあるトランスファーとシャフト接続部
Jeep Grand Cherokeeの車体下にあるトランスファーとシャフト接続部。1993 Jeep Grand Cherokee Laredo - Blackberry with Crimson interior 17.jpg — Christopher Ziemnowicz (CZmarlin) / 出典 / Public domain。

四輪すべてに力を伝えるなら、前後のタイヤをがっちりつなげばよさそうです。ところがカーブでは、前輪と後輪が通る道の長さが違います。「全員同じペースで回れ」と強制すると、車の中で無理が生じます。団結を求めすぎた組織の末路です。

そこで、前後が違う速さで回れるようにするのが「センターデフ」。四輪に駆動力を伝えながら、曲がるときに必要な回転差も受け入れます。

今回は、その仕組みと前後への力の配り方、さらに滑りやすい路面で働くLSDの役割をやさしく解説します。

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カーブで前後の回転差が必要になる理由

カーブでは、後輪が前輪より内側を通ります。前後で進む距離が違うので、同じ時間に曲がるには回る速さにも差が必要です。この差を無理なく許すために、センターデフを使います。

センターデフ式の4WDは、前輪側と後輪側へ力を送る途中に、デファレンシャルという歯車の仕組みを置きます。左右の車輪の間に使うデフと同じく、こちらは前後の回転差を許す役です。

前後を完全に一体で回すだけだと、曲がるときに回転差を逃がしにくくなります。センターデフなら、前後へ駆動力を送りながら、その違いに対応できます。ただし、滑る場面への対応には、差動を制限する仕組みなども関係します。

滑りにくい路面で前後直結のまま曲がると、軸などにねじれがたまります。ブレーキをかけたように進みにくくなるのが、タイトコーナーブレーキング現象です。

センターデフは、前後の回転差を許しながら力を渡します。左右の通常のデフと同じ考え方を、前後にも使うんですね。

ボルトくん

デフって、左右だけじゃなくて前後にも要るの?

ハグルマ先生

この方式では、前後の回転差を受け持ちます。左右の車輪を受け持つデフとは、取り付く場所が違うんですよ。

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センター・フロント・リヤの三つのデフ

中央の2が前後へ分配するセンターデフ。前後の左右輪の差動は、それぞれ別のデフが担当します。
三つのデフを持つ模式図
中央の2が前後へ分配するセンターデフ。前後の左右輪の差動は、それぞれ別のデフが担当します。Central differential in car transmission.svg — Tryphon / 出典 / Public domain

デフは一台に一つ、とは限りません。代表的な構成では、前輪の左右用に一つ、後輪の左右用に一つ、そして前後の回転差を受け持つものが一つ。合計三つあります。この真ん中の仕事をするのが、センターデフです。左右用と前後用を分けると、名前も整理しやすいですね。

力は変速機からセンターへ入り、前後に分かれます。それぞれのデフで、さらに左右へ分かれます。前後へ分ける段階と、左右へ分ける段階を追うと、流れが分かります。

センターデフが変速機やトランスファーと一体の車もあります。センターは役割の名前で、車体の真ん中に独立した箱があるという意味ではありません。

ボルトくん

車の真ん中を探せば、センターデフがあるの?

ハグルマ先生

変速機などと一体の場合もあるんですよ。場所より、前と後ろへ分ける仕事に注目しましょう。

前後のトルク配分は、いつも半分ずつなの?

歯車にはベベルギアや遊星歯車などを使います。基本の前後トルクは、歯車の設計で決まります。トルクは軸を回す力です。前後45:55などの数字はその力の配分で、前後がその割合の速さで回るという意味ではありません。等しく分けるものも、前後で違うものもあります。

SUBARUのビスカスLSD付きは、通常50:50、VTD-AWDは45:55を基本とする例です。その方式の設計値で、全部のセンターデフの共通値ではありません。

LSDが回転差を抑えると、実際に渡るトルクも変わります。構造、入る力、地面からの反力、制御に左右されます。車内の表示も、何を計算しているかを確認します。

ボルトくん

45:55なら、ずっとその割合なの?

ハグルマ先生

基本の配分の数字ですよ。回転差を抑える働きなどが加わると、実際の関係は変わります。

滑りやすい路面でLSDが必要になる理由

制限のないセンターデフでは、一方の車軸が小さなトルクで滑ると、もう一方も歯車の比率に応じて小さく制限されます。道が前後にあるだけで、大きな力を使えるとは限りません。

そこでLSDを加え、回転差へ抵抗を作ります。空転を抑え、グリップのある側へ大きな力を渡しやすくします。完全ロックとは違い、方式と条件によって差を許します。

ただ、センターが見るのは前後です。片輪ずつの空転には、前後の左右デフと、ブレーキの制御も関わります。

ボルトくん

センターにLSDがあれば、どのタイヤが滑っても平気なの?

