【簡単解説】変速機の原理と種類

トランスミッション ドライブトレイン

変速機とは、歯車や軸などで構成されており、歯数の違うギヤの組み合わせを変えることによって、変速を行う装置のことです。

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変速機の仕組み

トランスミッション

噛み合った一対のギヤを例に見てみましょう。大きなギヤが小さなギヤを回すと、小さなギヤの回転数は多くなります。反対に、小さなギヤが大きなギヤを回すと、大きなギヤは回す力(トルク)が大きくなります。

この仕組みを利用したものが変速機です。車や自転車は、発進するときや坂道を上るときは、トルクをが必要になり、高速走行(巡行)するときは。回転数が必要となります。自転車にはありませんが、バックするときには、回転を反対にしないといけません。そこで、変速機はギヤの組み合わせを変えることによって、エンジンが生み出したトルクや回転数、回転方向を車に合わせて変える事が出来ます。

変速比とは

トランスミッション

変速比とは各ギア段での、エンジンの回転数とトランスミッションの回転数の比のことです。GRスープラのマニュアルモデルを例に見てみましょう。

変速比
    1速        4.110    
    2速    2.315
    3速    1.542
    4速    1.179
    5速    1.000
    6速    0.846
    後退    3.727
    減速比    3.462

1速の変速比は4.110です。これは、トランスミッションが1回転する間に、エンジンは4.110回転していることを意味します。トランスミッションよりもくエンジンの回転数が高い状態ですね。それに対して、6速の変速比は0.846なので、トランスミッションが1回転する間に、エンジンは0.846回転と、トランスミッションの回転数の方がエンジンの回転数よりも高い状態です。表の最後に減速比というのがありましたね。この減速比とは、トランスミッションの回転数とタイヤの回転数の比です。減速比はデファレンシャル比ファイナルギア比とも呼ばれています。

平行軸歯車式変速機

Yones – Drawing by me, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12225153による

平行軸歯車式変速機は、平行軸に複数の変速比の異なる歯車をを持ち、これを油圧や電動などで切替え、ギア比を選択する変速機のことです。プラネタリーギア式よりも歯車の組合せの自由度が高いのが特徴です。2段変速機を例に構造を見てみましょう。

2段変速機の場合、入力シャフト出力シャフトが平行になるように配置され、入力シャフトにはドライブギアが、出力シャフトには対応するドリブンギアが備えられて、それぞれは常時かみ合わせ状態になります。ドリブンギアは出力シャフトに固定されていますが、ドライブギアは空転できるようになっています。

しかし、この状態だと、エンジン回転数がどれだけ上がっても、動力をタイヤに伝えることができません。そこで、スリーブと呼ばれる部品を入力シャフト上のギアとギア間に配置します。このスリーブは入力シャフトと共に回転し、回転軸方向にスライドすることができます。

スリーブを1速ドライブギアと嚙合わせると、入力シャフトとともに1速ドライブギアも回転できるようになり、1速ドリブンギアに回転を伝える事が出来るようになります。1速ドリブンギアは出力シャフトに固定されているので、回転は出力シャフトにも伝わり、タイヤへと回転を伝える事が出来るようになります。

この時、2速ドライブギアはスリーブとかみ合っていないので空転しています。2速に変速すると、2速ドライブギアとスリーブが噛み合い、1速ドライブギアは空転します。

シンクロメッシュ機構

A7N8X – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7997162による

ドライブギアとスリーブが噛み合う時、シャフトの回転速度と歯車の回転速度の差が大きいと、スムーズに噛み合わず、変速操作が困難となる場合があります。そこで登場するのがシンクロメッシュ機構です。シンクロメッシュ機構の主な役割は、入力シャフトと共に回転するスリーブと、ギヤの間で摩擦力を作用させて、回転速度差を無くすことです。スリーブ側には、ギヤ※1との間で摩擦を発生させるシンクロナイザーリングという部品が取り付けられています。このシンクロナイザーリングは、スリーブと共に回転します。そしてこのリングを異なる速度で回転するギヤ※2に押し付け、摩擦接触させます。この摩擦力により、異なる速度で回転しているギヤとスリーブの回転速度が近づき、スムーズな変速を可能にします。

※1 6速変速機の場合は入力シャフト ※2または入力シャフト

プラネタリーギヤ式変速機

プラネタリーギヤ
Silver Spoon – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15954523による

プラネタリーギヤ式変速機は、リングギヤサンギヤピニオンギヤといった歯車を組み合わせた変速機の事です。中心にサンギヤがあり、周囲にはリングギヤがあります。この2つのギヤに噛み合うようにピニオンギアが3~4個配置されます。このピニオンギヤはピニオンギヤキャリアと呼ばれる枠にまとめられています。ピニオンギヤはサンギヤの周りを公転しながら、自転することも可能なので、プラネタリーギヤには「サンギヤ」「リングギヤ」「ピニオンギヤキャリア」の3つの回転軸があります。この3つある回転軸を回転させたり、固定させたりして変速を組み合わせる事ができます。プラネタリーギヤ式変速機は、このプラネタリーギヤを複数組み合わせたものです。回転軸の断続には湿式多板クラッチが使われ、回転軸を固定するのにはブレーキバンドと呼ばれるものが使われます。

この記事を書いた人
自動車ライター
YOSHIKI

1999年 東京生まれ。幼少期を自動車大国アメリカで過ごし、車に興味を持つ。レンタカー屋やBMW正規ディーラーを経て都内高級中古車ディーラーに勤務。愛車はGR スープラ RZ。

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