【ガソリンって何?】製造プロセスからハイオク・レギュラーの違いまで徹底解説!

【ガソリンって何?】製造プロセスからハイオク・レギュラーの違いまで徹底解説! エンジン

車のエンジンにはガソリンをはじめとして、数種類の燃料が使われています。私たちは当たり前のようにガソリンスタンドで給油しますが、どのようにしてガソリンは生れるのでしょうか?本稿では車に使われる燃料がどのようにして製造されるのかについて解説していきます。

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燃料とは何か?

燃料とは、物理的なエネルギーを供給するために使用される物質のことを指します。内燃機関を搭載した自動車に使われている燃料は全て石油(原油)からできており、ほとんどが液体燃料です。一部タクシーなどではLPGと呼ばれる気体燃料も使われます。

原油の採掘

【ガソリンって何?】製造プロセスからハイオク・レギュラーの違いまで徹底解説!

原油の採掘は、地下に存在する原油を地上に取り出す作業です。原油は、数百万年にわたって地下の地層で形成された天然の石油であり、主に海底や陸地の下に存在しています。原油は石油産出国や石油メジャー(大手石油会社)によって採掘・生産され、世界中でエネルギーの主要な供給源として利用されています。

調査と探査

原油の採掘は地下の油田を発見することから始まります。地質学的な調査や地震探査などの技術を用いて、原油が存在する可能性が高い地域を特定します。

井戸掘削

井戸掘削を行い、地下の原油層に到達します。掘削には専用の掘削機や設備が使用されます。掘削は非常に複雑で高度な技術を要する作業であり、深い地層に到達するために数千メートル以上の井戸を掘削する場合もあります。

原油の採取

掘削井戸から原油が湧き出てくることがあれば、そのまま自然に原油を採取することができますが、多くの場合はポンプを使用して地上に引き上げます。原油が高圧である場合は、地上まで勢いよく湧き出すこともあります。

生産と処理

採掘された原油は、地上の生産施設に送られます。ここでは原油の品質や量を測定し、必要な場合には精製工程に送る前に一時的な処理が行われます。原油は多くの場合、輸送の便宜を図るためにパイプラインで精製所や輸送施設に送られます。

輸送

原油は輸送手段(船舶、トラック、パイプラインなど)を利用して精製所や石油製品の需要地に輸送されます。

精製

到着した原油は精製所でさらなる処理を受け、異なる種類の石油製品(ガソリン、軽油、ジェット燃料、灯油など)に変換されます。

原油の蒸留精製

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原油の蒸留精製は、原油から石油製品を得るための一連のプロセスです。原油は地下から採掘された後、石油製品(ガソリン、軽油、重油、ジェット燃料、灯油など)に変換するために精製が行われます。蒸留精製は原油の物理的特性に基づいて行われる方法であり、石油製品を異なる沸点範囲の成分に分離することができます。

原油の蒸留精製の主な手順

  1. フィーディング: 原油はタンクから蒸留塔に送られます。蒸留塔は鉄鋼製の高さ数十メートルにも及ぶ円筒形の装置であり、内部には数段に分かれたトレイやパッキング(充填物)が設置されています。
  2. 加熱: 原油が蒸留塔に投入される前に、予熱されます。この加熱によって原油が高温になり、蒸留塔内での分離が可能になります。
  3. 蒸留: 加熱された原油が蒸留塔の底部に入ってきます。蒸留塔内上に行くほど温度が低くなるように制御されており、入ってきた石油蒸気を沸点の低いものから順に分けています。軽い成分(低沸点成分)は蒸発しやすく、蒸留塔の上部で液体からガス状に変わって上昇します。一方、重い成分(高沸点成分)は蒸発しにくく、蒸留塔の下部で液体のままとなります。

    沸点40℃~200℃でガソリンなどが、125℃~265℃で灯油、250℃~350℃で軽油が留出され、蒸留塔に残ったものが重油やアスファルトになります。
  4. 冷却: 蒸発した成分は蒸留塔の上部で冷却され、再び液体として収集されます。これにより、ガソリン、軽油、重油などの異なる石油製品が得られます。
  5. 収集: 冷却された石油製品は、トレイやパッキングを通って下部に収集タンクに収集されます。収集タンクには各成分がそれぞれ集められ、石油製品として保管・輸送される準備が整います。

このようにして原油の蒸留精製は行われますが、単一の蒸留だけで石油製品のニーズを満たすことは難しい場合もあります。そのため、石油精製所では蒸留に加えて、クラッキング(分解)、重合、補機などの追加プロセスが実施され、より多様な石油製品の供給が行われています。これによって、私たちの日常生活で使われているさまざまな石油製品が提供されているのです。

車に使われる燃料の種類と特性

ガソリン

【ガソリンって何?】製造プロセスからハイオク・レギュラーの違いまで徹底解説!

