タイヤの溝が残っていれば、まだ使えるのでしょうか?減り具合だけでなく、傷や変形、使ってきた時間も関係します。「あと何年いける?」と決める前に、確認するポイントを見ていきましょう。
1.6mmは使用限度で、雨の日の安心を保証する値ではない
タイヤは、溝のあるゴムだけでなく、中に繊維や金属の糸状の補強材(コード)などを組み合わせた部品です。電線という意味ではありません。走るほど表面は摩耗し、年数や使われ方によっても状態が変わります。溝の深さだけでは、内部や材料の状態までは分かりません。
交換を考えるときは、摩耗の目印、ひび割れ、傷、膨らみ、使用年数などを合わせて見ます。数字の目安は、そこまで使える保証ではありません。異常があれば、その年数を待たずに点検が必要です。
スリップサインは、どこに出るの?

スタッドレスタイヤの実物にある摩耗表示。一般のスリップサインと、冬用の使用限度を示すプラットホームは別の表示なので、実物の説明で区別します。Tread Wear Indicators of Studless Tire.jpg — VVVN / 出典 / CC BY 3.0
溝の底には、少し盛り上がった部分があります。タイヤが減って、表面とその盛り上がりが同じ高さになると、溝が途切れたように見えます。これがスリップサインです。残り溝が約1.6mmになり、使用限度に達した目印なんですね。
日本自動車タイヤ協会(JATMA)は、限度に達する前の交換を案内しています。スリップサインが一か所でも出たら、そのタイヤは交換が必要です。「ちょうど1.6mmだから、まだ余裕!」とは考えず、使い続けないでください。
側面の三角マークなどを手がかりに、メーカーが示す場所を探します。タイヤの各部分の名前は、タイヤの各部の名称と構造も参考になります。
法律の1.6mmは、どの溝で見るの?
国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」第167条は、対象となる滑り止めの溝に、1.6mm以上の深さを求めています。一般的な乗用車では、路面に接する部分の幅全体にわたって、対象の溝を見ます。細かな切れ込みや、摩耗を示す盛り上がりなどは、この測定には含めません。
日本のこの基準では、「真ん中の4分の3に溝があればOK」とは言えません。中央に残っていても、内側や外側の対象の溝が減っていることがあります。また、この告示には、大きな破損がないことや、空気圧が適正なことも定められています。
スリップサインが出る前でも、雨には注意が必要?
溝は、タイヤと路面の間の水を逃がすためにあります。減ると、雨の日の性能が落ちやすくなります。水の上に浮いたようになり、ハンドルやブレーキが効きにくくなる「ハイドロプレーニング」の危険も高まります。
JAFの雨天時のスリップ事故に関する解説は、摩耗したタイヤほど、濡れた道で止まる距離が長くなる傾向を紹介しています。ただし速度、水の量、タイヤの種類でも変わります。「何mmあれば、どんな雨でも安全」という数字はありません。
雨や高速道路で走ることが多いなら、限度まで待たず、店で溝を測って交換時期を相談しましょう。溝があっても、雨の日は速度を落とし、十分な車間を取ります。ABSがあっても、タイヤと道の摩擦の限界は超えられません。
ボルトくん
溝が深ければ、新品みたいなものじゃないの?
ハグルマ先生
古さや傷み方も関係します。使っていなくても時間は経ちますから、溝以外の状態も確かめるんですよ。
溝や年数より先に、膨らみ・深い傷・偏摩耗を確認する
まずは、タイヤの外側に膨らみや深い傷がないかを見ます。溝が残っていても、中の構造まで傷んでいれば安心できません。次の五つを合わせて確認しましょう。年数と溝の深さだけで、タイヤの健康診断を終わらせないわけです。
- 残り溝:スリップサインに達していないか。内側・中央・外側で偏った減り方をしていないか。
- 損傷:側面の膨らみ、深い傷、コードの露出、空気漏れがないか。
- 経年変化:使用開始時期と製造年週を把握しているか。ひび割れやゴムの状態はどうか。
- 走行中の変化:振動、異音、空気圧の繰り返し低下などがないか。
- 季節への適合:冬用タイヤなら、冬用として使える溝と状態が残っているか。
膨らみ、中のコードが見える傷、明らかな空気漏れがあるなら、走り続けないでください。走行中に異常を感じたら、急な操作を避けて安全に停め、販売店やロードサービスへ相談します。深刻な傷みが疑われるときは、自分で店まで運転していこうとしないでください。
側面が膨らんでいたら、まだ走れる?
