クラッチとは、エンジンからの動力を伝達したり、遮断する装置のことです。もう少し詳しく見てみましょう。
クラッチの役割
エンジンで生まれた動力は、クラッチを通してトランスミッションに伝わり、トランスミッションからタイヤに伝わることで車は前進・後進します。また、停車時はにはエンジンの回転をタイヤに伝わらないようにする必要があります。変速時にはエンジンの動力を一時遮断して、ギヤを変えた後、またつなぐことで、スムーズな走行が可能になります。このようにクラッチは、駆動力を伝えたり切ったりする役割を担っています。
クラッチの種類
摩擦クラッチ
一般的に、車のクラッチには摩擦クラッチと呼ばれるものが使われています。この摩擦クラッチは
円盤状や円筒形などの部品で、摩擦力により動力を伝達する仕組みです。圧着力を調整することで滑らせながら、回転数を同調させることができます。
また、摩擦クラッチは摩擦する面がオイルで潤滑されている湿式クラッチと、潤滑されていない乾式クラッチがあります。車の場合、主に乾式クラッチが使われており、クラッチが接続した時のショックを吸収するために、スプリングやゴムなどを備えています。
流体クラッチ
流体クラッチは、文字通り「流体」を使ってトルクを伝達する仕組みのクラッチです。液体の入った密閉容器に、タービンが向かい合わせに2つ備えられており、片方のタービンは入力軸に、もう片方のタービンは出力軸に繋がっています。入力側のタービンが回転すると、流体の流れにより、出力側のタービンも回転する仕組みです。分かりやく説明すると、扇風機を向かい合わせに2つ設置し、片方の電源だけを入れると、もう片方も回るイメージです。
クラッチの構造
クラッチは主にフライホイール・クラッチ板・クラッチカバーで構成されています。これら3つがクランクシャフトに繋がります。クラッチペダルを踏むと、クラッチカバーの外側にはダイヤフラムと呼ばれるピザのように切れ込みが入った部品が押し込まれます。ダイヤフラムが押し仕込まれるとクラッチ板がフライホイールから離れ、動力の遮断ができます。
AT車にはトルクコンバーター
AT車にはクラッチペダルはありませんが、クラッチに相当する「トルクコンバーター」という部品が付いています。これは流体の抵抗を利用して自動で動力の伝達を行う装置で、流体クラッチにトルク増幅機構を持たせたものをいいます。
トルクコンバーターの簡単な仕組み
トルクコンバーターは簡単に説明すると、ポンプインペラ(入力軸)・ステーター・タービンランナー(出力軸)で構成されており、これらはトルクコンバーターハウジングと呼ばれる部品の内部に収納されており、ATFと呼ばれるオイルで満たされています。これらの部品についてもう少し詳しく見てみましょう。
ポンプインペラ
クランクシャフトの回転はポンプインペラへ伝わり、ポンプインペラも同じ速度で回転します。このポンプインペラには、ブレードと呼ばれる羽根状のものが付いていて、これが回転してオイルを送り出します。
タービンライナー
タービンライナーにもブレードが備えられており、ポンプインペラから流れてきたATFが、タービンライナーのブレードに当たることで、タービンライナーが回転する仕組みです。タービンライナーの回転はトランスミッションへと伝わります。
ステーター
ステーターは、ポンプインペラとタービンライナーの間にある部品です。ステーターにもブレードがあり、タービンライナーから流れてたオイルを方向を変えます。これによってポンプインペラへ流れたオイルはその回転を高める、つまりはトルク増幅させることができます。
ロックアップ機構
トルクコンバーターは、スムーズな発進が可能ですが、常にクラッチが滑っているような状態になるので、MT車と比較すると駆動力の伝達効率が劣ります。そこで伝達効率を向上させるのが、ロックアップ機構です。
仕組みとしては、ポンプインペラとタービンライナーの間に摩擦クラッチが配置され、入出力の回転数差がある程度まで小さくなると、クラッチがつながり、トルクコンバーターの損失が生じないようにしています。こうすることによって、伝達効率の向上を図っています。