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ディーゼルエンジンはなぜ火花なしで燃える?圧縮着火の仕組み

AGCO Sisu Power 49 AWI diesel engine cutaway.JPG

ガソリンエンジンは、小さな火花を飛ばして燃料に火をつけます。ところがディーゼルエンジンは、その火花なしで燃えています。着火係がいないのに燃え始めるなんて、台所で起きたら普通に事件です。

ディーゼルが使うのは、空気を強く押し縮めると熱くなる性質。その熱で燃料を燃やす「圧縮着火」の仕組みを、順番に見ていきましょう。

アイキャッチ:4気筒ディーゼルエンジンの断面展示。写真はAGCO Sisu Powerの産業用エンジンです。
Tommi Nummelin / 出典 / CC BY-SA 3.0(一部加工)

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ディーゼルは、押し縮めて熱くした空気で燃料に火をつける

小型ディーゼルのシリンダーヘッドの例。写真は副燃焼室を使う方式で、直接噴射する方式とは構造が異なります。
小型ディーゼルのシリンダーヘッドの例。写真は副燃焼室を使う方式で、直接噴射する方式とは構造が異なります。
Dana60Cummins / 出典 / CC BY-SA 3.0(一部加工)

ディーゼルエンジンは、強く圧縮して熱くした空気へ燃料を噴き込み、その熱で着火させるエンジンです。一般的な自動車では軽油を使います。ガソリンエンジンのように、スパークプラグの火花で燃やし始める方式とは違います。

空気を短い時間で押し縮めると、押すために加えたエネルギーで温度が上がります。自転車の空気入れを続けて動かすと熱くなるのにも、空気の圧縮が関わっています。ディーゼルは、エンジンの中でこの温度上昇を利用します。

ここで空気を押し縮めるのが、筒の中を動くピストンです。どれくらい小さく縮めるかを表す数字が圧縮比。燃料を燃やせる温度になるように空気を圧縮することが、火花なしで動くための土台です。[1]

ボルトくん

金属同士をこすって、火をおこしてるわけじゃないんだ。

ハグルマ先生

摩擦で火花を作るのではありません。空気を押し縮めるときの温度上昇を使って、燃料に火をつけます。
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空気を入れる、縮める、そこへ燃料を噴く

コモンレール式ディーゼル用インジェクターの実物例。燃料を細かく噴く部品です。
コモンレール式ディーゼル用インジェクターの実物例。燃料を細かく噴く部品です。
Panoha / 出典 / CC BY-SA 3.0(一部加工)

一般的な4ストロークのディーゼルで、動きを追ってみましょう。まず空気を取り込み、ピストンが上がって空気を押し縮めます。この段階では、燃やすための燃料はまだ噴いていません。

十分に熱くなった空気へ、燃料を細かく噴く部品の「インジェクター」が軽油を送り込みます。燃料は熱い空気と混ざって着火し、燃焼で生まれる圧力がピストンを押し下げます。最後に燃えた後のガスを外へ出し、同じ動きを繰り返します。[1]

つまり、空気を熱くして待ち構え、そこへ燃料を入れる順番です。現在広く使われるコモンレール方式では、高い圧力をかけた燃料を共通の管にため、各インジェクターへ送ります。噴くタイミングや量を細かく調整するための仕組みです。[2] エンジン全体の往復運動は4ストロークの基本も参考になります。

ボルトくん

燃料は最初から入れて、一緒に押し縮めるんじゃないの?

ハグルマ先生

ディーゼルでは、基本は空気を先に圧縮し、後から燃料を噴きます。燃料を入れるタイミングが、燃え方を整える大事な手段になります。

寒いときは、グロープラグが熱を助ける

グロープラグの実物例。火花ではなく、電気で生み出した熱で燃焼を助けます。
グロープラグの実物例。火花ではなく、電気で生み出した熱で燃焼を助けます。
Donar Reiskoffer / 出典 / CC BY 3.0(一部加工)

寒い日にエンジンが冷え切っていると、圧縮した空気の熱が冷たい金属へ逃げやすくなります。始動のときに燃料へ火がつきにくくなるため、その助けとして使われるのが「グロープラグ」です。

グロープラグは、電気で先端を熱くする部品です。スパークプラグのように火花を飛ばすのではなく、小さなヒーターのように周囲を温め、着火しやすい状態を作ります。形にプラグ感はありますが、仕事は別物なんです。[3]

グロープラグの働き方はエンジンによって違い、始動前だけでなく、始動後の燃焼を安定させるためなどにも使われます。「ディーゼルは火花がいらない」と「電気の助けが一切いらない」は、同じ意味ではありません。

ボルトくん

火花を使わないのにプラグがあるから、矛盾してるのかと思った。

ハグルマ先生

スパークプラグは火花、グロープラグは熱。火をつけるきっかけと、熱を助ける役割を分けて考えると分かりやすいですよ。

勝手に燃えるけれど、燃え方はきちんと調整している

こちらはガソリンエンジンなどで使うスパークプラグ。予定の火花から炎を広げる方式と、圧縮着火を分けて考えましょう。
こちらはガソリンエンジンなどで使うスパークプラグ。予定の火花から炎を広げる方式と、圧縮着火を分けて考えましょう。
/ 出典 / Public domain(一部加工)

熱い空気に入れれば燃えるとはいえ、燃料を好きなだけドバッと噴いてよいわけではありません。いつ、どれくらい、どんな細かさで噴くかによって、力の出方や音、排気の状態が変わります。

例えば、一度に全部を噴くのではなく、少量を先に噴き、その後に主な燃料を噴くなど、何回かに分ける制御があります。燃え始めを整え、急な圧力の上がり方を抑えるためなどに使います。回数や噴き方は、運転状態やエンジンの方式で変わります。[2]

一方、ガソリンエンジンで、予定した炎が届く前に混合気が燃え始めると、ノッキングにつながります。ディーゼルの圧縮着火は、その性質を前提に空気と燃料の入れ方を設計したものです。「自分で燃える」という一部分だけが似ていても、狙った燃焼と異常な燃焼は分けて考えましょう。

ボルトくん

火花を飛ばさないなら、燃える瞬間は成り行き任せかと思った。

ハグルマ先生

燃料を噴くタイミングや量で、燃え方を細かく整えています。火花の代わりに、燃料の入れ方が大きな役割を持つんです。
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この記事を書いた人
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ハグルマ先生

メカニズモ編集長

2016年より自動車業界に携わり、輸入車ディーラーや中古車販売店などで実務経験を積む。

自動車専門ウェブメディアの運営にも携わり、業界で培った知識と講師としての経験を活かしながら、車の構造や部品、メンテナンスに関する情報を分かりやすく発信している。

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