特性

  • 高エネルギー密度を持つ。
  • オクタン価が高く、効率的な燃焼が可能。
  • 自己着火性が低く、エンジンの制御が容易。

使用車種

一般の乗用車、オートバイ、軽自動車など。

軽油(ディーゼル燃料)

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特性

  • ガソリンよりも高いエネルギー密度を持つ。
  • オクタン価が低いため、ノッキングが起きにくい。
  • 自己着火性が高く、高圧下での燃焼が行われる。

使用車種

トラック、バス、商用車、一部の乗用車など。

LPG(液化石油ガス)

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LPGは原油からガソリンや軽油などを蒸留精製する際にできる副産物であるガスを液化したものです。このLPGは常温・常圧の際は気体ですが、高圧をかけると液化する特性があります。そんなLPGは、経済性や環境への配慮からタクシー産業において広く利用されています。

ガソリンの種類

ガソリンは、その製造方法や成分の違いによっていくつかの種類に分けることができます。以下に、代表的なガソリンの種類について解説します。

直留ガソリン

直留ガソリンは、原油の蒸留精製過程で得られるガソリンの一つです。石油精製所で原油を加熱し、蒸発する温度範囲で得られる成分を分取して作られます。直留ガソリンは他のガソリン種と比較して比較的シンプルな組成を持ちますが、オクタン価が低く、ノッキングの傾向があるため、改質などの処理を行って性能を向上させることがあります。

天然ガソリン

天然ガソリンは、天然ガス田から採取された天然ガスから抽出されるガソリンです。天然ガス中には液化石油ガス(LPG)成分も含まれるため、それを分離して利用することがあります。天然ガス中に含まれるエタン、プロパン、ブタンなどを抽出・分離して作られた天然ガソリンは、直留ガソリンと比較してオクタン価が高く、良質なガソリンとされています。

改質ガソリン

改質ガソリンは、直留ガソリンや天然ガソリンなどの成分に改質処理を施したガソリンです。改質とは、ガソリンの成分を変化させることで、オクタン価を向上させ、環境への影響を減らすことを目的としています。

これらのガソリンにはメリット・デメリットがあるため、市販されているガソリンにはこれらのガソリンを混ぜて作った、調合ガソリンが用いられています。また、品質向上を図るために、さらにオクタン価向上剤や清浄剤などの添加剤が加えられています。

オクタン価とは何か?

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オクタン価は、ガソリンなどの燃料の抵抗性を示す指標であり、燃料がエンジン内でノッキング(異常燃焼)を起こしにくいかどうかを評価するために用いられます。

ノッキングとは、燃料が圧縮空気と混合されてエンジン内で燃焼する際に、燃料自体が圧縮されて自然着火することを指します。ノッキングが発生すると、燃焼のタイミングが制御できなくなり、エンジンの性能や効率が低下します。また、ノッキングによってエンジンの部品に負担がかかり、故障の原因となる可能性もあります。

オクタン価は数値で表され、通常ガソリンは80から100以上の範囲で評価されます。オクタン価が高いほど、ガソリンはノッキングに対して抵抗力が強くなります。したがって、高オクタン価のガソリンは高圧縮比エンジンで効率的な燃焼を実現するのに適しています。低オクタン価のガソリンは、低圧縮比エンジンなどの一部の車両に使用されますが、高圧縮比エンジンではノッキングのリスクが高くなるため避けられます。

燃料のオクタン価は、エンジンの性能や燃費に影響を与える重要な要素であり、石油精製においてもガソリンの品質向上に向けて重要な指標となっています。

ハイオクとレギュラーの違い

一般的に「ハイオク」と呼ばれるものは高(ハイ)オクタン価のもので、オクタン価が通常90以上です。一方、レギュラーガソリンは低オクタン価のガソリンで、オクタン価が通常85から87程度のものをさします。

この記事を書いた人
自動車ライター
YOSHIKI

1999年 東京生まれ。幼少期を自動車大国アメリカで過ごし、車に興味を持つ。レンタカー屋やBMW正規ディーラーを経て都内高級中古車ディーラーに勤務。愛車はGR スープラ RZ。

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