【簡単解説】AT(オートマチックトランスミッション)の仕組み

オートマチックトランスミッション ドライブトレイン

AT(オートマチックトランスミッション)は、トランスミッションの1種で、トルクコンバータープラネタリーギヤ式変速機で構成されています。もう少し詳しく見てみましょう。

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AT車にはトルクコンバーター

AT車にはクラッチペダルはありませんが、クラッチに相当する「トルクコンバーター」という部品が付いています。これは流体の抵抗を利用して自動で動力の伝達を行う装置で、流体クラッチにトルク増幅機構を持たせたものをいいます。

トルクコンバーターの簡単な仕組み

【簡単解説】クラッチとトルクコンバーターの仕組みと役割

トルクコンバーターは簡単に説明すると、ポンプインペラ(入力軸)・ステーター・タービンランナー(出力軸)で構成されており、これらはトルクコンバーターハウジングと呼ばれる部品の内部に収納されており、ATFと呼ばれるオイルで満たされています。これらの部品についてもう少し詳しく見てみましょう。

ポンプインペラ

クランクシャフトの回転はポンプインペラへ伝わり、ポンプインペラも同じ速度で回転します。このポンプインペラには、ブレードと呼ばれる羽根状のものが付いていて、これが回転してオイルを送り出します。

タービンライナー

タービンライナーにもブレードが備えられており、ポンプインペラから流れてきたATFが、タービンライナーのブレードに当たることで、タービンライナーが回転する仕組みです。タービンライナーの回転はトランスミッションへと伝わります。

ステーター

ステーターは、ポンプインペラとタービンライナーの間にある部品です。ステーターにもブレードがあり、タービンライナーから流れてたオイルを方向を変えます。これによってポンプインペラへ流れたオイルはその回転を高める、つまりはトルク増幅させることができます。

ロックアップ機構

トルクコンバーターは、スムーズな発進が可能ですが、常にクラッチが滑っているような状態になるので、MT車と比較すると駆動力の伝達効率が劣ります。そこで伝達効率を向上させるのが、ロックアップ機構です。

仕組みとしては、ポンプインペラとタービンライナーの間に摩擦クラッチが配置され、入出力の回転数差がある程度まで小さくなると、クラッチがつながり、トルクコンバーターの損失が生じないようにしています。こうすることによって、伝達効率の向上を図っています。

プラネタリーギヤ式変速機

プラネタリーギヤ
Silver Spoon – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15954523による

プラネタリーギヤ式変速機は、リングギヤサンギヤピニオンギヤといった歯車を組み合わせた変速機の事です。中心にサンギヤがあり、周囲にはリングギヤがあります。この2つのギヤに噛み合うようにピニオンギアが3~4個配置されます。このピニオンギヤはピニオンギヤキャリアと呼ばれる枠にまとめられています。ピニオンギヤはサンギヤの周りを公転しながら、自転することも可能なので、プラネタリーギヤには「サンギヤ」「リングギヤ」「ピニオンギヤキャリア」の3つの回転軸があります。この3つある回転軸を回転させたり、固定させたりして変速を組み合わせる事ができます。プラネタリーギヤ式変速機は、このプラネタリーギヤを複数組み合わせたものです。回転軸の断続には湿式多板クラッチが使われ、回転軸を固定するのにはブレーキバンドと呼ばれるものが使われます。

現代のAT

オートマチックトランスミッション

現代のATでは、燃費の向上などのために多段化が進んでいます。GRスープラでは8速、新型フェアレディZでは9速、フォードマスタングでは10速が採用されています。段数が増えればプラネタリーギヤの数も増える為、4組のプラネタリーギヤを使用するモデルもあります。この変速には湿式多板クラッチやブレーキバンドが使われますが、これらは油圧で動作します。この制御にはAT-ECUが使われ、エンジンECUと協調制御を行っています。

この記事を書いた人
自動車ライター
YOSHIKI

1999年 東京生まれ。幼少期を自動車大国アメリカで過ごし、車に興味を持つ。レンタカー屋やBMW正規ディーラーを経て都内高級中古車ディーラーに勤務。愛車はGR スープラ RZ。

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