長い下り坂などで起こる、ブレーキの「フェード」と「ベーパーロック」。どちらも熱で効きが悪くなる現象ですが、何が違うのでしょうか?仕組みと気を付けたいことを解説していきます。
同じ熱のトラブルでも、起こる場所が違う
フェードは、こすって止める部分の効きが落ちる

Renardo la vulpo / Porsche-Scheibenbremse rechts vorne, 4.jpeg / CC BY-SA 4.0

イラスト:メカニズモ(形・位置の概略)
ブレーキは、パッドなどを回っている金属の部品へ押し付け、こすれる力で車を減速させます。このとき、車が動いているエネルギーは熱へ変わります。
この部分が熱くなりすぎると、同じように押し付けても、十分に止めにくくなる場合があります。これがフェードです。ペダルはいつものように踏めても、車の速度が思ったほど落ちないことがあります。[1]
ベーパーロックは、液体で力を伝えにくくなる

図:メカニズモ(模式図)
ブレーキ液は、ペダルを踏んだ力を車輪のブレーキへ伝える液体です。ブレーキフルードとも呼ばれます。
この液体が熱で沸騰すると、中に蒸気の泡ができます。液体に比べて泡は押すと縮みやすいので、ペダルの力をうまく伝えられなくなるんです。これがベーパーロック。ベーパーは、蒸気という意味です。[2]
ボルトくん
どっちも熱で効かなくなるなら、直し方も同じなの?
ハグルマ先生
熱で困っている場所が違うんです。パッドなのか、液体なのか、ほかの部品なのか、点検で確かめる必要がありますよ。
下り坂では、速く走らなくても熱がたまる
同じ速度を保つために、働き続けていることがある

図:メカニズモ(模式図)
下り坂では、車は坂を下る力で速くなろうとします。ブレーキを使って同じ速度を保っているなら、ブレーキはその力を抑え続けています。
生まれる熱のほうが、外へ逃げる熱より多くなると、温度は上がります。ゆっくり走っているから、ブレーキも暇だろう、とは限らないわけですね。[2]
熱は、まわりの部品やブレーキ液へも伝わる
パッドや回る金属の部分で生まれた熱は、周囲の部品やブレーキ液へも伝わります。どれくらい熱を逃がせるか、液体がどんな状態かも大切です。
フェードとベーパーロックは、必ず同じ順番で起こるわけではありません。片方だけのことも、重なることもあります。
ボルトくん
速くならなかったんだから、ブレーキはあんまり頑張ってないんじゃないの?
ハグルマ先生
坂で速くなろうとする車を、ずっと抑えていたかもしれませんね。速度が変わらなくても、ブレーキが働き続けている場合があるんです。
ペダルの感触だけで、原因は決められない
| 現象 | 主に困っている場所 | 起こることがある変化 |
|---|---|---|
| フェード | パッドなど、こすって止める部分 | 踏めている感じはあるのに、速度が落ちにくい |
| ベーパーロック | ブレーキ液の通り道 | ペダルが柔らかく感じる、深く踏むようになる |
柔らかく感じたり、深く踏み込んだりする原因には、液漏れや空気の混入もあります。硬く感じるときも、踏む力を助ける装置などの不具合が考えられます。
いつもより止まりにくい、ペダルが床の近くまで入る、といった変化があれば、走りながら原因を試すより、安全に止まることを優先しましょう。踏んだ感触が戻っても、点検は必要です。
ボルトくん
ペダルが硬ければ、ブレーキの液は大丈夫ってことなの?
ハグルマ先生
硬さだけでは分かりませんよ。いつもどおり速度を落とせるか、普段との違いを大事にしてください。
予防には、熱をためすぎないことと液の点検が大事
下り坂の前に、速度とギヤを整える

図:メカニズモ(模式図)
長い下りに入る前に速度を落とし、取扱説明書に合う低いギヤなどを選んで、エンジンブレーキも使います。エンジンブレーキは、アクセルを戻したときのエンジンなどの抵抗を、減速に使うことです。[2]
オートマ車やハイブリッド車でも、使う位置や操作は車によって違います。BやLなどの表示を、全部同じものだと思わず、説明書を確認しましょう。急に低いギヤへ入れたり、ニュートラルで坂を下ったりするのは避けます。
ブレーキ液は、減っていなくても状態が変わる

Frettie / Brake fluid reservoir in Škoda Fabia I.jpg / CC BY 3.0
多くの乗用車で使うブレーキ液は、使ううちに水分を取り込みます。水分が増えると、より低い温度で沸騰しやすくなります。つまり、熱で泡ができやすくなるわけです。[3]
液の種類や交換時期は、その車の指定を確認します。見た目がきれいだから交換しなくていい、高い性能の液なら何でも混ぜていい、とは判断できません。
ボルトくん
液が減ってなければ、ずっと同じように使えるの?
ハグルマ先生
量が足りていることと、状態がいいことは別なんです。減っていなくても、使った期間などに合わせて交換が必要になりますよ。
効きが変わったら、停車して点検を相談する
急な操作を避け、まわりの状況を見ながら安全な停車につなげましょう。止まった後は走り直さず、整備工場やロードサービスへ相談します。
熱いブレーキに水をかけたり、手で触って確かめたりするのは危険です。冷えて効きが戻ったように感じても、パッドや液、まわりの部品を点検してもらいましょう。
よくある疑問
ABSがあれば、熱の問題も防げるの?
ABSは、主にタイヤが回転を止めたまま滑り続けるのを抑える機能です。ブレーキの過熱や、液体の沸騰を必ず防げるわけではありません。
エンジンブレーキだけで下ればいいの?
その車と坂の条件に合わせて、ペダルで踏むブレーキも組み合わせます。一つの方法だけで、どんな坂でも安全になるわけではありません。
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参考資料
- 曙ブレーキ「商用車用ブレーキ」:摩擦材の過熱によるフェードの説明。
- JAF「長い下り坂でブレーキを酷使すると利きが悪くなる理由」:フェード、ベーパーロック、下り坂での操作。
- Bosch「Brake fluid the safety factor」:吸湿と沸点、液の点検・交換。
アイキャッチ写真:Renardo la vulpo / Porsche-Scheibenbremse rechts vorne, 4.jpeg / CC BY-SA 4.0





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