縁石や段差に強く当たると、中のコードが傷む場合があります。側面が外へ膨らむのは、その兆候です。溝があっても走行を続けず、専門店へ相談しましょう。
コードまで届く傷やひび割れ、コードの露出、はがれなども、使い続けられない損傷です。表面だけのひびか、中まで届いた傷かは、写真だけでは分からないことがあります。「少しだから大丈夫」と決めず、深さ、広がり、使用状況を点検してもらいます。ブリヂストンのパンク時の案内も、傷と修理できる条件の参考になります。
| 状態 | 確認する意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 側面の膨らみ | 内部構造が傷んでいる可能性 | 使用を続けず、安全に止めて相談 |
| 一本だけ空気が減る | タイヤ、バルブ、ホイールなどからの漏れ | 補充だけで済ませず、漏れの場所を点検 |
| 溝は残るがひび・損傷がある | 摩耗とは別の劣化や損傷 | 指定された条件で点検し、交換を判断 |

ホイールへ組み付けた乗用車用タイヤの側面にできた局所的な膨らみ。写真だけで発生原因や車種は確定できません。溝が残っていても、こうした膨らみがあれば無理に走らず点検・交換を相談します。File:Tire bubble.jpg — Osnetwork / 出典 / CC BY-SA 3.0
片側だけ減っていたら、タイヤを替えれば直る?

空気圧不足のトレーラー用タイヤの例。すべての偏摩耗が空気圧だけで起こるわけではなく、足まわりなども確認します。Tire Severe Under Inflation Wear.jpg — Christopher Ziemnowicz (CZmarlin) / 出典 / Public domain
内側だけ、中央だけ、両端だけ、あるいは波打つように減る。こうした偏った減り方を「偏摩耗」と呼びます。空気圧、タイヤの向き、足回り、使い方などが関わります。
交換が必要なら替えますが、原因が残ると、新品も同じように減るかもしれません。空気圧と一緒に、必要ならホイールアライメントや足回りも調べてもらいましょう。減り方の形だけで、原因を一つには決められません。
一本だけ空気が減るのは、タイヤの寿命?
一本だけ早く減圧するなら、タイヤのほか、バルブやホイールとのつなぎ目も候補になります。足すだけで済ませず、漏れた場所を調べます。振動や音も、タイヤ、ホイール、足回りなどに原因があるので、交換が必要かを含めて診断します。
ボルトくん
新品にしたら、片側だけ減るのも直るんじゃないの?
ハグルマ先生
空気圧や角度、足回りの原因が残っていれば、新品も同じように減るんです。交換と一緒に、原因も見てもらいましょう。
使用開始5年は点検、製造後10年は交換推奨の目安
タイヤは、ゴムなどいくつもの材料でできています。走り方や保管場所で状態が変わるので、走行距離が少なくても、時間による傷みは考える必要があります。
ブリヂストンの長期経過タイヤの案内は、次のような点検と交換の目安を示しています。
- 使用開始から5年以上:継続使用できるか、タイヤ販売店などで点検を受ける。
- 製造から10年:外観や残り溝が使用できそうに見えても、スペアタイヤを含め、新品への交換を推奨。
5年は「使い始めてから」、10年は「作られてから」数えます。しかも、5年は点検の目安、10年は交換推奨です。法律で決まった共通の期限でも、そこまで使える保証でもありません。傷、摩耗、劣化があれば、それより早く交換します。車やタイヤのメーカーに別の指定があれば、それも確認してください。
いつ製造されたかは、どこで分かるの?

