「四駆を買ったのに、普段は二輪しか駆動していない」。話が違うと販売店へ電話する前に、ちょっと待ってください。それ、サボりではなく仕様です。
オンデマンド4WDは、走る状況に合わせて、もう一方の車輪にも駆動力を伝える仕組み。タイヤの滑りに反応するものもあれば、滑りそうな場面を見越して働くものもあります。
今回は、その切り替え方と、押せば何でも突破できそうな名前の「LOCK」ボタンが実際に何をするのかを、やさしく解説します。
カップリングで、後輪へ渡す力を調整する

Volkswagen DSGの展示。後輪側へ向かう動力取り出しを備える例で、その部分をHaldexカップリング本体と呼んでいません。VW DSG transmission DTMB.jpg — Matti Blume / 出典 / CC BY-SA 3.0
オンデマンド4WDは、主に駆動する側とは別の車軸へ、必要に応じて力を伝える仕組みです。代表的な機械式の構成では、二つの軸の間で回転を渡すカップリングが働きます。板を押す方式なら、エンジンから来る側の板と、後輪へ行く側の板を押し付け、摩擦で回転を渡します。その押す力を変え、前後のつながり具合を調整します。
ただし、「滑ってから初めて四輪になる」とは限りません。電子制御式には、アクセル操作や車の動きなどを見て、滑る前から力を送るものもあります。何をきっかけに、どうつなぐかに注目してみましょう。
強くつなげれば、後輪へ大きなトルクを渡せます。弱めれば前輪主体です。オンとオフだけでなく、渡せる量を細かく変える方式もあります。
多くは、カップリングが前後の回転差も許します。左右の差は、前と後ろにあるデフが担当します。軸の場所はドライブシャフトとプロペラシャフトも参考になります。
ボルトくん
滑るまで、後ろのタイヤは何もしてないの?
ハグルマ先生
駆動力を送るタイミングは方式次第です。滑るのを待たず、先回りして調整するものもありますよ。
回転差感応式は、前後の回転差で働く
回転差感応式は、普段よく使う駆動側と、助けに入る側で、回る速さに違いが出ると働く方式です。その差に応じて、補助側へ力を渡します。「パッシブオンデマンド」という名前もありますが、まずは、前後の回転差に反応する仕組みだと押さえれば大丈夫です。
例えば前輪が滑って速く回ると、後輪との差が増え、後ろへ伝わりやすくなります。装置そのものの性質で働くので、必ずセンサーがスイッチを入れるわけではありません。
回転差を使うものには、ビスカス式のほか、その差で油圧(オイルの圧力)を作りクラッチを押すものもあります。Hondaの1993年のデュアル・ポンプ・システムは、二つのポンプと多板クラッチを使う例です。
パッシブなら全部ビスカス、と覚えず、回転差をどう力へ変えるかを見てみましょう。
ボルトくん
センサーがなくても、滑ったら力が伝わるの?
ハグルマ先生
回る速さの差を、直接利用できるんですよ。油の抵抗や圧力が変わり、補助側へ渡る力が増えます。
ビスカスカップリングはオイルの抵抗を使う

Eagle Talonの後輪デフ用部品の分解写真。二組のプレートの考え方を示す実物例で、Saabの前後カップリングと同じ部品ではありません。Viscous coupling unit2.jpg — Andy Rusho, http://www.zero2blur.com / 出典 / CC BY-SA 3.0
ビスカス式の中は、両側につながる板が交互に並び、その間に粘りの強いシリコーンオイルが入っています。
回転差ができると、板の間の油をずらす抵抗が生まれ、速い側から遅い側へ力が渡ります。この抵抗が「せん断抵抗」です。量は回転差と温度で変わり、いつも完全直結ではありません。
同じビスカスは、デフの回転差を抑えるLSDにも使います。どこへ入るかで仕事が違うので、部品名だけで全体の方式は決まりません。
ボルトくん
油の抵抗で、回転を渡せるんだね!
ハグルマ先生
二つの板の速さが違うと、間の油をずらす抵抗ができるんですよ。その働きでトルクを渡します。
電子制御式は、空転する前にも配分を変える
電子制御式は、車速、アクセル、ハンドルの角度、各輪の回転、車体の動きなどから、つなぐ強さを決めます。使う情報と調整方法は車ごとに違います。
発進前に後輪へ力を用意する、曲がる動きに合わせる、といった調整もできます。滑りを見つけて対応するだけでなく、操作から先を見込めるのが特徴です。
油圧や電磁石の仕組みで、複数の板を押します。ただし配分を無制限に選べるわけではありません。板が受けられる力、歯車、駆動源、地面からの反力が関わります。
後輪へほぼ力を渡さなくても、軸が回り続ける車があります。回転自体を切るディスコネクト機構なら、そのむだも減らせます。トヨタが2018年に発表したダイナミックトルクベクタリングAWDは、その例です。
ボルトくん
後輪に力を送らないときは、軸も止まるの?
ハグルマ先生
回り続けるものもありますよ。回転そのものを切り離す装置があれば、その分の損失も減らせます。
電磁石とカムで、板を押す仕組みの例
ここからは、板を押す仕組みを詳しく見たい人向けの一例です。まずは「電気の指示で板を押す力を変え、後輪へ渡す力を調整する」と分かれば、次のLOCKモードの話へ進めます。