ハグルマ先生

左右は、前と後ろのデフも受け持ちますよ。センター一つで、四輪それぞれを全部調整するわけではありません。

油の抵抗、歯車の摩擦、クラッチで回転差を抑える

ビスカスLSDを組み合わせる方式

これはEagle Talonの後輪デフ用部品です。粘性カップリングの構成例として使用し、SUBARUのセンターデフ実物とは扱っていません。
ビスカス機構の分解実物
これはEagle Talonの後輪デフ用部品です。粘性カップリングの構成例として使用し、SUBARUのセンターデフ実物とは扱っていません。Viscous coupling unit1a.jpg — Andy Rusho, www.zero2blur.com (Arusho at en.wikipedia) / 出典 / CC BY-SA 3.0

ビスカス式は、前後を分ける歯車に、油の抵抗で回転差を抑える装置を加えます。差ができると、粘い油が抵抗を作ります。

この場合、歯車が分配、ビスカスが差を抑える仕事です。センターデフなしで、ビスカスそのものが前後をつなぐ方式とは、分けて考えます。

トルセンなどの歯車式LSD

遊星歯車とヘリカル歯車を使うセンターデフ用の構成例。特定の現行Audiの部品と断定していません。
Torsen Type Cの構造図
遊星歯車とヘリカル歯車を使うセンターデフ用の構成例。特定の現行Audiの部品と断定していません。Torsen differenzial skizze typ c.gif — Christian Meißner (ChrMeissner) / 出典 / Copyrighted free use — explicit permission for any purpose, including commercial use and modification

歯車式LSDは、トルクを受けた歯車の摩擦などを使います。センター向けトルセンType Cは遊星歯車を使い、前後の違う配分にも対応します。

全部がウォームギア、全部が通常50:50、ではありません。制限できる範囲もあるので、道によってはブレーキ制御などの助けが必要です。

電子制御多板クラッチを組み合わせる方式

多板クラッチ式は、歯車のデフに、板で回転差を抑えるLSDを組み合わせます。電子制御で押す力を変え、操作と車の動きに合わせられます。

VTD-AWDは、遊星歯車のセンターデフと、電子制御の油圧多板クラッチを使う例です。一方、センターデフなしで板を使う4WDもあります。板があれば同じ方式、と決めることはできません。

下の図では、歯車で分ける道と、クラッチで差を抑える部分を見てみましょう。サンギヤは中心の歯車、ピニオンは周りの小歯車、キャリアはその支えです。この例ではキャリアから前輪へ取り出します。

SUBARUの4速AT用VTD資料に基づく機能図。青は歯車で伝える動力、橙の実線はクラッチによる前後の連結、点線は調整する油圧です。第1サンが入力、キャリアが前輪、第2サンが後輪側。クラッチは前後出力の間につながります。実際の断面や部品配置ではなく、今の全VTD車が同じとは限りません。
VTD-AWDの動力分配と差動制限の機能図
SUBARUの4速AT用VTD資料に基づく機能図。青は歯車で伝える動力、橙の実線はクラッチによる前後の連結、点線は調整する油圧です。第1サンが入力、キャリアが前輪、第2サンが後輪側。クラッチは前後出力の間につながります。実際の断面や部品配置ではなく、今の全VTD車が同じとは限りません。図:MECCANISMO / 技術根拠

青い道は、クラッチを通らずに前後へ分かれています。橙色の板は、二つの出口の回転差へ抵抗を加えます。板だけで前後へ分ける方式とは、つながりが違います。

ボルトくん

多板クラッチがあれば、センターデフ式なの?

