車が必要としている液体は、ガソリンだけではありません。中ではオイルや冷却水などが、それぞれ違う仕事をしています。燃料だけ満タンにして「あとはよろしく」では、さすがに面倒を見きれません。
しかも、減ったら補充すればよいものばかりではなく、量の減り方が不具合のサインになるものもあります。とりあえず何か注いでおく、という料理のような対応は禁物です。
今回は、エンジンオイル・冷却水・ブレーキ液・変速機のオイル・ウォッシャー液の役割と、安全に点検するためのポイントをやさしく解説します。
ボンネットを開ける前に、車を安全に停める
車の液体には、金属同士のこすれを減らすオイル、熱を運ぶ冷却水、ブレーキの力を伝える液体などがあります。似た容器に入っていても、役割や使える製品は違います。
点検する場所、量を読む条件、補充してよいかも、液体と車種で変わります。熱いときに開けてはいけない場所もあります。まず容器を特定し、その車の説明書にある点検条件と指定を確認しましょう。
熱い部品、ファン、ベルトには触らず、ボンネットが確実に支えられているかを確認します。液の色や容器の形だけで決めず、説明書とキャップの表示を見てください。ラジエーターや冷却水タンクが熱いときは、絶対にキャップを開けません。
ボルトくん
足りない容器へ、とりあえず水を入れちゃダメなの?
ハグルマ先生
水で代用できないものがありますし、減った原因の点検が必要な場合もあります。中身と指定を確かめてからですよ。
エンジンオイルは、指定の条件で量を測る

引き抜いたレベルゲージの実物例。上下限の位置、測る温度と停止後の待ち時間は、その車の説明書で確認します。Engine oil dipstick reading level.JPG — Dvortygirl / 出典 / CC BY-SA 3.0
エンジンオイルは、金属同士が直接こすれるのを減らすほか、熱や汚れを運ぶ仕事もしています。少なければ困りますが、多ければ安心というものでもありません。まずは、指定された条件で量を確かめることから始めましょう。詳しい働きは、エンジンオイルとオイルポンプの記事でも説明しています。
レベルゲージは、オイルの中へ差し込まれた細い棒です。引き抜いて、先端に付いたオイルがどの目盛りまであるかを読みます。場所と測る条件は、その車の説明書で確認しましょう。
ゲージがある車は、指定の油温と、止めてから待つ時間を守ります。ゲージを抜いて拭き、奥まで差し直してから、液面が上下限の間かを読みます。上限を超えて足さないようにしましょう。電子表示で確認する車は、画面の案内に従います。
足すオイルは、そのエンジンが指定する粘度や品質規格に合うものです。短期間で大きく減るなら、外へ漏れているのか、エンジン内で消費しているのか、原因を調べます。走行中に油圧警告が出たら、安全に停めてエンジンを止め、販売店などへ相談してください。
エンジンオイルの圧力警告は、単に「量が減りました」というお知らせではありません。量があっても、必要な油圧が出ていない可能性があります。液を足してランプを消そうとせず、その警告の停止・点検の指示を守ってください。
ボルトくん
ゲージを抜いたら、すぐ量が分かるんじゃないの?
ハグルマ先生
油温や、止めてから待つ時間に指定があるんですよ。ゲージは一度拭いて、奥まで入れ直してから読みます。電子表示なら、その案内に従ってくださいね。
冷却水は、十分に冷えてからタンクの外側を見る
冷却水は、十分に冷えてから、指定されたリザーバータンクの外側を見ます。液面が上下限の範囲にあるか確認してください。暖まると液面が変わるので、なるべく毎回同じ条件で見ると、前回との違いが分かりやすくなります。
足し方と、使えるクーラントの種類・濃さは車によって違います。同じ色なら混ぜられる、とは限りません。すでに薄めてある製品をさらに薄めたり、正体の分からない液を混ぜたりしないでください。種類や手順が分からなければ、整備工場へ相談します。
何度も減る、漏れた跡がある、水温の警告が出るなら、継ぎ足しだけで済ませず点検が必要です。流れの仕組みはラジエーターの解説で確認できます。

2023年米国仕様Subaru Outbackの例。写真手前の半透明の容器が冷却水のリザーバータンクです。付近のラジエーターキャップや写真右側の黄色いウォッシャー注入口とは別に確認します。2023 Subaru Outback Limited 2.5 liter 4 cyl engine bay.jpg — Colin Venable / 出典 / CC0
ボルトくん
ちょっと減るたびに足しておけば、問題ないの?
ハグルマ先生
何度も減るなら、漏れなどを調べる必要があるんです。足すだけで済ませず、漏れ跡や水温の警告も伝えて点検してもらいましょう。
ブレーキフルードは、減った理由と警告を確認する

