ターボは、エンジンへ空気を押し込んで力を出しやすくする装置です。ところが、その周りには空気や排気を「逃がす」部品が付いています。せっかく押し込んだのに逃がすって、穴の開いた浮き輪でも膨らませているのでしょうか。
もちろん理由があります。排気の流れを調整するウェイストゲートと、圧縮した空気を逃がすブローオフバルブ。名前は強そうですが、違いは「何を、いつ逃がすか」で整理できます。
アイキャッチ:ターボの吸気を逃がすダイバーターバルブの実物例。排気側のウェイストゲートとは役割が違います。
Alison Cassidy / 出典 / CC BY-SA 4.0(一部加工)
二つの違いは、排気を逃がすか、吸い込む空気を逃がすか

Quentin Schwinn (NASA) / 出典 / Public domain(一部加工)
ウェイストゲートは、ターボを回す排気の一部を別の道へ流し、ターボの働きすぎを抑える弁です。一方、ブローオフバルブは、主にアクセルを戻したとき、ターボで圧縮した空気の逃げ道を開ける弁です。同じ「逃がす」でも、扱うガスとタイミングが違います。[1]
この違いを知るために、ターボの中身を少し見てみましょう。ターボには、排気で回る羽根車と、吸い込んだ空気を圧縮する羽根車があります。この二つが一本の軸でつながっています。
燃えた後の排気が片側の羽根車を回すと、反対側も回り、新しい空気を押し縮めてエンジンへ送ります。風車で別の送風機を動かすような関係です。排気と新しい空気は別の通路を流れていて、排気をそのままエンジンへ押し込んでいるわけではありません。
ウェイストゲートは、ターボを回す排気を一部迂回させる

Michael Hicks from Saint Paul, MN, USA / 出典 / CC BY 2.0(一部加工)
エンジンから出る排気が増えると、ターボの排気側の羽根車を強く回せます。すると吸気側も速く回り、空気を押し込む圧力が上がります。この押し込む圧力が「過給圧」です。
必要以上に高くならないよう、ウェイストゲートは排気の一部を、羽根車を通らない道へ流します。全部の排気で羽根車を回すときより、回す力が弱まるため、狙った過給圧へ調整できます。吸い込む空気を直接抜くのではなく、その空気を押す元の力を整えるわけです。[1][2]
排気側の羽根車は「タービン」と呼ばれます。ウェイストゲートには、タービンのケース内に迂回路があるものや、外側に別の弁を付けるものがあります。見た目が違っても、排気の一部に別ルートを用意する役割は同じです。
ブローオフバルブは、行き場を失った空気を逃がす

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今度は、一般的なガソリンターボ車でアクセルを戻した場面です。スロットルという空気の扉が閉じる方向へ動く一方、ターボの羽根車はすぐには止まりません。まだ空気を送り出そうとするため、扉の手前で圧力が高くなります。
この状態では空気の流れが不安定になり、吸気側の羽根車に負担をかけることがあります。そこでブローオフバルブが逃げ道を開き、圧縮された空気を逃がします。せっかく圧縮した空気でも、エンジンが今は受け取れないなら、別の道を用意する必要があるんです。[1][2]
逃がした空気をターボの入り口側へ戻す方式もあれば、外へ放出する方式もあります。戻すものは、リサーキュレーションバルブやディバーターバルブなどと呼ばれることもあります。「プシュー」という音のために付いているように見えても、元の仕事は空気の流れを整えることです。
音や過給圧だけで部品を選ぶと、調子を崩すこともある

Ildar Sagdejev ( Specious ) / 出典 / CC BY-SA 3.0(一部加工)
ブローオフバルブを替えれば、必ずパワーが上がるわけではありません。そもそも、主にアクセルを戻したときの空気を扱う部品です。加速中にもっと空気を送り込む装置とは、役割が違います。
また、エアフロセンサーで測った空気を外へ捨てると、車によっては「測った空気」と「実際にエンジンへ入った空気」が合わなくなります。燃料の調整がずれ、回転が落ち込むなどの不調が出る場合もあります。元の戻し方と車の制御に合うかが大切です。[3]
ウェイストゲートの設定を変えて過給圧を上げる場合も、燃料や点火などを一緒に考える必要があります。ECUチューニングとも関わる部分です。音量や圧力の数字だけを追うより、何を調整する部品なのかを分けて理解しましょう。