ハグルマ先生

板だけで前後をつなぐものもありますよ。分配する歯車があり、その差を抑えるために板を使うかを確認します。

歯車の力で摩擦板を押す、Audiの実例

センターデフと板を使っても、押す方法は違います。Audiが2010年のRS 5で採用したクラウンギヤ式は、歯車が受ける力で板を押します。別の仕組みの実例として見てみましょう。

Audiのクラウンギヤ式センターデフを扱った研究の模式図。fは前輪側、rは後輪側の出力。左右に描かれた薄い板の束が多板クラッチで、歯車の差動へ抵抗を加えます。SUBARU VTD-AWDの図ではありません。
歯車式センターデフと多板クラッチの構造図
Audiのクラウンギヤ式センターデフを扱った研究の模式図。fは前輪側、rは後輪側の出力。左右に描かれた薄い板の束が多板クラッチで、歯車の差動へ抵抗を加えます。SUBARU VTD-AWDの図ではありません。https://www.mdpi.com/2624-8921/6/1/8 — Maksym Diachuk; Said M. Easa / 出典 / CC BY 4.0

図の両側へ薄い板が並ぶ部分が、多板クラッチです。前後の歯車をそれぞれケースへつなぐ方向に置きます。歯車は回転差を許し、板がそこへ抵抗を作ります。

この設計は、かみ合う位置の違いで、通常40:60です。片側が滑りやすくなると、歯車に軸に沿った力が出て、隣の板を押します。回転差を抑え、グリップを使える側へ力を渡します。

比較する方式 前後へ分ける歯車 摩擦板を押す方法
Audiのクラウンギヤ式(2010年RS 5で導入) クラウンギヤ。通常時は前40:後60。 歯車に生じる軸方向の力を利用する、機械式の自己作動。
SUBARU VTD-AWD 複合遊星歯車。基本配分は前45:後55。 電子制御で油圧を調整し、多板クラッチ式LSDの押付力を変える。

これはAudiの模式図で、VTDの部品配置ではありません。歯車で分け、板で差を抑える点と、押し方の違いを比べる例です。Audiの四輪ブレーキによる制御も、この機械の動きとは別です。

センターデフロックの使いどころと注意点

センターロック付きなら、必要な場面で、前後の回転差を機械的に止められます。一方の車軸が滑りやすいとき、もう一方へ渡しやすくします。

ただし、左右の前後デフまで固定するものではありません。同じ回転関係にすることと、前後トルクが半分ずつになることも別です。

ロック中は前後の差を逃がせず、乾いた舗装路で禁止する車があります。路面、速度、切り替え条件を確認し、空転中の急な切り替えや、ロックした急旋回は避けます。LSDとデフロックの違いも参考になります。

ボルトくん

舗装路でもロックした方が、力強くなるの?

ハグルマ先生

曲がるための前後の差を逃がせなくなりますよ。乾いた舗装路で禁止する車もあるので、使える条件を守りましょう。

オンデマンド4WDとは構造で比べる

センターデフ式は、歯車で前後へ分けます。代表的なオンデマンド4WDは、主に回す側から補助側へ、カップリングで渡す量を調整します。

フルタイムやAWDという商品名でも、全部同じ中身ではありません。4WDの種類を比べるなら、歯車のデフがあるか、差を何で抑えるか、普段と滑る道の制御を確認します。

ボルトくん

フルタイムって書いてあれば、同じ仕組みなの?

ハグルマ先生

名前だけでは決まらないんですよ。前後へ分ける歯車と、その回転差を抑える装置を見ると、違いが分かります。

基本の配分と、回転差を抑える働きを分ける

歯車は、基本の比率で力を分け、回転差を許します。LSDは、その差へ抵抗を加えます。二つの仕事を分けると、基本の数字と実際の配分が違う理由を理解できます。

板があっても、板だけが分配を全部するとは限りません。デフと並んで差を抑えるものも、デフなしで補助側へ渡すものもあります。

完全ロックは、前後の回転関係を固定します。前後が実際に受け持つトルクは、接地と反力で変わります。同じ回転と、同じ割合の力は別なんです。

ボルトくん

センターのクラッチをつなげば、いつも同じ配分なの?

ハグルマ先生

抑える仕組みと強さ、地面の反力で変わりますよ。回転を固定することと、決まった割合に力を分けることは別です。

よくある疑問

センターデフは車体中央にある?

前後を受け持つ役割の名前です。変速機と一体のものもあるので、場所だけでは分かりません。

センターをロックすると四輪全部が同じ回転?

左右のデフは別に働きます。センターだけのロックで、左右の回転差まで止めるわけではありません。

フルタイムAWDはすべて同じ機械?

名称と中身は別です。センターデフ、LSD、制御の方法を、その車で確認します。

関連記事

4WDの種類と仕組み|メリット・デメリット/オンデマンド4WDの仕組み|電子制御式と回転差感応式の違い/LSDとデフロックの違い|役割・種類と使うときの注意点

参考資料

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この記事を書いた人
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ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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