Škoda Fabia Iのリザーバータンク。側面には液量を確認するMIN・MAXの目印があり、その下にマスターシリンダーがあります。Brake fluid reservoir in Škoda Fabia I.jpg — Frettie / 出典 / CC BY 3.0
ブレーキフルードは、ペダルを踏む力を油圧で伝える液です。普段の量の確認はキャップを開けず、タンクの外側から上下限を見ます。油圧ブレーキの仕組みを読むと、この液がなぜ大切かも分かります。
パッドが薄くなると、その分だけ車輪側のピストンが進んだ位置になります。車輪側へ移る液の量が増えて、タンクの液面が下がることがあるんです。
ブレーキパッドが減ると液面も下がる場合があります。ただ、見ただけではパッドの摩耗なのか、液漏れなのかは分かりません。下限より少ない、急に減った、ブレーキ警告が出た、ペダルの感触や効きが変わった場合は、走らず点検を依頼してください。
理由を調べず満杯まで足すのは避けます。液は指定の規格と製品に合う必要があり、DOTの数字が大きいから上位互換、とは言えません。水分や異物を入れない管理も必要なので、交換やエア抜きは整備工場に頼むのが確実です。
ボルトくん
ブレーキ液が下がったら、満杯まで足せばいいの?
ハグルマ先生
パッドが減って下がることもありますが、漏れかもしれません。下限より少ない、急に減った、警告や効きの変化があるときは、走らず点検を頼んでくださいね。
ミッションの油は、その車の点検手順に合わせる
MTのギヤオイル、ATF、CVTフルードなどは、変速機の構造に合うよう、それぞれ違う仕様で作られています。部品を滑らかに動かすだけでなく、形式によっては油圧で動かす、力を伝える、冷やす働きもあります。色や粘りが似ていても代用はできません。Hondaのフルード案内も、使える車を製品ごとに分けています。
ゲージのある車でも、油温、エンジンが動いているか、シフトをどう操作するかなどの条件が違います。ZFの点検資料も、車両メーカーの手順を確認し、診断機などを使う場合があると説明しています。
一般的な手順を見て、注入口を開けたり指を入れたりしないでください。下での作業には、車の落下や熱い油の危険があります。ジャッキだけで支えた車の下には絶対に入りません。普段は駐車場所の漏れ跡、変速の違和感、警告を見て、量の測定や交換時期は整備工場へ相談しましょう。
ボルトくん
ミッションの油も、口を開けてのぞけば分かるの?
ハグルマ先生
温度や作動状態など、専用の条件で測る車が多いんです。自己流で開けず、整備工場へ相談してくださいね。ジャッキだけの車の下にも入らないでください。

2010年式マツダ3の2.0Lエンジン搭載車です。写真奥のブレーキ液タンクの左下付近に、小さなATF点検用の取っ手が見えます。中央の大きな黄色い輪はエンジンオイル用です。ATFの点検条件は車種ごとに違い、この車の手順を他車へそのまま当てはめることはできません。2010 Mazda 3 2.0L engine.jpg — Amakuha / 出典 / CC BY-SA 4.0
ウォッシャー液は、量と使う地域の気温を確かめる

ウォッシャー液の補充作業。容器の色だけで液の種類を判断せず、表示と実車の指定補充口を照合します。Man pouring windshield washer fluid.jpg — Hamedog at English Wikipedia / 出典 / CC BY-SA 3.0
ウォッシャー液は、ガラスの汚れを洗うための液です。量を見る方法は、タンクの外側やキャップのゲージなど、車によって違います。足す前にウォッシャーのマークを確認し、冷却水などの別のタンクへ入れないようにします。
使う場所の気温に合う製品と濃さを選びます。寒い地域へ出かけるなら、今入っている液が何度で凍るかも確認してください。原液で使うか薄めるかは製品の表示に従い、「水だけでいい」とは考えないようにします。違う種類を混ぜるときも、注意書きを確認しましょう。
ボルトくん
寒い所に行く前は、ウォッシャー液も見ておくの?
ハグルマ先生
今の液が、その気温で凍らないかを確認しますよ。製品の表示どおりに種類と濃さを選び、補給口も間違えないでくださいね。
色が似た液体でも、代わりにはならない
冷却水やウォッシャー液には、色が付いたものがあります。でも、その色で性能や成分が統一されているわけではありません。同じ色でも別の種類がありますし、違う色でも、見た目だけでは混ぜてよいか決められません。
まず、説明書の部品名とキャップの表示で、どの容器かを確認します。次に、使う液の規格、濃さ、条件を調べます。ブレーキ液のDOTも規格の表示であって、「数字が大きいほど何にでも使える」という意味ではありません。Hondaの案内も、指定品が合うかを確認する内容です。
ボルトくん
同じ青い液なら、空いてるタンクに入れていいの?
ハグルマ先生
色だけでは、何の液か分からないんですよ。入れる口と製品の表示を確かめ、指定が分からなければ足さずに確認しましょう。
よくある疑問
減っていたら上限まで足せば直る?
足すだけでは直らないこともあります。漏れ、エンジン内での消費、ブレーキの摩耗など、減った理由を調べます。警告や急な減り方があれば、補充で済ませないでください。
ATFは誰でもゲージで確認できる?
ゲージがない車もありますし、油温、エンジンの状態、シフト操作にも指定があります。ほかの車の一般的な点検方法を、そのまま流用することはできません。
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