表示写真。右側の3511は、2011年の第35週を示します。Date Codeは製造年週という意味で、購入日や使用開始日とは別です。DOT tire code.jpg — Chrismeraz / 出典 / CC BY-SA 4.0
2000年以降に作られた一般的なタイヤは、製造番号の最後の4桁を見ます。前の2桁が週、後ろの2桁が年です。「2524」なら、2024年の第25週に作られたということです。
表示が内側にあって見えないこともあります。確認のために下へ潜ったり、慣れないジャッキアップをしたりせず、店で見てもらいましょう。買った日と取り付けた日を記録しておくと、使い始めからの期間も分かります。
ボルトくん
買ってから10年は使える、って意味じゃないんだね!
ハグルマ先生
10年は製造から数える交換推奨の目安なんです。そこまで使える保証ではないので、傷や劣化があれば、もっと早く対応しますよ。
冬用タイヤは、プラットホームも確認する
冬用タイヤには、スリップサインのほかに、冬用としての限度を知らせる「プラットホーム」もあります。一般的なスタッドレスでは、新品の溝が約半分になると、この目印が表面に現れます。
JATMAの冬用タイヤの案内は、雪道や凍った道で使う溝の限度を、新品時の50%としています。プラットホームが出たら、冬用として使うには交換が必要です。スリップサインが出ていないから、まだ雪道に使えるとは限りません。
新品の溝の深さは製品で違うので、「冬用は3mmまで」「4mmあれば大丈夫」と共通には決められません。プラットホームのない製品もあります。目印の位置と点検方法は、メーカーの案内を確認しましょう。
溝と一緒に、ゴムの状態、傷、年数も見ます。雪道用として気になるなら、冬の前に販売店で点検してもらいましょう。雪や凍結の装備・通行規制にも従います。チェーンを求める規制では、冬用タイヤにもチェーンが必要です。
ボルトくん
スリップサインがなければ、次の冬も使えるの?
ハグルマ先生
冬用としての限度は別なんですよ。プラットホーム、ゴムの状態、年数も合わせて点検してくださいね。
自分で見る部分と、店で測ってもらう部分
溝は、どこを何か所見ればいいの?
点検は、平らで安全な場所に停め、駐車ブレーキをかけて行います。溝深さゲージを使い、摩耗表示の盛り上がりを避けて測ります。一か所だけでなく、内側・中央・外側の対象の溝を、タイヤの一周の中でも何か所か見ましょう。
硬貨を差した見た目だけでは、1.6mmや偏摩耗を正確に判定できません。奥や地面に接した部分は、店で測ってもらいます。車を動かす前には、手と道具を完全に離し、周りに人がいないことを確認してください。
空気圧は、いつ測るの?
