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バルブタイミングとは

バルブ

吸気バルブは、ピストンが下がり始めた瞬間に開き、下がり切った瞬間に閉じる。実際のエンジンは、必ずしもこの通りには動きません。空気や排気の流れを利用するため、行程の境目をまたいで開く設定が使われます。

この開閉の時期を、ピストンの動きに対して表したものがバルブタイミングです。多くの場合はクランクシャフトの角度で示されるので、まず図の基準になる上死点と下死点から見ていきましょう。

ピストンが最も上へ来る位置は上死点(TDC)、最も下へ来る位置は下死点(BDC)です。ここではシリンダー中心線とクランク回転中心をずらさない基本形を例に、上死点から下死点までをクランク角180度で表します。

吸気、圧縮、膨張、排気の一巡は、クランク2回転、つまり720度です。この間には上死点が2回あります。圧縮から膨張へ移る上死点と、排気から吸気へ移る上死点を区別しましょう。

  • 上死点前(BTDC):基準となる上死点へ到達する前です。
  • 上死点後(ATDC):その上死点を通過した後です。
  • 下死点前(BBDC):基準となる下死点へ到達する前です。
  • 下死点後(ABDC):その下死点を通過した後です。

「吸気弁が上死点前10度で開く」という場合、通常は排気終わりの上死点の10度手前を指します。点火時期も同様の角度表記を使いますが、点火とバルブ開閉は別の出来事です。

ボルトくん

「上死点前」と書いてあっても、どっちの上死点か見るんだね。

ギア博士

吸気弁が開く時期なら、通常は排気終わりの上死点が基準です。点火時期にも同じ角度表記を使いますが、別の出来事を表しています。

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吸気の遅閉じと排気の早開きには理由がある

4ストロークエンジンの吸気行程の模式図
英語版ウィキペディアのWapcaplet, CC BY-SA 3.0 http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/, via Wikimedia Commons

吸気弁は下死点を過ぎても開いていることがある

吸気行程では、ピストンの下降による圧力差などで空気が流れ込みます。流れには慣性があるため、運転条件によっては、ピストンが下死点を過ぎても吸気を続けられます。

この流れを使うため、吸気弁を下死点のあとに閉じる設定があります。ただし、遅く閉じるほど多く入るわけではありません。条件によっては、入ったガスが吸気側へ押し戻されます。

押し戻しを意図的に利用し、実質的に圧縮する量を調整する設計もあります。吸気弁の遅閉じは、高回転での充填にも、低負荷時の効率向上にも関係しますが、狙いと条件を分けて理解する必要があります。

排気弁は膨張行程の途中で開き始めることがある

排気弁を膨張行程の終わり、下死点の前から開くと、シリンダー内に残る圧力で排気を流し始められます。これにより、続く排気行程でピストンがガスを押し出す負担を抑えられます。

一方、早く開きすぎると、膨張するガスから取り出せる仕事が減ります。どこで開くかは、膨張の仕事と排気のしやすさの兼ね合いで決まります。排気弁が閉じる時期も、残留ガスや次の吸気に影響します。

ボルトくん

ピストンが上がり始めても、吸気を続けられるの?

ギア博士

流れの慣性や圧力の関係によっては続きます。ただし、逆に押し戻す場合もあり、それを効率向上に利用する設計もあります。

作用角は開いている区間、リフトは開く量

バルブが開き始めてから閉じるまでの区間を、クランク角度で表したものが作用角です。どれだけ大きく開くかを表すリフト量とは、別の数字です。

例として、吸気弁が上死点前10度で開き、下死点後40度で閉じるとします。作用角は10+180+40=230度です。これは読み方のための仮の数値で、特定の車の仕様や調整値ではありません。

同じ作用角でも、エンジン回転数が上がるほど、実際に開いている時間は短くなります。また、諸元によって開閉時期を判定するリフト量などの測定条件が違うため、カムの数字を比較するときは測定条件をそろえる必要があります。

ボルトくん

作用角が同じなら、開いている時間も同じなの?

ギア博士

回転数が高いほど、同じ角度を短い時間で通過します。作用角が同じでも、実際の開弁時間は短くなります。

オーバーラップは、吸気と排気が同時に開く区間

排気の終わりから吸気の始まりにかけて、排気弁が閉じる前に吸気弁を開く場合があります。この二つの弁が同時に開いている区間を、バルブオーバーラップと呼びます。

たとえば吸気弁が上死点前10度で開き、排気弁が上死点後10度で閉じるなら、重なる区間は20度です。この数字も説明用で、特定のエンジンの設定を示すものではありません。

掃気にも内部EGRにも関係する

吸排気の圧力関係や流れが適していれば、排気の流れを利用して残った燃焼ガスを排出し、新しい吸気を取り込みやすくできます。これが掃気の効果です。

一方、排気を吸気側へ引き戻すなどして、燃焼ガスの一部を次の燃焼に利用する内部EGRの制御にも、バルブタイミングが関わります。詳細はEGRの役割と仕組みで説明しています。

ガスがどちらへ流れるかは、弁が開いていることだけでは決まりません。低回転時には逆流や燃焼の不安定化につながる場合もあり、過給エンジンでは吸気圧と排気圧の関係も重要です。オーバーラップを増やすほど性能がよくなる、という単純な関係ではありません。

ボルトくん

両方を長く開ければ、排気がよく抜けるの?

ギア博士

圧力や流れの条件が合えば掃気に役立ちますが、逆流や燃焼の不安定化につながる場合もあります。長いほどよいとは限りません。

進角・遅角は、開く時期と閉じる時期を動かす

クランクの回転に対して開閉時期を早めることを進角、遅らせることを遅角といいます。カムの形を変えずに位相だけをずらす方式では、開く時期と閉じる時期が一緒に移動します。

この方式では、基本的に作用角も最大リフトも変わりません。先ほどの吸気弁を10度進角すると、開き始めは上死点前20度、閉じ終わりは下死点後30度になります。作用角は、もとの230度のままです。

対して、異なる形のカムへ切り替えれば、作用角や最大リフトを変えることができます。軸の位相を動かす可変バルブタイミングと、カム切替式の可変バルブ機構は、この違いを押さえると理解しやすくなります。

ボルトくん

早く開くようにすると、その分だけ長く開くの?

ギア博士

位相だけを変えるなら、閉じる時期も同じだけ早まります。開いている区間を延ばす変更とは違います。

タイミング図では、吸気の開き・閉じ、排気の開き・閉じを順に探し、どの上死点や下死点が基準かを確認しましょう。開いている区間が作用角、吸排気が重なる部分がオーバーラップです。

実際のタイミングは、エンジンや運転状態で変わります。可変機構付きでは一つの固定図だけで全運転域を表せないため、その図がどの状態を示すかも確かめることが大切です。

参考資料

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この記事を書いた人

メカニズモ編集部

メカニズモ編集部は、自動車の仕組み・部品・メンテナンス・故障症状・修理費用について、初心者にもわかりやすく解説する編集チームです。各記事では、自動車整備に関する一般的な知識、メーカー資料、整備関連資料、公的情報などを確認しながら、できるだけ正確な情報を掲載するよう努めています。