電磁制御カップリングの研究にある断面図です。左が入力、右が車軸への出力。電磁石、一次クラッチ、ボールカム、二次クラッチを組み合わせた例で、全オンデマンド4WDやSUBARU VTDが同じ構造ではありません。https://www.mdpi.com/2227-9717/7/9/557 — Jianbo Feng; Sizhong Chen; Zhiquan Qi; Jiaming Zhong; Zheng Liu / 出典 / CC BY 4.0
下の断面図は、電磁制御カップリングを調べた研究の図です。Input Shaftは力が入る軸、Output to Axleは車軸への出口を表しています。
まずPrimary Clutch Apply Systemの電磁石が、Primary Clutchという一次クラッチを押します。そこからBall-Cam Mechanismへ力を渡します。ボールとカムで、回す方向の力を、板を押す方向へ変える部分です。
その力がSecondary Clutch、二次クラッチを押し、渡すトルクを変えます。油の中に薄い板を重ねた構造です。研究にはさらに別の摩擦部分も登場しますが、ここでは、電磁石→一次クラッチ→カム→主なクラッチ、という板を押す力の流れに注目してください。
これは方式の一例で、全部のオンデマンドが同じではありません。SUBARUのVTD-AWDのセンターデフを描いた図でもありません。電磁石とカムのほか、油圧で板を押す方式もあります。
LOCKモードと過熱警告の注意点
LOCKモードが機械的なデフロックとは限らない
LOCKモードは、クラッチを強くつなぐ制御の名前の場合があります。歯車を完全に固定するデフロックとは、中身と解除する条件が違うことがあります。
速度が上がると通常に戻る、条件によって配分が変わるなど、車ごとに動きが違います。LOCKなら永久に50:50、と考えず、説明書を確認しましょう。
| 仕組み | 制御するもの | 確認する点 |
|---|---|---|
| 電子制御カップリングのLOCKモード | 前後を結ぶクラッチの締結力 | 車速や温度で解除・制限される条件 |
| 機械式のデフロック | 差動装置の左右又は前後の差動 | 固定するデフの位置と使用可能な路面 |
長時間の空転は過熱につながる
回転差があるまま板で伝えると、熱が出ます。ぬかるみで空転し続ければ、装置が熱くなり、保護のため力を減らすことがあります。
警告が出たら、踏み続けて脱出しようとせず、安全な場所で車の指示に従います。待ち方や再走行の条件は車ごとに違います。消えない警告、音、臭いは、販売店や救援先へ相談します。
| 状態 | 関係すること | 取る対応 |
|---|---|---|
| 空転が続く | タイヤの接地・路面・駆動力の配分 | 無理なアクセル操作を続けない |
| 4WDの温度警告や作動制限 | クラッチなどの発熱と保護制御 | 安全な場所で取扱説明書の指示に従う |
ボルトくん
LOCKにすれば、ずっと同じ配分で走れるの?
ハグルマ先生
速度や温度で、通常に戻ることがありますよ。完全な機械ロックとは限らないので、その車の条件を確認しましょう。
センターデフ式や電動4WDとは、どこが違う?

2はビスカスカップリングです。前後の回転差に応じて抵抗する部品で、歯車式のセンターデフとは区別して見てください。Visco-clutch in car transmission.svg — Tryphon / 出典 / Public domain
センターデフ式は、歯車で前後へ分け、回転差を許します。カップリング主体のオンデマンドは、主駆動側から補助側へ渡す量を変えるのが基本です。
電動4WDも、必要なときに補助側を増やせます。ただ、独立したモーターで回す車には、前後のカップリングがないものがあります。ねらいが似ても、通り道は違います。
分かりにくいときは、力を分ける装置と、その働きを変える制御を別に見ます。4WDの種類と特徴で、各方式を比べています。
ボルトくん
必要なときだけ後ろを回すなら、電動も同じなの?
ハグルマ先生
制御のねらいは似ることがありますよ。でも、モーターで作る力と、カップリングで渡す力では、道が違います。
渡せる力と、実際に渡る力は別
板を強く押しても、その瞬間のトルクが表示どおりとは限りません。変えるのは、渡せる能力です。実際の量は、駆動源、地面の反力、回転差にも左右されます。
大きな力を回転差付きで長く渡せば、熱の負担が増えます。制御が弱めるのは、故障だけでなく、保護のための場合もあります。
ボルトくん
画面が50:50なら、力もぴったり半分なの?
ハグルマ先生
表示は、指令や計算値の場合もありますよ。どれくらい渡せるかと、路面で実際に受け持つ量は分けて読みましょう。
よくある疑問
オンデマンドは必ず滑ってから四輪駆動?
電子制御式には、発進や操作から先を見込み、滑る前に後輪へ力を渡すものがあります。
ビスカスは電子制御クラッチ?
普通のビスカスは、回転差による油の抵抗を使います。センサーの指令で板を押す電子制御式とは別です。
LOCK表示は機械的なデフロック?
必ず機械ロックではありません。板の伝達を強めるモードもあるので、速度や温度による解除条件を確認します。
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