空気圧は、見た目で決めず、走行前などの冷えた状態でゲージを使います。ブリヂストンの使用上の注意は、少なくとも月に一度の点検を案内しています。長距離の前も見て、車の指定に合わせましょう。
サイズや規格を変えると、必要な圧力が変わる場合があります。タイヤ側面の数字を、全車に使える指定値だとは考えないでください。確認する場所と測り方は、タイヤの空気圧チェックの基本で解説しています。
タイヤの位置を入れ替えるローテーションは、車とタイヤの指定に従います。前後でサイズが違う、回転方向が決まっている場合などは、組み方に制限があります。傷んだタイヤを、位置だけ変えて長く使うことはできません。

バルブへ空気圧ゲージをつないだ実例。測定値の単位を確認し、自分の車の冷間時の指定圧と比較します。ReifendruckPruefen.jpg — JEG14 / 出典 / Public domain
ボルトくん
内側が見えないから、下に入って測ってみようかな。
ハグルマ先生
無理に車の下へ入らず、見えにくい所は店で測ってもらいましょう。動かす前には、手や道具を離して周りを確認してくださいね。
交換する本数と仕様は、車両の指定に合わせる
- 車両への適合:指定サイズ、荷重を支える能力、速度に関する指定、ホイールへの適合。
- 使用環境:夏用・冬用などの用途、雨や雪の多さ、走る道路。
- 組み合わせ:前後・左右のサイズや銘柄、残り溝の差について、車両メーカーの指定に合うか。
- 特殊な仕様:ランフラットタイヤ、空気圧監視装置、4WDなど、交換方法や組み合わせに条件がないか。
特に4WDでは、タイヤの外径や減り方の差に条件がある場合があります。国土交通省は、違うタイヤなどが動力を伝える装置に負担をかけ、車両火災につながる例を注意しています。一本が傷んだから同じサイズを一本買う、とすぐ決めず、残りも測り、車の指定に合う交換本数を相談しましょう。
ランフラットでも、傷や空気圧を気にせず走れるわけではありません。空気圧が下がったときの速度と距離の制限、その後に修理できるかは、車と製品の指定に従います。
ボルトくん
一本だけパンクしたら、同じサイズを一本替えればいいよね?
ハグルマ先生
ほかのタイヤとの外径差や摩耗差に、条件がある車もあるんです。サイズだけで決めず、残りの状態と車の指定を見て、本数を相談しましょう。
タイヤ交換のよくある疑問
何万km走ったら交換するの?
種類、車の重さ、空気圧、道、運転、整備で違うので、共通の距離では決まりません。走行距離を点検のきっかけにし、実際の溝、傷、使用年数で判断します。
車検に通ったら、次の車検まで使えるの?
車検で見た状態が、その後もずっと続くわけではありません。走れば減りますし、傷も起きます。車検と車検の間も点検を続けてください。
パンクしたら、必ず新品に替えるの?
穴の位置と大きさ、中の傷み、低い圧力で走った距離によります。修理できることもありますが、外から穴を見るだけでは決められません。空気が抜けたまま走らず、専門店で確認してもらいましょう。
新品に替えると、燃費もよくなるの?
必ずよくなるとは言えません。燃費は設計、圧力、車、走行条件でも変わります。「減ったタイヤは必ず転がる抵抗が大きい」と決めず、安全性と適合を優先します。
ボルトくん
車検で何も言われなかったら、しばらく点検しなくていいと思ってたよ。
ハグルマ先生
車検は、そのときの状態を確認したものなんです。その後の摩耗や傷は別なので、間の点検も続けてくださいね。
新品を選ぶ前に、減り方の原因を確認する
交換店には、偏った減り方、一本だけ空気が減ること、傷や振動、使い始めた時期を伝えましょう。新品選びと一緒に、車側に原因が残っていないかも確かめます。
関連記事
タイヤの構造と各部の名称|サイズ表示の見方と役割/タイヤの空気圧の測り方|適正値の確認と点検時期/ホイールアライメントとは?トー・キャンバー・キャスターの違い
参考資料
- 国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」第167条
- 日本自動車タイヤ協会(JATMA)
- JAFの雨天時のスリップ事故に関する解説
- ブリヂストンのパンク時の案内
- ブリヂストンの長期経過タイヤの案内
- JATMAの冬用タイヤの案内
- ブリヂストンの使用上の注意
- 国土交通省「道路運送車両の保安基準」現行一覧(2026年3月31日現在)
- 国土交通省「チェーン規制について」
- JATMA「第2部 自動車用タイヤの使用基準」
- ブリヂストン「タイヤの点検・整備」
- ブリヂストン「ランフラットテクノロジー採用タイヤ」
- 国土交通省中国地方整備局「冬用タイヤの装着・タイヤチェーンの携行を!」
- 国土交通省「タイヤ交換に注意!四輪駆動車(4WD)で車両火災が発生」
- TOYO TIRES「タイヤのローテーションとは」
- 日本ミシュラン:タイヤの製造年週の読み方




